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旅の手帖 2026年9月号
旅の手帖 2026年9月号
山あり、谷あり、海あり。こんなにコンパクトでバラエティーに富んだ景色が車窓を流れるのは、日本ならでは。鉄道カメラマンや鉄道ラブな著名人と編集部で、いま乗っておきたい絶景路線ランキングや、新たに日本三大車窓を決定!  “乗り鉄”として楽しめる、車窓主義の鉄道旅へ。

大地の恵み豊かな村でボーっと過ごす贅沢を

やすらぎ橋を渡った先にある、羽鳥湖展望広場からの眺め。
やすらぎ橋を渡った先にある、羽鳥湖展望広場からの眺め。

ずっと手を当てているとしびれるほど冷たい。ひと口飲むと、まろやかでなんと雑味のない味なんだろう。

「井戸から湧くこの水でお酒を仕込みます。年間とおして14~15度なので夏は冷たく感じますよ」と『松崎酒造』の6代目・松崎祐行(ひろゆき)さん。

敷地内に湧く井戸水で仕込む『松崎酒造』。天栄村は水が豊富。
敷地内に湧く井戸水で仕込む『松崎酒造』。天栄村は水が豊富。
羽鳥湖湖畔の鶴沼川に架かるやすらぎ橋。
羽鳥湖湖畔の鶴沼川に架かるやすらぎ橋。
橋の手前から山道を少し下り、明神滝を望む(運動靴推奨)。橋の上からも眺望できる。
橋の手前から山道を少し下り、明神滝を望む(運動靴推奨)。橋の上からも眺望できる。

天栄村に嫁いできて、水のおいしさに驚いたのは『鈴木醤油店』の鈴木洋子さん。蛇口をひねれば、最低限の殺菌処理をした山からの湧き水を飲めるそう。もちろん醤油を仕込むのもこの水だ。

夫の良浩さんに、特別に醤油蔵を案内してもらうと、もろみの発酵の香りがかぐわしい。

「140年近く使い続けているこの木桶は僕らの宝。木材は夏に伸びて冬に縮むので、伸縮を140回繰り返しており、その分もろみの旨味を吸っているはず。だからこの木桶で仕込む醤油は味わい深くなるんです」

『鈴木醤油店』の麹室。中央下にある囲炉裏で温度調整する。
『鈴木醤油店』の麹室。中央下にある囲炉裏で温度調整する。

『鈴木醤油店』の醤油を使って料理するのが、岩瀬湯本温泉にある『隣亭ねこやなぎ』。『ひのき風呂の宿 分家』が2026年5月に開業した食事処だ。

お昼に味わえる里山ランチは、山菜も野菜もほぼすべて自家畑や近隣の山々で採れたもの。女将の星千佳子さんいわく「鳳坂峠を境に標高や気候が変わるので、日本一おいしいと評価されるお米から山菜、川魚までいろいろなものが獲れる。人口5000人程度の小さな村ですけど、とっても豊かなんです」。

岩瀬湯本温泉からさらに山道を上ると、二岐(ふたまた)温泉に辿り着く。『柏屋旅館』の桑名裕昌さんは、季節ごとの山のにおいを感じてほしいそう。

「夏~初秋は少し酸っぱいにおいがするんです。山や川を眺めながらお湯で疲れを流してもらえたら」

村の中心部は、一面田んぼが続く。
村の中心部は、一面田んぼが続く。
湧水量は毎分2200Lとされ、透明度の高い湧井の清水。森に囲まれた清水の北側には、湧湯御前(わくゆごぜん)神社が鎮座。
湧水量は毎分2200Lとされ、透明度の高い湧井の清水。森に囲まれた清水の北側には、湧湯御前(わくゆごぜん)神社が鎮座。

大手世界銀行の要職を辞め、2026年に『湯小屋旅館』を引き継いだのがマリオット・フレイザーさん。

47都道府県をめぐるほど旅行・温泉好きで、二岐温泉の別の宿に泊まった際、縁があって前オーナーと知り合った。継承者を探していた前オーナーと、温泉旅館を経営したかったフレイザーさんは意気投合。

