日本を代表する蒲鉾の老舗、大阪の『大寅蒲鉾』

蒲鉾を愛する人々にとって、『大寅蒲鉾』は特別な存在だといえよう。明治9年(1876)に創業し、明治25年(1892)に大阪戎橋筋(えびすばしすじ)に新店舗をつくると同時に屋号を「大寅」と定めた。

現在の商品券の原型となる切手販売をいち早く導入し、大正期には東シナ海の以西底曳漁業に着目し、そこで獲れるグチ(イシモチ)を用いた蒲鉾づくりに成功した。

二代目社長の小谷権六氏は蒲鉾業界に多大な功績をもたらした人物であり、蒲鉾業界初となる全国団体「全国蒲鉾組合連合会(現在の日本かまぼこ協会)」の設立に寄与し、初代理事長を務めた。農林水産大臣賞など数多くの賞に輝き、大阪だけでなく日本を代表する蒲鉾店(企業)として広く知られている。

『大寅蒲鉾』のあんぺい。
『大寅蒲鉾』のあんぺい。

鱧(はも)を用いた「板付蒲鉾」ももちろん、純白でふわりとした食感が魅力の「あんぺい」や魚のすり身に卵を混ぜた「うめやき」などの大阪を代表する練り物のほか、関西での揚げ蒲鉾の名称である「てんぷら」を各種製造している。

東京で大寅の味を楽しむ

東京ではそのすべてを手に入れるには大寅のオンラインショップを利用するしかないが、いくつかの商品は中央区勝どきにある「ダイトラ」を通して量販店で購入できる。なお、「ダイトラ」はオリジナル商品の製造や出荷、販売も行っている。

今回はその中から6商品を紹介しよう。左からダイトラおでん(関東だき)、白上天、いか焼き、いか入りあげてん、京の九条ねぎ天、手ちぎり天。

白上天は大寅を代表する商品で、大阪特有の白いてんぷら(揚げ蒲鉾)となっている。キクラゲが入っており、独特の食感が癖になる。

厚みに変化がある「枕」と呼ばれる形状をしており、1枚で異なる食感を楽しめる。豊かで上品な魚の旨味をじっくり味わえる一品だ。

九条ねぎ天は京野菜の代表格である九条ねぎがたっぷり入っており、あふれ出る芳香が素晴らしい。

九条ねぎは柔らかな食感で、丁寧に擂(す)りあげた魚のすり身と違和感なく調和している。京都と大阪という関西の食を堪能できる。

関西らしいといえば、お好み焼風鉄板焼のねぎ焼きは大阪の味わいを存分に楽しめる。東京などで催事を行うと、1日に何百枚も売れるという人気商品だ。

たっぷり入ったねぎの食感と香りが素晴らしく、生姜のアクセントも心地よい。薄揚げ(薄い油揚げ)とこんにゃくも入っており、満足度も高い。実際に職人の手で1枚ずつ鉄板で焼いているのだという。

いか入りあげてんは1枚で4人分ほどある大きな商品だ。いか以外にも種類があり、何も入っていないプレーンな平天なども揃う。

いかの旨味もさることながら、しっとりとした上品な食感とやさしい魚の旨味が素晴らしい。わさびや生姜醤油につけて、じっくりと味わいたいところだ。

それぞれ単品で購入するのもいいが、どれを選ぼうか迷ったなら3種類の味が楽しめる手ちぎり天を試してみるといいだろう。九条ねぎ、ごぼう、きくらげが入っており、ひと口サイズなのでおつまみにしたり、ちらし寿司や麺類などの料理に使用することもできる。

最後に紹介するのはダイトラおでん(関東だき)だ。ダイトラ監修のもと宮城県塩竈(しおがま)市の「高浜」が製造しており、鰹節と昆布の合わせ出汁にこだわったパックのおでんだ。大根や玉子、ちくわや結び昆布、揚げ蒲鉾といった定番のおでん種が揃っている。

大阪に足を運ばなくても東京で「大寅」の商品を購入できるのはうれしいかぎりだ。さらに多くの種類を味わいたいのであれば、オンラインショップもぜひご利用いただきたい。「あんぺい」のように季節限定商品も販売されているので、大寅のInstagramXなどもチェックしてほしい。

『大寅蒲鉾』の基本情報

大寅蒲鉾(難波戎橋筋本店)
大阪府大阪市中央区難波3-2-29
06-6641-3451
定休日:月
営業時間:10:00~20:00

大寅蒲鉾のWebサイト大寅蒲鉾のオンラインショップ
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取材・文・撮影=東京おでんだね