サクサクコロッケと濃厚ミートソースの組み合わせに舌鼓
実は荒川区に荒川は流れていない。区境の北東部に流れるのは隅田川だ。荒川区が発足した当時はこの隅田川が荒川と呼ばれていたんだそう。現在の荒川は大正時代に治水対策として荒川(現在の隅田川)を分岐させた人工河川。“荒川の土手”と聞くと学園ドラマのオープニング映像を思い浮かべる人が多いと思うが、あの場所は足立区になる。
JR常磐線の三河島駅から下町の雰囲気が漂う商店街を抜け、明治通りを進むと、荒川公園の入り口が見えてくる。荒川公園は区役所の前庭のような位置にあり、地元住民からは“区役所公園”と呼ばれ親しまれている。
木々に囲まれた歩道を進むと正面に荒川区役所の庁舎が見えてきた。荒川公園に向かって両翼を広げているような、ゆるやかに曲線がかかった美しい外観が特徴だ。
庁舎内の食堂『レストランさくら』は地下1階にある。正面玄関に向かう手前の側道を下り、自転車置き場に面した地下の出入り口から入るとわかりやすい。
メニューは定番のカレー、ラーメン、そば・うどんのほか、日替わりランチがスペシャルランチ、健康ランチ、おすすめランチの3種類。この日のスペシャルランチは四川風豚肉の生姜炒め770円、健康ランチは鶏肉豆腐760円、おすすめランチはビーフコロッケミートソース690円というラインアップだ。
ずらりと並ぶメニューサンプルを眺めて迷った挙句、ビーフコロッケミートソースに決めた! さっそく食券を購入。
注文カウンターで食券を渡し、トレーを用意して待つと、程なくして出来上がり。
ふだん筆者はコロッケには当たり前のようにソースをかけて食べる。しょうゆ派の人もたまにいるが、コロッケにミートソースっていうのは意外と思いつかない組み合わせだ。
さっそくサクサクに揚がったコロッケをガブリ。濃厚なミートソースとじゃがいもの相性がばっちり! これはあり! 付け合わせのサラダで野菜もたっぷりとれて、大満足!
日替わりランチはメインメニューにご飯とみそ汁、小鉢が付く。この日の小鉢は大根とニンジンのきんぴら。甘辛い味付けでご飯がすすむ。
コロッケとミートソースの組み合わせ、家庭でもまねできそう。夕飯のレパートリーが増えました!
毎日来てくれるお客さまのために毎日違うメニューを用意
「スペシャルランチは肉や魚をメインにしっかり食べられるメニュー、健康ランチは野菜やシーフードなどヘルシーな素材を使った低カロリーメニュー、おすすめランチは価格をおさえたお手頃メニューです」と日替わりメニューについて教えてくれたのは店長の吉村喜代彦さん。
日替わりランチを楽しみに、ほぼ毎日通ってくる人も多く、オープン時間の11時前になると近隣の常連さんで毎日20~30人の行列ができるんだとか。それもそのはず、1カ月間の日替わりランチメニューを見ると、とにかくバリエーションが豊富。
「ひと月の中で同じメニューは出てきません。毎日来られても違うものを召し上がっていただけます」と吉村さん。ということは、メニューのバリエーションはなんと、ひと月60種類以上!!
「マンネリにはならないように味の変化をつけたり、季節のものをできるだけ取り入れたりして。今だったら春なんで、菜の花でなにかできないかな、とか、いつも考えています」
「毎週金曜日はさくら定食という特別なランチを用意しています。季節の食材をできるだけ取り入れたメニューです」。メニューを確認すると、天然サワラの菜の花焼きと山菜ごはん870円、初カツオのたたきサラダ仕立て870円などの魅惑的なラインアップが。「なぜ今日は金曜じゃないんだー!」と心の中で叫ぶ筆者であった……。
正直、この物価高騰の最中、これだけの食材をそろえるのは大変なのでは? と伺うと、「魚屋さんや肉屋さんと連絡を取って、安く入る情報を常に仕入れています。魚なんかは丸ごと仕入れて自分でさばいて。なるべくコストを抑えて、できるだけいいものを提供できるように考えています」。お客さまの満足を第一にという吉村さんの思い、恐れ入ります。
区民の健康に配慮した栄養バランスばっちりメニュー
もう1つ、吉村さんがおすすめしてくれたのが“あらかわ満点メニュー”。区内飲食店と日本栄養大学短期大学部と区が連携し、お店の味を生かし1食で栄養基準を満たした、栄養バランスが整ったメニューだ。
『レストランさくら』では季節ごとに3種類、年間で12種類のあらかわ満点メニューを週替わりで提供している(1日15食限定)。取材当日のメニューは満点☆春の家常豆腐(ジャーチャンドウフ)定食。家常豆腐は読んで字のごとく、中国で日常的に親しまれている家庭料理だ。
材料は厚揚げ、豚肉、チンゲン菜、春キャベツ、ニンジン。味付けのベースは味噌だ。吉村さんがチャッチャとフライパンを振り、手際よく仕上げていく。
中国の家庭料理ということで辛いものを想像していたのだが、辛さはなく、しっかりとした味付けながらとっても食べやすい。
「ご年配のお客さまも多いので、辛さや香りはできるだけ強くしないように気をつけています」。どのメニューにも吉村さんのやさしい配慮が行き届いているのだ。
春のメニューは家常豆腐のほか、春キャベツのポトフ定食、鶏肉と春野菜の甘酢あんかけ丼の3種類。夏は冷やしのっぺい汁定食などが提供される。おいしく食べて健康になれるなんてサイコー! ごちそうさまでした!
“幻の野菜”をつかったイベントメニューも
『レストランさくら』では毎年11月に、荒川区ゆかりの伝統野菜である三河島菜をつかった特別メニューも提供している。三河島菜は、漬物や煮物で食べられる江戸の定番野菜だったが、明治時代に中国から伝わった白菜に取って代わられ、次第に栽培されなくなったという。
この“幻の野菜”が江戸東京・伝統野菜研究会の試みにより復活。現在、荒川区のお隣の葛飾区にある都立農産高校で栽培・収穫されている。農産高校の生徒さんにもメニューを提案してもらい、11月の1週間、日替わりメニューとして提供されるという。日本の食文化を次世代に伝える活動に若い世代である高校生が取り組んでいるのは興味深い。
収穫量が少ないためなかなか一般には流通しない“幻の野菜”をつかったメニューをいただける貴重な機会。ぜひ提供期間中に足を運んでみたい。
月に60種類以上もある日替わりメニュー、季節ごとのあらかわ満点メニュー、三河島菜をつかったイベントメニュー。毎月新メニューが登場するというし、毎日通ったとしても絶対にコンプリートできないメニュー数。本当にすごい。
次に訪れるときはどんなメニューに出合えるか楽しみだ。毎日通えるご近所の人がうらやましいと心から思う筆者であった。おなかをすかせてまた来ます!
取材・文・撮影=マルヤマミキ