「初めてここに来たとき、秘密基地のような立地、露天風呂の開放感が素晴らしいと思いました」

海外の人にはまだ知られていない福島の美しさを、この宿を拠点に旅をして感じてほしいそう。

「二岐温泉は1000年以上の歴史がある。そのレガシーも継承し、伝えていきたいです」

人気で売り切れることも多い天栄米ゆうだい21キューブ600円(手前)や、天栄米本みりん1980円、ヤーコンうどん302円、ヤーコン餃子30個入り1250円など。『道の駅 李の里天栄』で販売。
人気で売り切れることも多い天栄米ゆうだい21キューブ600円(手前)や、天栄米本みりん1980円、ヤーコンうどん302円、ヤーコン餃子30個入り1250円など。『道の駅 李の里天栄』で販売。
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『湯小屋旅館』秘湯ファンの聖地が装い新たに

「隠れ家のような立地がお気に入り」と新オーナーのフレイザーさん。
「隠れ家のような立地がお気に入り」と新オーナーのフレイザーさん。
加水もしない源泉かけ流しなので、内湯はやや熱め。
加水もしない源泉かけ流しなので、内湯はやや熱め。

漫画家・つげ義春も愛した鄙びた温泉宿がコロナ禍を機に改装、一組限定の宿に生まれ変わった。フレイザーさんがオーナーとなってからは、会津漆器を飾るなど装いがさらに美しく。野趣あふれる露天風呂や内湯で、じっくりと長湯したい。

☎0248-84-2210
1泊2食2万5300円~(2~7名の貸切)
日帰り入浴/10:00~16:00頃、不定休。予約なしは1500円(予約ありは2000円)
泉質/カルシウム-硫酸塩泉
福島県天栄村湯本下二俣22-7
東北新幹線新白河駅からバス「湯ったりヤーコン号」(※)1時間30分の二岐下車、徒歩2分
(※)「湯ったりヤーコン号」は各宿宛に要予約

二俣川を望む露天風呂。
二俣川を望む露天風呂。
貸切なので2階の2部屋を贅沢に使える。
貸切なので2階の2部屋を贅沢に使える。

『柏屋旅館』湯と食で山の恵みを堪能

40分貸切制の巌(いわ)風呂。大浴場の滝の湯・檜風呂には露天も併設。
40分貸切制の巌(いわ)風呂。大浴場の滝の湯・檜風呂には露天も併設。
夕食には、白河高原清流豚のせいろ蒸しや山椒味噌を添えたキュウリと揚げナスなど。
夕食には、白河高原清流豚のせいろ蒸しや山椒味噌を添えたキュウリと揚げナスなど。

自家源泉が5つあり、各湯船にかけ流し。なかでも巌風呂は湯船の底にある岩の亀裂から足元湧出しており、新鮮なお湯を楽しめる。シイタケやウドの新芽の天ぷらをはじめ、地元の山河の幸が彩る夕食も、この宿の醍醐味!

☎0248-84-2316
1泊2食1万4450円
泉質/カルシウム-硫酸塩泉
福島県天栄村湯本下二俣22-6
東北新幹線新白河駅からバス「湯ったりヤーコン号」(※)1時間30分の二岐下車、徒歩3分
(※)「湯ったりヤーコン号」は各宿宛に要予約

木々の緑が迫る客室「松」。和洋室も2室ある。
木々の緑が迫る客室「松」。和洋室も2室ある。
桑名裕昌さん。「巌風呂手前に半屋外の休憩処があるので、ぜひ夕涼みしてください」。
桑名裕昌さん。「巌風呂手前に半屋外の休憩処があるので、ぜひ夕涼みしてください」。

『道の駅 季の里天栄』村の絶品を求めて県外からも続々

「大野さんの肉厚なシイタケなど、午前中に売り切れることがある人気商品も!」と、駅長の五十嵐諭子(さとこ)さん。
「大野さんの肉厚なシイタケなど、午前中に売り切れることがある人気商品も!」と、駅長の五十嵐諭子(さとこ)さん。
天栄長ネギパウダーのソフトクリーム450円。
天栄長ネギパウダーのソフトクリーム450円。
天栄ネギ辛しみそラーメン950円。
天栄ネギ辛しみそラーメン950円。

米・食味分析鑑定コンクール国際大会で金賞受賞の天栄米をはじめ、甘い天栄長ネギ、低カロリーで栄養価の高いヤーコンなど、地元の幸が並ぶ。食堂では、そのヤーコンを使った餃子やネギがのったラーメンなどを提供!

