三浦靖雄

1985年広島県生まれ。フリー素材サイト「いらすとや」好きが高じて、いらすとやの社会への普及を観測するために2018年から街なかのいらすとや使用例を収集・マッピング、そしてその分析を行う。現在は東京を中心に全国1500例以上の使用例を収集している。

「いらすとや」は社会のインフラ

マニアックな素材まで揃っている。
マニアックな素材まで揃っている。

「『エアガンで猿と戦う主婦』に『水を吐くフグ』。『いらすとや』は時事ネタへの反応速度がとにかく早く、もともと面白がって注目していました。

当初はネットの中だけで話題にされていたんですが、2015年頃から突如、街なかでもよく見かけるようになったんです。ポケモンGOが流行って街歩きブームが巻き起こった時期と重なって、街で使われている『いらすとや』をSNSに投稿する人まで現れるように。

今では、わざわざ投稿する人はいないほど、『いらすとや』はすっかり社会インフラ化。街なかで当たり前の存在になってしまいましたね」

「いらすとや」の頻出スポットは街の不動産屋

店の制服に合わせたオリジナル看板。
店の制服に合わせたオリジナル看板。

「いらすとや」は神出鬼没。使用例を見つける際には、知らない街に降り立って駅周辺からすべての道をしらみつぶしに歩くという、三浦さん。

特に頻出するスポットは「不動産屋」だという。

「使用例が現れる大きな理由は、『装飾』と『お願い』です。不動産屋は路面に向かって物件情報を掲示しています。

『いらすとや』で装飾することで、より楽しくにぎやかにしたいのでしょう。街に降り立って最速で『いらすとや』使用例を探したい場合は、不動産屋を巡るのがおすすめです」

活用例が最も多い、防犯カメラのイラスト。
活用例が最も多い、防犯カメラのイラスト。

ちなみに、「防犯カメラ」のイラストが、ダントツ1位で使用されているそう。

「『いらすとや』には2万5千点以上のイラストがあるので、同じ素材に出合うことはほとんどありません。

ただ、防犯カメラは毎回街を歩くたびに必ずと言っていいほど見つかるんです。防犯カメラがあることを伝えるのに、文字だけよりもイラストの方が効果が高そうですよね」

素材と作り手の創意工夫との掛け合わせ

街なかの「いらすとや」使用例の大きな見どころは、イラストを組み合わせて伝えたいことを表現する、ユーザー側の創意工夫だ。

防犯カメラのイラストで座り込みを抑止。
防犯カメラのイラストで座り込みを抑止。

「以前、防犯カメラのイラストに『座り込み禁止!』と赤字が添えられた張り紙を見たことがありました。

『いらすとや』には、座り込みしている人自体のイラストと、禁止マークのイラストがあるので、その2つを組み合わせるのが普通。

あえて防犯カメラのイラストを使うことで、防犯カメラがあることを暗に伝えながら抑止力を高めるという、クレバーな方法だなと感心しました。

こうした作り手側の工夫が見えてくるのが面白いですね」

驚く人の元の素材はなんと「ポルターガイスト現象」。
驚く人の元の素材はなんと「ポルターガイスト現象」。
実は3つの素材をうまく組み合わせている。
実は3つの素材をうまく組み合わせている。
キャンバス上の絵は「渦巻きになった足のイラスト」。
キャンバス上の絵は「渦巻きになった足のイラスト」。

マッピングする際は、サイト上の膨大なイラストの中から、どの素材が使われているか特定する三浦さん。ひねりが効いた作品を見た時は、思わず興奮するという。

「組み合わせの妙を探すのが楽しいんです。

例えば、自転車置き場で見かけた、いたずら防止の張り紙。なんと、キャンバス上の渦巻きは『渦巻きになった足のイラスト』でした。

こうやって、全然違うテーマの画像を組み合わせるというケースもあるんです。特定できるとうれしいですね(笑)」

シルエットで「いらすとや」だと特定。
シルエットで「いらすとや」だと特定。
店名である「ジャンヌ・ダルク」のイラストを看板に。
店名である「ジャンヌ・ダルク」のイラストを看板に。

三浦さんいわく、「『いらすとや』がある街は住みやすそうな街」だという。

「『いらすとや』がよく使用されるのは、店員さんが店内の装飾に一定の裁量を持っているお店。

つまり、元気な個人商店がたくさん息づいている街には自ずと『いらすとや』も多いんです。

今では駅を出た時の“街の顔”を見ただけで、『いらすとや』がありそうかどうか分かるようになりました」

いらすとやのお陰でカレー店だと分かる。
いらすとやのお陰でカレー店だと分かる。

人になにかを伝える際、文字だけではなくイラスト入りで親しみを持たせたいと、一生懸命「いらすとや」を駆使する。

「いらすとや」使用例を見ていると、その背後にいる遊び心あふれる人たちの姿が浮かび上がってくるようだ。

 

取材・構成=村田あやこ