台風は年間どれくらい発生するの?
台風はまるで狙っているかのように、楽しい予定の多い夏休みシーズンにやってくる……。そう恨めしく感じた経験がある人もいるでしょう。どうして台風は夏や秋に多くなるのでしょうか?
実は、台風そのものは夏や秋に限定せず、年間を通して発生しています。平年だと一年間に25.1個発生し、そのうち11.7個が日本へ接近、約3個が上陸します。冬に当たる12~2月でも熱帯の海では平年だと約1.4個の台風が発生しているのです。
台風はなぜ夏や秋に多く近づくの⁉
台風は季節を問わず発生するといっても、冬など寒い季節に日本に近づくことはほぼありません。これは、台風の発生する場所や周辺の風の動きに理由があります。
台風は海面水温が27度以上の非常に温かい海で、水蒸気をエネルギー源として発生します。そして、台風は自力ではほとんど動くことができず、周りの風に流されて移動します。冬の時期は日本の近海では海面水温が低いので台風はあまりできず、赤道に近い低緯度の海で発生します。はるか南の海上で発生した台風は、このあたりで吹く東よりの風に流されて、フィリピンや中国南部、ベトナムの方へ向かうことが多く、日本へ近づかないのです。
ところが、夏になると、日本付近の海の温度が上がり、台風の発生する緯度が高くなってきます。さらに、太平洋高気圧が日本への張り出しを強めます。高気圧の周辺では時計回りの風が吹くため、この風に流されて、台風は日本に向かって北上することが多くなり、日本への襲来が増えるのです。
また、台風が日本付近に近づいた後にとる進路にも月によって特徴があります。一般的に7・8月は本州付近を覆う太平洋高気圧の縁に沿って、沖縄や奄美、西日本に近づくことが多いですが、9月に入ると次第に太平洋高気圧が勢力を弱めるので、東日本への通り道ができるようになります。さらに、夏は日本の北を流れていた偏西風が秋になると南に下がってきます。偏西風の影響で台風は本州付近で急に東へカーブすることが増え、東日本へ近づくことが多くなるのです。
「台風」と「熱帯低気圧」「温帯低気圧」の違いは?
台風のニュースや天気予報を聞いていると、台風が「熱帯低気圧」または「温帯低気圧」に変わったという表現が使われることがあります。台風も含めてすべて低気圧の一種ですが、どのように違うのか解説します。
まず、台風と熱帯低気圧の違いは、中心付近の風の強さです。熱帯低気圧とは熱帯の海で発生する低気圧のことで、このうち中心の風速が約17m/s以上になったものを台風と呼んでいます。台風が熱帯低気圧に変わったということは、風は弱まったということになりますが、大雨をもたらす力が衰えたとは決して言えないのです。
一方で、温帯低気圧とは台風とは別の原理で生じる現象です。温帯低気圧は北からの冷たい空気と南からの暖かい空気が混ざり合うようなところで発生します。一般的に、熱帯低気圧よりも北の中緯度帯でできる低気圧ですが、台風が北上して冷たい空気を引き込むようになると、性質が変わり温帯低気圧になることもあります。
台風の接近や上陸が予想されるときは最新の気象情報を確認するとともに、空の便や鉄道などの交通情報にも気を配る必要があります。台風の予報円の見方については、この連載の過去の記事【台風は接近前から要注意!「予報円」の正しい見方、台風情報を確認する時のポイントは?】も参考にしてください。また、大雨による土砂災害や浸水、川の増水のほか、強風による被害が予想されているときは外出や散歩は控えるようにして、安全第一で、次のお出かけを楽しみに待ちましょう。
文=片山美紀 TOP画像=ウェザーマップ
参考:
気象庁「台風の発生、接近、上陸、経路」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-4.html
気象庁「はれるんライブラリー 台風、熱帯低気圧、温帯低気圧は、どうちがうの?」 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a4_11.html






