イタリアのマンマの味から郷土料理までカジュアルにいただけるレストラン

吉祥寺を象徴するサンロード商店街は、平日でもたくさんの人でにぎわっている。商店街に入って約2分歩くと雑居ビルの3階にトラットリア『La Creatura』を見つけた。

個人的には1階の靴量販店『シュープラザ吉祥寺本店』や、2階にある100円ショップ『ダイソー』には来たことがあるのだが、3階には上がってきたことがなかった。まさかこんなステキなイタリアンがあったなんて!

ダークブラウンの床や木戸、雰囲気のいいランプが飾られている。
ダークブラウンの床や木戸、雰囲気のいいランプが飾られている。

立て看板に書かれたランチメニューの、ピザやパスタの写真が食欲をそそる。

店内に入ると、商店街のガヤガヤした雰囲気はなく、和気あいあいと食事を楽しむ人たちの穏やかな空気感に包まれていた。ここで落ち着いて食事ができそうだ。

どんな質問にもにこやかに答えてくれたシェフの市川翔太さん。
どんな質問にもにこやかに答えてくれたシェフの市川翔太さん。

シェフの市川翔太(いちかわしょうた)さんに聞くと、『La Creatura』がオープンしたのは2002年。イタリアの郷土料理や伝統料理がリーズナブルにいただけるレストランとしてスタートし、とくにランチタイムはマンマが作ったような親しみやすいメニューが味わえるのだとか。ディナータイムは、自家製手打ちパスタや、牛ホホ肉の赤ワイン煮込みや鮮魚のパレルモ風オーブン焼きなどのほかマニアックなイタリア郷土料理も用意されている。

イタリアのトラットリアをイメージした店内は、イタリアから輸入したインテリアが配されている。
イタリアのトラットリアをイメージした店内は、イタリアから輸入したインテリアが配されている。

また、オーナーの安松啓太郎(やすまつけいたろう)さんは「ウチは地元の常連さんが多いんですよ。料理はパンやドレッシング、ソースからなるべく手作りにこだわっています。やはり、手作りするとスープひとつにしても素材の味わいが出ていておいしいと思いますし、イタリアでは素材を生かした料理が多いですからね。それから、ワインはイタリア産のみを取り扱い、イタリア全土からさまざまなテイストのものを取り揃えているのもこの店の特徴ですね」と話す。

グラスワインは700円から用意され、ボトルワインもリーズナブルだ。
グラスワインは700円から用意され、ボトルワインもリーズナブルだ。

地元の常連客に愛されているという時点で、もう優良店の太鼓判を押されているようなものだ。ランチと一緒にワインもいただいてみようかな。

粉から見直し、生まれ変わったローマ風ピザ

さっそくメニューを開くと、どれにしようか脳内で作戦会議が始まった。

ランチはすべてのメニューにスープorサラダ、パンとドリンクが付く。直径約30cmのローマ風焼きピッツァか、パスタ、リゾット、インサラトーナ(イタリア風具だくさんサラダ)もあるぞ。時間があるなら、今月のピザか今月のパスタが選べ、さらにドルチェが付く今月のスペシャルランチセットや、牛ホホ肉ワイン煮込みや鮮魚の香草パン粉焼きと野菜のグリル〜レモン風味〜といった月替わりのメインがいただけるメインディッシュセットもアリだ。ちなみにこれは夜のメニューでも人気。

ピッツァやパスタ、リゾットでサッと食べるもよし、じっくり腰を据えてスペシャルランチを堪能し尽くすのもいい。
ピッツァやパスタ、リゾットでサッと食べるもよし、じっくり腰を据えてスペシャルランチを堪能し尽くすのもいい。

考えた結果、ピッツァセットからマルゲリータ1650円を選んだ。だって、入り口の立て看板に載っていた大きな写真がとてもおいしそうだったから。迷ったときは直感で選んでほぼ間違いがない。

オーダーを済ませると、ローマ風ピッツアを作っている様子を特別に見せていただいた。

吟味して選んだ小麦粉で作った生地を伸ばしていく。
吟味して選んだ小麦粉で作った生地を伸ばしていく。

「創業当時から、薄い生地で作るローマ風ピッツァを提供しているんですが、2024年に原料の小麦粉から見直して生地を改良しました。ローマ風ピッツアを提供しているレストランに行って、勉強させていただきながら少しずつ独自の改良を重ねました。おかげさまで歯ごたえや舌ざわりが良くなったとお客さまにも好評です」

