圧力寸胴鍋と寸胴鍋を駆使して作る、臭くないとんこつラーメン
昼も夜も人通りが絶えない高円寺パル商店街の、ほぼ中央あたりにある『とんこつ拉麺 漣』。インパクトのある色合いの看板やガラス越しに店内が見える店構えに、大きな飲食店企業が出店しているのかと想像していた。ところが、個人事業主である店主の八巻旭(やまきあきら)さんが切り盛りするお店だった。
八巻さんは20歳からラーメン店で働き始め、独立するまでの約17年間で「家系ラーメン以外はいろんなラーメンを作りました」と話す。その中でいちばん長く携わってきたのがとんこつラーメン。「長年ラーメン作りをしてきてたどり着いた、いちばんおいしい作り方のスープです」という言葉には自信を感じる。
そのスープは、血抜きなどの処理をした豚の頭、げんこつ、豚足を2~3時間ほど圧力寸胴鍋と呼ばれる圧力鍋タイプの寸胴鍋にかけ、そのスープを今度は普通の寸胴鍋に移して2~3時間ほど煮込むというもの。
「圧力寸胴鍋を使って作ると匂いが抑えられるんですよ」と八巻さん。とんこつのスープは熟成発酵させることが多いが、圧力をかけることで高い温度にできる圧力寸胴鍋の中では、その発酵が抑制されるらしい。
圧力寸胴鍋でスープに旨味を溶かし出したあと、寸胴鍋に移してさらに煮込む。この時間で油分と水分が乳化し、とろっとした舌触りの厚みを感じるスープに仕上がる。
圧力寸胴鍋で炊いたあと、すぐスープとして提供している店もある。『とんこつ拉麺 漣』が、さらに手間と時間をかけて仕上げるのは、八巻さんがとろりとした濃厚さと味の深み、つまり分厚さを感じるスープこそがとんこつらしい味わいだと考えているからだ。
『とんこつ拉麺 漣』では、このとんこつスープに醤油味のカエシを加えた看板メニュー・さざなみらーめんを含めて、4種類のとんこつラーメンを提供している。今回は少しだけ贅沢をしようと、店自慢のスタンダードな味・さざなみらーめんに味玉をトッピングを選択。
麺はとんこつラーメンらしく極細麺ストレート麺。丸い麺を採用するお店が多い中、『とんこつ拉麺 漣』ではエッジのある四角い麺を採用している。「丸より歯応えがあります」と八巻さん。麺のゆで加減は粉おとしからやわめまで6段階が選べる。今回は、固い方から3番目のかためでお願いした。
スープと卓上トッピングのコンビネーションも楽しみ
どんぶりにスープ、湯切りした麺、青ネギに、きくらげ、チャーシューを盛り付け、糸を使って半分にして絶妙のとろり加減の黄身が顔を出した味玉をオン。麺をゆではじめてから、たった3分弱でさざなみらーめん味玉入りが提供された。
確かに、ツンとくるようなとんこつスープ独特のにおいは感じない。“分厚い”とんこつを目指したスープは、とろりとした舌触りで、その濃厚さを舌の上で堪能したくなる。きくらげの歯応え、味玉の白身部分とソースのような黄身、スープと絡み合う柔らかさの豚バラチャーシューと、定番具材が頼もしい。とんこつラーメンのカエシは、オープンして以来、少しずつチューニングを繰り返してきたもの。八巻さんは「今の味が完成形です」と話す。
卓上には、8種類のトッピングが用意されている。高菜と紅生姜、すりゴマなどなどの定番に加えて、生ニンニクが丸ごと置かれていて、その場で潰して入れる。「生ニンニクは風味が違うので、ニンニク好きな方にはおすすめです」と八巻さん。味変の順番を考えるのも楽しい。
もちろん麺の量が物足りなければ、替え玉もある。替え玉用のタレも用意されているが、もとのスープの塩分がしっかりしているので、替え玉を加えてもそのままで満足できる人も多いだろう。そんな想像をしながら、すりゴマと辛子高菜をスープに加えた。香ばしいゴマの香りと高菜のシャキシャキとした食感も加わったスープは、あともう1杯だけとれんげが進む。
尊敬する人と出会って一生の仕事になったラーメン作り
20歳だった八巻さんが、ラーメン店で働くことにした理由は、ラーメンが好きだったことに加えて自宅の近くにあるお店だったから。本人も「軽い感じだった」と振り返る。そのラーメン作りが一生の仕事となり、自分の店を開くまでになったのには、最初の店で出会った店長の影響が大きい。「ラーメン店としての基本はもちろん、人への思いやりもその人から学んで、人間として成長させてもらいました」と話す。ずっと尊敬し、今も何かあると相談しているという。
そして独立するにあたっては、3人の子供を持つ父としての視点から、家族連れが食事しやすいラーメン店でありたいと考えた。テーブル席を確保し、幅広い層に食事してもらいたいとランチタイムのセットメニューも充実させている。その中でも力を入れているのがサイドメニューの餃子だ。皮は麺と同じ製麺所から仕入れ、豚肉にキャベツ、玉ねぎ、白菜とニラを入れて店内で包んでいる。「その分、値段も安くできています」と八巻さん。肉と野菜のバランスがいい餃子には、醤油と酢も用意されているが、柚子胡椒を添えて食べるのがおすすめだ。
高円寺パル商店街内というアクセスの良さはいうまでもなく、昼は11時から、夜は23時まで営業していて、さまざまなニーズに応えてくれる。締めの一杯はもちろん、家族での気軽な食事と使い勝手のいいお店として覚えておきたい。
取材・文・撮影=野崎さおり








