食堂ではないのに「食堂」、そして「六貨」とは
店名に「食堂」と入っているが、食堂は営んでいない。あくまで雑貨店だ。
「日々仕入れたものを、その日に並べて売っていきたいんですよ。食堂の日替わり定食みたいに。ときどき食堂と間違われちゃうけどね」と店主の竹内さん。しょっちゅう棚や商品を入れ替えるそうで、その日その時のおすすめを紹介するお店のスタイルは、たしかに食堂のよう。
では「六貨」は?
「人が生きるのに必要なのは衣・食・住だけど、それだけではちょっと足りない。心地よく暮らすためには、読む・創る・贈るの3つを加えた6つの要素が必要なんです」と竹内さんは話す。「たくさんのものはないけど、6つの要素を備えたものがある。だから百貨店じゃなくて『六貨店』」。そう言われて店内を見回すと、実用的で使いやすそうな、それでいてちょっとワクワクするような商品でいっぱいだ。
便利そうなものって好きじゃないので……
竹内さんが厳選した道具は、国内外を問わずシンプルで歴史をもつものが多い。便利そうだと思って買ったものが、だんだん使わなくなってしまった、ということはよくあること。「それと比べて、古くから使われ続けている道具はとっつきにくい反面、機能にあったデザイン性もあり、長く付き合っていけるから」と話す竹内さん。商品選びにとても深い想いを感じた。
パッケージから出した状態で置いてあるので、実際に自分が使うことを想像しやすいのも特徴。これも、持ってみてきちんと選んで欲しいという気持ちの表れだ。なぜこの商品がいいのか。使い方や注意点などを竹内さんから教えてもらって、じっくり品定めできるのも魅力だ。
これからもずっと、ここで続けていきたい
「地元のお客さんはバランス感がいい」と竹内さん。
西荻窪は、吉祥寺と荻窪というふたつの大きな駅に挟まれた駅だ。どちらかに行けば高価なものであっても必ず手に入る。しかし地元で買うとなれば話は別で、値段と商品がマッチしているかどうかがとても重要。西荻住民のバランス感覚はこうして養われているようだ。実際、お店に来た常連の人はいろいろと竹内さんに質問し、「また来る」と言って帰っていった。なかなか財布の紐は固い。
「必要なものを見定めるのが上手なお客さんに恵まれているんですよね」
そんな竹内さんがうれしい瞬間は?と聞くと「実用的な道具と、ちょっとキッチュでおもしろい商品をいっしょに買ってくれたとき。好みが合う!と思ってしまいます」
道具を見る目の確かさと、気軽なかわいさがミックスされた雑貨食堂。日常的に立ち寄りたい頼りになる店だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