目利きのコツは「着ている人をイメージしながら選ぶ」こと
二面採光の角部屋で、柔らかい光が入り込む店内。こぢんまりとした空間だが、ちょっとしたインテリアも味わい深く、「こだわりの古着屋さんに来た」というよりも「洋服好きの友人宅に遊びに来た」ような親近感が湧く。こんなふうにリラックスして商品を一つひとつ手に取れば、これという一品も見つけやすくなりそう。メンズとレディース、さらにキッズも少しそろえ、訪れる人を穏やかに迎え入れてくれる。
「状態には気をつけて、できるだけ素材感のいいものを仕入れています」とオーナーの島田悠紀さん。デザインなど、目利きの基準は感覚によるところも大きいが、「大人がシンプルに着られる洋服を好んで仕入れてます」。ポイントは「それを着ている人をイメージしながら選ぶ」こと。おもしろいことに、思い浮かべるのは実在する人よりも、むしろ「アメリカの田舎にいそうな人」「レゲエ好きの人」など空想の人物なのだとか。
買い付けは、主にアメリカで行う。島田さんは運転も好きで、車で移動しながら各地を回るのだそう。
「アメリカ古着がずっと好きで、雑貨も含め、足を運ぶたびに新しい発見があります」
また、ヨーロッパに赴くこともあり、そちらではアメリカにはないような「かわいいデザインのレディース古着」を探す。
「自分がお客だった場合、好みのものが置いてあるのもうれしいですが、それ以上にそのお店の好きなものが感じられたり、品物を選ぶ理由が伝わってくるお店が好きです」
そんな島田さんの言葉を聞き、すっと腑に落ちた。『FILM』では、一つひとつの商品から島田さんの好きなものが伝わってきて、不思議と愛着まで感じられる。冒頭の「洋服好きの友人宅に遊びに来た」ような居心地のよさは、それかもしれない。
身に付けるたびに愛着が増す一品が見つかる
普段着に取り入れやすく、気張らずに楽しめる古着。身にまとうだけでほんの少し身も心も和むような、そんなカジュアルな洋服が『FILM』には充実している。気兼ねなく毎日着られて、そのたびに思い入れが増していく。手持ちのいろいろなアイテムとも合いそうで、コーディネートを考えるのもわくわくするに違いない。
Tシャツのセレクトが好きだと言うお客も多いよう。とぼけ顔の猫のイラストを入れたメンズサイズのビンテージTシャツは、先染めの黒デニムに合わせるのもいい。島田さんが言うには「特別なアイテムではないですが、こだわりが伝わります」。「少し冴えないスニーカー」もポイントで、肩の力が抜けた大学生が思い浮かぶ。
長袖シャツは、生地の材質によっては秋冬だけでなく、春夏の羽織ものにもなり、オールシーズン使える。ぜひともお気に入りを1枚持っておきたい。「少し難しく思えるビンテージのストライプシャツ」は、膝丈のスカートを組み合わせることで「こなれた感じ」を演出。柄物なのもテンションが上がる。
『FILM』なら、子連れで訪れてキッズ服を見繕うこともできる。小さなサイズや子供らしいポップなデザインがかわいらしく、眺めていると楽しい気分に。「オーバーオールのラインの黄色を拾って、黄色いTシャツを合わせる」など、色柄がカラフルなものはどれか一色でも揃えればコーディネートしやすい。バッチリおしゃれをして、きっと子供もご機嫌だ。
程よく落ち着いた下北沢のオアシスようなエリア
島田さんがアメリカから連れて帰ってきた雑貨も目を引く。店内のそこかしこで「手作り感の強い魅力的なもの」や、「アメリカのキャラクターもの」が愛嬌を放っている。さらに、島田さんの信頼できる友人、知人が手がけた作家ものも不定期で展示販売。京都の『珈琲やまぐち』から仕入れた珈琲豆が店頭に並ぶことも。
少しマニアックなバイクもの、企業ものも並ぶ『FILM』は、やはり島田さんの人となりが表れていると言える。東急世田谷線の松陰神社前にある姉妹店『OLIVER』には、女性の店長がいて、60〜90年代のアメリカ古着を中心に、柄物やカラフルなアイテムを多く揃えている。系列ではあるものの、セレクトした人によって店に個性が出るというのがおもしろい。友達の家で愛読書を収めた本棚を見せてもらうような、そんなささやかな好奇心が湧く。
2010年代半ば頃、現在地の向かい側でオープンした『FILM』。建物が取り壊されることになり、移転先を探さなくてはと悩んでいたところ、隣の不動産屋がこの物件を紹介してくれた。それ以前から、近所の古着店『hickory』が好きで通っていた島田さん。
「今も変わらずに好きなお店です。その近くの、程よく落ち着いた場所でお店を開くことができて、ご縁というか、人に恵まれています」
取材・文・撮影=信藤舞子





