自由奔放な解釈で個性がにじみ出る
四川料理の酸辣湯に麺を加えた日式メニューが酸辣湯麺。このところ、町中華でも扱う店が増えてきて、酸っぱ辛いのが好きな僕にとっては歓迎すべき傾向だ。もともとがスープだから、本格志向の中国料理店では文字通り、酸辣湯に麺を加えたシンプルな食べ方が主流。しかし、自由奔放な解釈で独自の世界を作る町中華では、店の個性がにじみ出たメニューに変身してしまう。たとえば浅草の『十八番』ではトマトや豆腐に野菜もたっぷり使った、スペシャルタンメンみたいな仕上がりになる。いろんな旨味が微妙なバランスで絡み合い、一言では説明できないおいしさなのだ。酸辣湯麺、まだまだ進化しそうだなあ。いろんな店を食べ歩いてみたいメニューの筆頭だ。(トロ)
そもそも「サンラータン」なのか、「スーラータン」なのかと思って調べたら、中国語ではサンラータンでした。でもカタカナでスーラータンて書いている店もありますよね。
僕はスープ類が好きなので酸辣湯に麺が加わったメニューだと思ってる。なので、ピリッとしたスープを飲みたいけど腹もすいている、そんなときに頼みます!
近所の町中華の酢辣湯は春雨が入ってるスープです。山椒が効いて無茶苦茶、辛い。
実は浅草の『十八番』さんで食べるまで町中華で酢辣湯麺は未経験でした。町中華にも酢辣湯麺があるんですね。
私も、ガチ中華(注:本格志向の中国料理店の意)では頼むけど町中華では1回くらいしかないかも。ラーメンのスープはちょい残しOKな感じですが、酢辣湯麺だけはスープ残すと食べ残した感が強くてはばかられるのが不思議。
確かに、そもそもスープ料理というのが前提ですからね。
自分はたぶん、最初にいただいたのがガチ中華だったと思います。ガチ中華では複雑な味わいですが、町中華はシンプルな感じですよね。
なるほど、確かにガチ感があるメニューで。それが町中華で食べられるというのが面白いですね。具材って定義ありますか?
具材は少なくて、たけのこ、しいたけ、卵くらいのイメージがあります。
野菜たっぷりというイメージですね。
酢辣湯麺で注目すべきは具材とその辛さ
『十八番』ではトマト、そして豆腐がどっさり入っていて驚いた。麺を入れることで、具材に町中華の自由さが発揮しやすくなったのかな。
自分は浅草橋『中華楼』の酸辣湯麵が宝石箱のようでお気に入り。皆さんの酸辣湯麺の印象をもっと聞きたいですね。
酸辣湯麺というとしょうゆ味で、やはり卵が入っているのを初めて食べました。あれが一番スタンダードかなあ。
熱い、酸っぱい、箸を持つ手が重たいっていう印象。十八番の酸辣湯麺にもオールスター感があるね。しかも食べても食べても減らない。
そうそう、麺がスープを吸っていくよね。いつまでも熱々。でも、トマトとか豆腐のあっさり系だから最後までいけちゃう。
とろみがあって、食べ応えはあるんですよね。やはり町中華のとろみの偉大さを改めて感じました。あと、酢辣湯というからには辛さはマストでほしい。なにせ「辣」ですからね。
奥深すぎる町中華の「酸っぱい問題」!
最初に食べた酢辣湯は酸っぱさよりも辛さが強かったのですが、別の店で食べたら甘酸っぱくて、店によってずいぶんばらつきがあるんだなと思いました。
今は一部の店にしかない酸辣湯麺は今後、町中華のスタンダードになれるだろうか。
世間的には少し前にブームになりかけたけど、しぼんでしまいましたね。理由は「これが酸辣湯麵だ」っていうのがなかったからでしょうか。
酸っぱ辛い味は少ないから定着する可能性あると思いますがね。
ちゃんぽん以上に捉えどころがないですもんね。何か白っぽくて。ちゃんぽんは一応、長崎には前からあったから、まだブームになって広がる余地があったのかもしれないですね。酸っぱさって和食ではちょこっとしか味わえないから、中華の醍醐味だなあと。疲れたときとか病み上がりにほしくなります!
なるほど、酸っぱさが中華の醍醐味かあ。たいていの町中華ではテーブルに酢が置いてあるけど、僕は餃子くらいでしか使わないんですよね。どういうときに使います?
味変で最後にお酢を使います。
餃子のたれには醤油以上に使うかも。
やたらしょっぱいときとか酢をかけると緩和されますよ。
と、考えると最初っから酸っぱいメニューって珍しい! ほかに何かありますかね。
酢豚!これはいずれ避けて通れないので「酸っぱい問題」についてはそのとき詳しくやりますか!
オリジナルの味がきらりと光る『十八番』
『十八番』は、86歳になった今も元気に店に出る栗原さだ子さんが、亡き夫・永治郎さんから継いだ店。塩とトマトを使ったさっぱり味の酸辣湯麺950円はじめ、ここにしかない料理ばかりだ。 近年はテレビでも取り上げられ若い客も多いが、この人気は決してメディアのおかげじゃない! 店を繁盛させているのは、先代から引き継いだ確かな味と、オリジナルの味を追求するあくなき探究心。次は何を食べようか、とワクワクさせてくれる名店なのだ。
取材・構成=半澤則吉 撮影=山出高士
酢辣湯麺はもともと町中華のメニューではニューフェイスな感じのメニュー。自分も初めて食べたのがごく最近で10年前くらいでしょうか。店によって、まったく違ったレシピなのが驚きます。