吉沢 恋(Yoshizawa Coco)

2009年9月、相模原生まれの15歳。7歳の時に、兄に連れられて小山公園ニュースポーツパークでスケートボードを始める。パリオリンピック2024では、14歳の若さで金メダルを獲得。所属は、地元のスケートボードショップ『ACT sb store』。

スケートボードを始めたのは近所に小山公園があったから

—— 相模原で生まれ育ってなかったら、スケートボードはやってなかったですか?

吉沢恋(以下、恋) やってなかったと思います。たまたま、近所に小山公園があって、スケートボードが身近にありました。兄の影響で、7歳からここでスケートボードを始めて、2、3年前までずっと通っていました。最初は週末行くくらいだったけど、だんだん練習量が増えて、毎日通うようになっていましたね。

—— 練習は楽しかったですか?

 最初はあまり楽しくなくて、連れられてきて仕方なくという感じでした。辞めたいと思ったこともあります。でも、ここまで頑張ったのにもったいないって、踏みとどまりました。応援してくれる人たちの期待に応えなきゃという思いもありましたね。今は、楽しいかな。

 

小山公園で滑ったのは3年ぶり。ホームに帰ってきた感じがする

—— 小山公園のスケボーエリアで練習していてよかったことは?

 ほかのパークより少し風が強くて、あと、セクションとセクションの間が離れているので、たくさん漕がないといけないんです。小さい頃からこの環境で練習していたおかげで体力もつきました。今年(2024年)11月からリニューアル工事に入るのですが、なじみあるパークがなくなるのはちょっと寂しいですね。でも、新しくなるのも楽しみです。

—— 久しぶりの小山公園はどうでしたか? パークにいた人たちからも、親しげに声をかけられていましたね。

 パークにいた人たちとは、昔、一緒に練習していたんです。今日は偶然会って「金メダルおめでとう」と声をかけてくれました。小山公園には久しぶりに来ましたが、懐かしい感じがしましたね。

—— 所属先『ACT sb store』の存在も大きいですよね。寺井裕次郎コーチにはいつから教わっているんですか?

 始めた時からお世話になっています。ここまでうまくなったのはコーチのおかげ。今は、一緒にいる時間はあまりありませんが、いつも優しく見守ってくれている感じです。こういう取材とか、競技以外のところでもサポートしてくれています。

—— 大会の時は、どんな戦略でいくかなど、寺井コーチと相談するんですか?

 コーチは帯同しないので、行く前に少し相談するんですけど、もう、本番になったら、基本的に1人で考えます。

—— パリでは4本目に大技を決めて、見事、逆転金メダル。練習でもほぼ成功したことのない技だったとか?

 パリでは4本目も、5本目も、どっちもミスなく大技を決めたら1位になれるのは分かっていたので、もうあとはやるだけ、という感じでしたね。

—— 大舞台、ここぞという時に冷静に判断して、確実に成功させるのはすごい!

 すごくないです(笑)。本当に、やるべきことをやったという感じです。

—— 試合中、緊張しませんか?

 しないですね。する時はするんですけど、始まっちゃうと楽しいという方が勝ります。

—— そういえば、スケートボードの選手は、競技中も音楽を聴いてますね。吉沢さんも聴きますか?

 私は、練習中は聴きますけど、本番中は聴きませんね。

—— 普段はどんな音楽を?

 基本何でも。洋楽もJ-POPも聴きます。はやりの曲はそんなに詳しくないですが、友達が聴いていて、いいなと思ったのを聴いたりします。みんなTikTokとかで流れて気に入った曲を聴いているみたいで、曲名も知らなかったりしますね。

—— TikTokで見つける! ジェネレーションギャップを感じます……。

学校がリフレッシュの場所。友達とおしゃべりするのが楽しい

—— 忙しくて休む暇もないほどだと思いますが、何をしてリフレッシュしていますか?

 学校に行くことがリフレッシュになります。友達と遊んだりする時間がない分、学校にいる間、みんなとおしゃべりするのがすごく楽しいです。案外、そんな時間があるから、スケートボードも続けていられるのかなって思います。

—— 休みが取れたら何がしたいですか?

 ディズニーランドに行きたいです! オリンピックが終わったら行くつもりでしたが、まだ行けてないんです。

—— 遠征などであちこち飛び回っていますが、地元に帰ってきたらほっとします?

 しばらく離れていて、戻ってきたら、やっぱり地元っていいなと思います。帰ってきたら、家族で近所の焼き肉屋さんに行くのが楽しみです。それから、お母さんが作るコロッケも! 市販のものは食べたいと思わないんですけど、お母さんのコロッケは大好きです。

あとはやっぱり、地元の方々が応援してくれていて「おめでとう」って声をかけてくれたり。みなさん、とても温かくて力をもらっています。相模原市の金メダル報告会では、市民やファンの皆さんが1000人くらい集まってくださいました。こんなにたくさん集まってくださると思わなかったので、びっくりしましたが、とてもうれしかったです。

—— パリへの出発前に、「金メダルを獲ったら、室内型のスケートボード場が欲しい」と相模原市長にお願いしていましたね。

 最近、夏の暑さが厳しいですし、室内型のスケートボード場があるといいなと思ってお願いしました。室内なら雨が降っても練習できるので、練習量も確保できますよね。みなさんが、スケートボードを始めるきっかけになってくれればうれしいです。

—— さっそく、相模原市が「夢COCOプロジェクト」チームを始動して取り組んでくれていますね。実現するといいですね。

目指すはオリンピック2連覇! 恋モデルのデッキも出したい

—— オリンピックを機に、吉沢さんをとりまく環境は大きく変わったと思うのですが、いかがですか。

 自分自身もそうですが、家族への影響も大きいですね。サポート中心の生活にシフトチェンジして、全面的にバックアップしてくれています。おかげでここまで来られたので、本当に感謝しています。

—— 将来的に、海外を拠点にすることは考えていますか?

 地元で続けられるのが一番いいんですが、レベルアップするためにアメリカとか行ってみたいという気持ちはあります。今どうこうというわけじゃなくて、いつかはという感じですけどね。

—— 「相模原をスケートボードの聖地に」という展望もあるようです。地元の練習環境がもっと良くなったらどうですか?

 もちろん、それができたら最高ですよね。地元でずっと滑っていられれば、それに越したことはないです。

——これからの目標を教えてください。

 やっぱり、オリンピック2連覇ですね。あとは、自分のモデルのデッキを出したいです。ほかにもいろいろあるんですけどね。

—— まだ15歳、いろんなことにチャレンジできそうですね。最後に、地元のみなさんにメッセージをお願いします!

 ずっと相模原で育って、お世話になってきたので、とにかく「ありがとうございます」というのは伝えたいです。2連覇目指して頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!

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『ACT sb store』

吉沢恋選手のコーチ、寺井裕次郎さんが代表のスケボーショップ。スケーター目線での商品提供・情報発信で、相模原から日本のスケートボードシーンを盛り上げる。初心者から参加可能なスクールも開催。12:00~20:00、不定休。☎042-812-0757

小山公園 ニュースポーツ広場

約3000平方mの広さを誇る、全国でも珍しいストリートスポーツに特化した施設。2大会連続で五輪に出場した白井空良(そら)選手もここで練習した。2024年11月5日から改修工事により休止。2026年3月中に再開予定。

取材・文=瀬戸口ゆうこ 撮影=千倉志野
『散歩の達人』2024年11月号より