抹茶の魅力を伝えるべくオープンしたカフェ
吉祥寺駅北口から、昔の商店街ような懐かしさもありながら、洗練された小さなショップが立ち並ぶ中道通りに入る。レンガを敷き詰めた道をまっすぐ歩くこと5分、『CAPOON抹茶製造所 吉祥寺店』の店頭にかかっていた「抹茶挽いて〼。」というのぼりが目に入った。
のぼりの鮮やかな緑を見たら、ガツンと濃い抹茶が飲みたくなってきました!
店頭にある石臼で抹茶を挽いている様子が見られ、臼と臼の間から苔のような抹茶がポロリ、ポロリとあふれ出てくる様子は見ていて飽きない。今度、吉祥寺で誰かと待ち合わせをするなら駅前の「ゾウのはな子像」じゃなくてこの石臼の前にしようかな。
『CAPOON抹茶製造所 吉祥寺店』は2020年にオープン。以前はコーヒーを主力にしたカフェを経営していたオーナーの古田さんが抹茶専門店を開くことになったのは、以前経営していた店で抹茶のメニューを開発したことがきっかけだったという。
「抹茶のメニューを出したらがすごく人気になったんです。当時、私はまったく抹茶のことを知らなかったのですが、そこから興味を持ち、いろんな抹茶農家さんのところへ足を運んでいくうちにその魅力にハマっていきました」
抹茶は煎茶をすりつぶしたもの……ではない。調べてみると抹茶と煎茶では育て方も作り方も違う。抹茶を育てるときは茶葉を摘む前に遮光シートで日光を遮るので、葉緑素が増え、葉の緑が濃くなってまろやかな味になるのだという。
「抹茶は人気があるんだけど『実はその正体について知らない人が多い』ということに気がつき、それを伝えられる場を作ろうと思ったんです」
バリスタでもある古田さんだがこの店では抹茶を主軸とし、抹茶の魅力を啓蒙している。
福岡県・八女の茶葉をメインにしたミルクと相性のいい抹茶を自家ブレンド
そもそも抹茶は何種類かブレンドしているものが一般的。この店で使用している抹茶は福岡県の八女産をメインに3、4品種を合わせたオリジナルブレンドだ。それを毎日石臼で挽いて使っている。
「抹茶は京都の宇治産がよく知られていると思うんですけど、八女のほうが比較的味や風味が強いんですよね。しかも、その土地の風土が茶葉の味に現れるので、同じ八女で採れたものでも個性が違うというか。すごく面白いお茶なんですよ」
個性の強い茶葉同士を掛け合わせて風味よく、味わいのある抹茶にブレンドするのは抹茶農家さんの腕の見せ所だ。
「うちでいちばん人気があるのが抹茶オレなので、農家さんには“牛乳に合う抹茶”をオーダーしています。毎年、農家さんと一緒にどの茶葉を掛け合わせたらいいか話し合って決めているんですよ」
抹茶オレに使用するのは旨味や香りの強い牛乳。それに負けない香りや苦味、まろやかな抹茶が求められる。ムムム、この店の抹茶オレを今スグ飲みたい!
挽きたてを使うからひと味違う! オレとプリンで抹茶づくし
レジに行き、抹茶オレと抹茶プリンをオーダーした。抹茶オレにはきび砂糖で作った自家製シロップを入れることができ、4段階から甘さが選べる。
オーダーが入ると、お客さんの目の前で茶せんを使って抹茶を点て、牛乳が入った冷たいグラスに注いでいく。
人気ナンバーワンの抹茶オレと、開店まもなく登場して以来人気を誇る抹茶プリンが卓上へ。おお〜、どちらも鮮やかな緑! この色が日々、パソコンやスマホを見つめて痛めつけている筆者の両目をやさしく癒やしてくれている。
抹茶の緑と牛乳の白のコントラストがキレイだ。ストローでグルグルかき混ぜると、店頭のぼりの色みたいなパステルグリーンになった。あら、筆者はこの色もスキです。
飲んでみると、お茶の爽やかな香りと苦味、深みのある味わいのなかにまろやかな牛乳が溶け合っている。少しシロップを入れたのだが、きび砂糖のやさしい甘さがバランスよく混ざりあっている。
次は抹茶プリン、これも楽しみだったんだ〜。抹茶をたっぷり使ったプリンの上にはこれまた抹茶を使った生クリームがのっている。スプーンを入れた瞬間、ぷるんとした弾力を感じた。
ひとさじすくって食べると、濃厚な抹茶味が凝縮されたプリンの上に、軽くて爽やかな抹茶の生クリームがいいカンジです。
なんだろう、抹茶の味わいのなかにちょっと懐かしい風味がする……。
すると「抹茶プリンに卵を入れて加熱すると抹茶の香りが飛んでしまうので、ゼラチンなどで固めて作っているところも多いのですが、うちは卵を入れても抹茶の味と香りがしっかり残るように作っているんです」と言いながら古田さんがにっこり。あ、そうそう! 抹茶の奥にふわっと感じた懐かしさは卵の味わいですね。
本格的な抹茶は格式が高いイメージがあったけれど、こうしてカジュアルに味わえるとグンと魅力的に感じられる。次はメニューに書いてあった、自分で点てられる抹茶をオーダーしてみよう。
取材・文・撮影=パンチ広沢