ピッツァの生地をまずは手で伸ばし、さらに綿棒で伸ばしていく。生地の真ん中が薄くなりすぎないよう、均等な厚さにしていく。

打ち粉にデュラムセモリナ粉を使うことでザクザクとした食感に。また、生地に牛乳などを加え味や食感がブラッシュアップした。
打ち粉にデュラムセモリナ粉を使うことでザクザクとした食感に。また、生地に牛乳などを加え味や食感がブラッシュアップした。

鉄板の上に広げたら、ピッツァソースをかける。このソースもいくつものトマトを吟味して作った自家製だ。パンのような生地のナポリピッツァとは違い、ローマ風は耳がないのでギリギリまでソースを塗っていく。

さらにバジル、チェリートマトをのせていく。水牛モッツァレラとエキストラバージンオリーブオイルをかけて完成。
さらにバジル、チェリートマトをのせていく。水牛モッツァレラとエキストラバージンオリーブオイルをかけて完成。

仕上がったマルゲリータの直径は30cmほど。いくら薄いといってもひとりで食べるには少し大きすぎるのでは?

「そう思われるかもしれないんですが、ほとんどの方は完食されますよ」と市川さん。そうなんですか、楽しみだなあ。と思いながらオープンに入っていく筆者のマルゲリータを見送った。

たっぷりチーズをかけたら、オーブンで焼くこと3分。
たっぷりチーズをかけたら、オーブンで焼くこと3分。

焼いている間に市川さんに話を聞くと、ランチタイムでマルゲリータと並ぶ人気なのは、生クリームを使わず卵とチーズだけで作るローマ風のカルボナーラだそう。マルゲリータをペロリと平らげられたならそれも食べてみたい!

耳はパリパリ、中はもっちりジューシー! 軽い食感のローマ風ピッツァをペロリと完食

3分で焼きあがってしまうので、慌てて席に戻るともうランチセットのセッティングが終わろうとしていた。

おお、これは圧巻、マルゲリータの大きさよ! ピザは熱いうちに食べないと。さっそくピッツァカッターで好きなように切って食べよう。

マルゲリータピッツァ、スープ(orサラダ)、自家製パン。ワインはアンティリア4950円とカントドーロ フェウド アランチョ3200円(750ml)。
マルゲリータピッツァ、スープ(orサラダ)、自家製パン。ワインはアンティリア4950円とカントドーロ フェウド アランチョ3200円(750ml)。

ピッツァに手を付ける前に、まずはスープをひと口飲もう。ゴロゴロと大きくカットしたタマネギ、ニンジン、ベーコンがたっぷりのコンソメスープは、野菜の旨味が溶け込んでじんわりと舌に喉に、おなかの中に染み渡っていく。

ごろごろ野菜が入ったコンソメスープはやさしい味付けだ。フッカフカの自家製フォカッチャと一緒にいただこう。
ごろごろ野菜が入ったコンソメスープはやさしい味付けだ。フッカフカの自家製フォカッチャと一緒にいただこう。
ピザカッターを入れたら耳の部分がパリパリッと音が鳴った。かなりクリスピーだ!
ピザカッターを入れたら耳の部分がパリパリッと音が鳴った。かなりクリスピーだ!

切り分けたピッツァは薄めだが、大きいので持ち上げると重量がある。ピッツァソースがこぼれないように折りたたんで食べた。耳の部分はパリッと軽い食感で香ばしく、中の生地はモッチモチだ。しかも、小麦の香りがふんわり鼻をくすぐる。

マルゲリータは、トマトの旨味やフルーティーさ、たっぷりのチーズとバジルの香りが相まった定番人気のピッツァだ。
マルゲリータは、トマトの旨味やフルーティーさ、たっぷりのチーズとバジルの香りが相まった定番人気のピッツァだ。

食べやすいように折りたたんで大正解! 噛み締めるとフルーティなトマトとピッツァソース、チーズがあふれてしまうほどジューシーだ。チェリートマトは甘酸っぱく、トマトベースのピッツァソースは旨味が凝縮。さらにチーズのコクやバジルの香りが食欲を誘う。うーん、これはおいしい。ひと切れ、もうひと切れと食べ進めてあっという間に完食してしまった。

食後にランチセットについていたホットコーヒーを飲んでいると、ドルチェのメニューが目に入ってきた。

「ドルチェも手作りなんですよ。よかったらどうぞ!」と、市川さん。ティラミスやジェラートなどをすすめてくれた。

おなかに余裕があればドルチェもいただいてみたい。
おなかに余裕があればドルチェもいただいてみたい。

吉祥寺の駅前にありながら、落ち着いた空間でイタリア料理が味わえる『La Creatura』。

友達と来るのもいいけれど、平日にひとりでゆっくりランチをするとリフレッシュになりそうだ。

取材・文・撮影=パンチ広沢