人と人がつながるサンドイッチ『passsand』
2025年8月の開業前も後も東長崎界隈(かいわい)の話題の種。「サンドイッチをきっかけに人と人がつながる店になれば」と街全体を盛り上げるのは「東長崎ぐらし」代表の足立知則さん。幼少期に大好きな喫茶店があった場所で、住まいが同じ建物だったことに背中を押されてオープン。近所の名店から仕入れて作るコラボサンドイッチに強い地元愛を感じる。
11:00〜17:00(水は12:00〜)、月・火休。
週末限定で発信されるクリエイティブ『I AM Tokyo』
カフェ『MIA MIA』の姉妹店で、センスのいいものであふれる小さなギャラリー。気鋭のアーティストや作家、ブランドなど、毎月何かしらの展示やポップアップが行われ常に好奇心をくすぐられる。海外の店舗とコラボレーションした「Coffee Time with Vaughan」やスニーカーブランド「ムーンスター」など、2025年内開催予定の企画も胸アツ。
14:00〜18:00(変更あり)、月〜金休。
コーヒー×◯◯◯、掛け算って素敵『SECOND.coffee&』
アーティストだったりイベントだったり、何かと掛け合わせてコーヒーのおいしさやチルタイムを届ける村田夫妻。コーヒーの容量は360mlと大容量で、希望があればバリスタの店長がラテアートを描いてくれるなど、おもてなしずくめで自然と長居してしまう。「オーナーの出身地の特産品を使った掛川抹茶メニューも自信作ですよ〜!」。
10:30〜16:30、日〜水休。
☎03-6820-2310
チョコレート沼にとっぷりハマる『カカオ工房トリビュート』
池袋から移転し、カカオの探究が日に日に深くなった結果、クラフトチョコレートのラインアップがぐんとアップ。一番人気のガトーショコラは、新作2種類が仲間入り。スプレッドやボンボンなど、自分用はもちろんギフトにふさわしい名品も。どれも同じカカオを使っているのに、みんな違ってみんな美味。運が良ければ店内奥で成形する様子が見えるかも。
11:00〜19:00(日・月は〜18:00)、火休。
これぞ大人のユートピア『Livin'Large BEER&Gallery』
2024年9月、南口から北口エリアに移転。アメリカの輸入雑貨やあの頃の懐かしいグッズを見たり買ったりしながら、生&缶ビールが飲め、お隣の『やきとりキング』の総菜が持ち込める空間はまさに大人のたまり場。「お子さんと一緒に来てくれるお客さんもいますよ〜」と世代を超えて胸が高鳴るシャングリラだった。
15:00〜22:00(土は12:00〜、日は〜20:00)、月休(祝の場合は営業、翌火休)。
小鹿田焼でもてなす酒と肴『酒と肴 ソノモノ』
小鹿田焼(おんたやき)に惚(ほ)れ込み、魅力を語り続けて2025年で15年目の店主・榑松そのこさんが11〜18時の「小鹿田焼ソノモノ」の営業後に手作りの家庭料理を振るまう。料理を作ることもお酒を飲むことも好きというだけあって、何を注文しても箸も杯も止まらない。また、小鹿田焼の器でふるまってくれるのもここならでは。食欲だけでなく物欲も刺激される。
18:30〜21:00LO、火・水・木休(臨時休あり)。
☎03-6909-5960
十人十色で二つとない街
駅を出たら秒で好きになった。なんでだろう? はじめましての街なのに。
移転先を探す中で現店舗にたどり着いたという『カカオ工房トリビュート』のロマンさんと北川さんは「老舗のみなさんもとっても気さくだし、本当に親切」と話す熱量がものすごい。
物件が縁をつなぎ東長崎でお店を開いた方はまだまだいた。村田夫妻が営む『SECOND.coffee&』もその一軒。「たまたま周辺に保育園や大きな公園があって、お子さん連れのお客さんも多いんです」。今では、1児の親だからこそできる店作りを行っている。
北口の前は南口エリアで営業をしていた『Livin’Large BEER&Gallery』の今井さんは、店だけでなく住居もこの街にあるという。「ここを拠点にして10年が経つけど面白い街よ」。常連さんが、隣の老舗で買ってきた総菜を片手に「おー」とナチュラルに入ってくる姿に日常が垣間見えた。なるほど、人と店がこの街を愛おしくさせるのか。
店や人となりが街全体になじむ
あの街もこの街も再開発がどんどん進み、気づけばどの街も同じような顔色、表情……色味でいうとグレーあたり。しかし、東長崎は違っている。2011年開業の『小鹿田焼ソノモノ』兼『酒と肴ソノモノ』店主の榑松さんは、休日も東長崎界隈で過ごすことが多いらしい。「この5年くらいでおいしいお店が増えて。選択肢が広くなって楽しい街ですね」。
この街で会える有名人といえば、東長崎では『MIA MIA』&『I AM Tokyo』オーナーのヴォーンさんだ。妻の理恵さんと立ち上げた店はいつだって愛だらけ。スタッフさんもお客さんも、みんな仲間で友達で家族。店舗外に設置された物々交換ができる本棚もお店に来てくれたお客さんだけのものではない。この街で生活する人たち、ひいては通りすがりに見つけた人のものでもある。「本でみんながどんどんつながっていくんだよ〜」とシンプルだけど、今の時代に一番大切なことをこの上なくハッピーに気づかせてくれた。
「自分が生まれ育ち、住んでいる街を楽しく面白くしたいと思っていろいろやっていますが、飲食店経営は初めてなので大変ですよー」と笑って話すのは、2020年からこの街の活性化に取り組む「東長崎ぐらし」代表で『passsand』オーナーの足立さん。「オープンしたばかりですが、街のコミュニティスペースやインフォメーションセンターのような役割を担えたら」と話しているそばから、通りすがりのいろんな人たちから声をかけられていた。
何十年も続くお店と混ざり合うように、個性あふれる新しいお店が増えている東長崎。じわじわと、けれど確実に魅力が増しているのは足立さんをはじめ、どのお店の人たちもこの街が、人が大好きで、深く感心を持っているからだろう。きっとこれは序盤に過ぎない。もっと、ほかのどこにもない街に「ルネサンス=再生」していくはずだ。
取材・文=新居鮎美 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2025年11月号より





