コスプレホストタウン“なごや”

我らの秋は祭りの秋、名古屋城でも秋祭りが行われておるほか、方々にてさまざまな祭りが行われておるわな!!

この時期の城や史跡は祭りや特別展が多いでな!

城を楽しむにはもってこいの季節である!

じゃが!

現世ではとある大きな祭りが全国で催されるわな。

その祭りの名は「はろうぃーん」である。

聞くには老若男女が思い思いの衣に身を包む仮装大会的に楽しむ者も多いそうじゃな!!

いわゆるコスプレなるものであろう。

現世の名古屋は大須商店街をはじめ推しやら“あにめ”やらの聖地が実に多く、特にこの仮装においては日本一の街であるといわれる。

名古屋は「コスプレホストタウン」の異名を持っておることを知っておるかのう!

毎年夏には世界コスプレサミットなる世界一の仮装大会が行われ、世界中から仮装の精鋭たちが集うて鎬(しのぎ)を削っておるのじゃ。

大会の翌日には仮装大会に出た精鋭たちが名古屋城に参りて、我ら名古屋おもてなし武将隊へと謁見するのが常となっておるのじゃが、現世で大流行したこの仮装大会。

始めたのは豊臣秀吉であること、皆は知っておったか?

ということで、此度の戦国がたりは武士が始めた日ノ本のコスプレ文化の話をして参ろうではないか!!

いざ参らん!!

太閤秀吉の真骨頂

此度の話の舞台は「なごや」。

なごやといっても尾張名古屋ではなく、現世の佐賀県、肥前名護屋である。

肥前名護屋は秀吉の外征時に国内の最前線基地として整えられた場所で、肥前名護屋城が建てられてからのたった数年で150の大名家が集い、人口は20万人以上の特大都市となった場所じゃ。

肥前名護屋城については以前にもこの戦国がたりで記しておるわな。

諸大名の肥前名護屋での暮らしは決して平易なものではなかった。

領地を離れ、慣れぬ土地に長く留まらねばならぬだけでも者によっては難儀であろうし、戦を前に気が張っておる者たちを大勢抱えておる。

さらには肥前名護屋城の周りに150以上の大名家の陣屋が所狭しと並んでおるから、隣人関係にも気を使わねばならんわけじゃな。

関係が良かった我が前田家と徳川家の間でも小競り合いが起きかけたほどである。

その張り詰めた空気をなんとかしようと秀吉が思いついたのが、この仮装大会である!

秀吉は肥前名護屋城のそばにある瓜畑に諸大名を集めた。

そして諸大名に仮装をさせる、のではなく自らが仮装をして盛り上げたのじゃ!

まあ、無論であるが儂は秀吉と共に仮装に興じることとなったわな。

秀吉が瓜売り、徳川殿は籠売り、儂は高野山の僧に扮した他、織田信雄様が遍参僧(へんさんぞう)、蒲生氏郷が茶売り、前田玄以は女装をして尼僧にそれぞれ扮しておった。

豊臣政権の重鎮たちが思い思いの仮装と芝居を見せ、観客となった諸大名たちは大盛り上がりであったわ!

重く張り詰めた陣屋の空気をかようなやり方で変えてしまうとは、これぞ太閤秀吉の真骨頂と言える出来事である。

秀吉は北条攻めの折にも、陣に娯楽施設を築くことで長期の攻城戦で一番難儀する士気の低下を防いでおるし、人たらしの才が戦の中から垣間見えるわな。

肥前での仮装大会は瓜畑で行われたことから「瓜売り」や「瓜畑遊び」などと呼ばれ日ノ本のコスプレの原点として語られるのじゃ。

秀吉がコスプレの祖のように話して参ったが、肥前での仮装大会は珍かな話であって現世のコスプレ文化とは毛色が違うわな。

民が思い思いに仮装する現世のような形の元となったのは江戸時代に日ノ本中で流行した「ええじゃないか」踊りと言われておる。

皆が思うたよりも古いのではないか?

女装や男装、狐や七福神など皆が仮装をして集まったこの踊りをもとに、仮装や仮装行列が広まったと言われておるそうじゃな。

他にも今日の京の都で芸妓が演目に合わせた仮装をして街を練り歩く「ねりもの」なる催しがええじゃないかと同じく江戸時代に始まっておって、これも起源の一つともされておるわな!

終いに

ということで、此度は仮装について触れて参ったが如何であったか!

現世の催しもひも解けば長い歴史がある、なかなかおもしろき話ではないか。

江戸時代は民の文化が花開いた時代、故に現世ならではのものだと思うておっても実は起源が江戸時代にあることは往々にしてあるで、これからも紹介していけたらと思うておる。

じゃがこと仮装においては、現世と我らの時代のつながり以上に、今も昔も日ノ本の民は変わらず仮装のような面白おかしい催しが好きなのであろうと思うた!

自らも楽しみ周りの皆も楽しませる誠良き文化であると思うで、皆も節度を持ちつつこの現世のコスプレなる催しを楽しむもよかろう。

始めにも触れたが、我らが名古屋の街はコスプレホストタウンとしてさまざまな仮装の催しが行われておるでな、見るもよし自ら仮装に興じるもよし、これを目当てに遊びに来るのもよかろう。

といった次第で此度の戦国がたりは以上となる。

つぎの話も楽しみにしておるが良いぞ!

文・写真=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)