☎0248-81-1455
9:00~18:00(12~6月は~17:30)
第1水休(食事処は毎週水休)
福島県天栄村大里天房41-2
JR東北本線鏡石駅から車20分

『鈴木醤油店』丁寧・真摯な造りが生む深いコク

「蔵付き酵母が木桶に降り注ぎ、この蔵ならではの味わいに」と鈴木良浩さん・洋子さん夫妻。
「蔵付き酵母が木桶に降り注ぎ、この蔵ならではの味わいに」と鈴木良浩さん・洋子さん夫妻。
平右衛門(へいえもん)再仕込360ml1426円。
平右衛門(へいえもん)再仕込360ml1426円。
平右衛門濃口100ml508円。平右衛門は各種2サイズ用意。
平右衛門濃口100ml508円。平右衛門は各種2サイズ用意。

大豆と小麦で麹を一からつくり、さらにもろみをつくるために3年も熟成。「原料の旨味を全部引き出したいんです」と鈴木良浩さん。長い時間をかけできた平右衛門濃口は深い旨味があり、ごはんに直がけするだけでおいしい。

☎0248-82-2020
9:00~17:00、日休
福島県天栄村牧之内矢中2
JR東北本線鏡石駅からバス38分の矢中下車すぐ
※2026年10月上旬まで蔵改修のため『道の駅 季の里天栄』で購入を

『隣亭ねこやなぎ』食事処の開業で集落ににぎわいを

一日10食限定の里山ランチ1870円。旬の野菜や山菜を揚げる天ぷら770円も評判。
一日10食限定の里山ランチ1870円。旬の野菜や山菜を揚げる天ぷら770円も評判。
梁や屋根の木組みが美しい。
梁や屋根の木組みが美しい。
女将の星 千佳子さん。「夜は宿泊客をメインとしたBAR(要予約)としても営業します!」
女将の星 千佳子さん。「夜は宿泊客をメインとしたBAR(要予約)としても営業します!」

『ひのき風呂の宿 分家』が、隣にある築150年の古民家を改装。「村の内外から人が集える場をつくりたかったんです」と女将の星千佳子さん。この日の里山ランチはワラビやフキ、根曲がり竹、会津地鶏など地元食材がいっぱい!

☎0248-84-2314
11:00~14:00、金・土休
福島県天栄村湯本居平6
JR東北本線鏡石駅からバス1時間20分の湯本温泉口下車、徒歩2分

『松崎酒造』地元米と水で醸す飲み飽きないお酒

「夢の香かおりをはじめ、全量福島県産の米で仕込んでいます」と6代目。
「夢の香かおりをはじめ、全量福島県産の米で仕込んでいます」と6代目。
左から廣戸川の純米1650円、特別純米1870円、大吟醸4000円(各720ml)。
左から廣戸川の純米1650円、特別純米1870円、大吟醸4000円(各720ml)。

15年前から6代目の松崎祐行さんが蔵元杜氏(とうじ)を務め、造りや酒質が大幅に変化。「米のふくらみ・甘みを感じられ、あと切れのよい食中酒を目指しています」。醸す銘柄をあえて増やさないのは「幹をしっかり太くして造るイメージ」だそう。

☎0248-82-2022(月〜金の9:00~17:00)
福島県天栄村下松本要谷47-1
JR東北本線鏡石駅からバス27分の下松本下車、徒歩2分
※直売はしていないので、『道の駅 季の里天栄』などで購入を

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取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年9月号より

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