秋に多い竜巻。いつもの散歩コースで発生する危険も

竜巻とは、積乱雲に伴って発生する激しい渦巻きのことです。竜巻といえばアメリカのように広大な土地で発生するイメージが強いかもしれませんが、日本でも平均して年に約25個発生しています。

季節に関係なく起こるものですが、統計的には7月から11月は一段と多く、夏に続いて秋は竜巻の発生しやすい季節といえます。

竜巻・ダウンバーストの月別発生確認数。1991~2024年(画像=気象庁)。
竜巻・ダウンバーストの月別発生確認数。1991~2024年(画像=気象庁)。
1999年9月に愛知県豊橋市で発生した竜巻(画像=気象庁)。
1999年9月に愛知県豊橋市で発生した竜巻(画像=気象庁)。

竜巻を見たことがあるという人はそれほど多くないかもしれませんが、過去には大きな被害が出た事例もあります。2013年9月2日には、埼玉県越谷市で竜巻が発生し、北東方向に進んで千葉県野田市まで達しました。この竜巻によって、70人以上の人が負傷し、200棟を超える建物が全壊または半壊しました。

2013年9月2日。埼玉県越谷市で竜巻が発生。秋雨前線に向かって湿った空気が流れ込んだ(画像=ウェザーマップ)。
2013年9月2日。埼玉県越谷市で竜巻が発生。秋雨前線に向かって湿った空気が流れ込んだ(画像=ウェザーマップ)。

日本では竜巻は沿岸部で多く発生していますが、関東では内陸部でも多く確認されています。標高差が少なく広い関東平野では、地表の起伏による抵抗や進行の妨げがないため、竜巻が発生しやすいのではないかと考えられます。越谷市で発生した竜巻が進んだのは、住宅地です。いつもの散歩コースであっても気象条件がそろえば、竜巻が発生することはあり得るのです。

竜巻などの突風の発生分布図。沿岸部での発生が多いが、関東は内陸でも発生している(画像=気象庁)。
竜巻などの突風の発生分布図。沿岸部での発生が多いが、関東は内陸でも発生している(画像=気象庁)。

竜巻はどんな時に発生する?

竜巻は台風や寒冷前線、低気圧に伴って発生しやすく、多くの場合、漏斗状の雲を伴っています。

特に強い竜巻は「スーパーセル」という巨大な積乱雲のもとで発生します。

スーパーセルは数時間にわたって発達することもある特殊な積乱雲です。通常の積乱雲の寿命は30分から1時間ほどですが、スーパーセルの寿命が長い理由は、下降気流と上昇気流が別々の位置に生じることにあります。

地上から湿った空気を持ち上げる上昇気流が、下降気流によって打ち消されることがないため、雲は長い時間存在することができるのです。

スーパーセルは内部で激しい上昇気流を持続させるため、氷の粒が成長して「雹(ひょう)」を降らせることもあります。巨大な積乱雲を見たら、竜巻はもちろん、雹や雷にも注意が必要です。

すっきりとした青空に、すがすがしい陽気。上着を持たず身軽にお散歩を楽しめる季節がやってきましたね。ところが、天気の急変が増えるのも、この季節の特徴です。突然の土砂降りの雨に、激しい雷、そして、初夏は「雹(ひょう)」にも注意が必要です。特にどんな気象条件の時に雹が降りやすいのか、ポイントをお伝えします。
発達した積乱雲に伴って発生する竜巻。漏斗状や柱状の雲を伴っている(画像=気象庁)。
発達した積乱雲に伴って発生する竜巻。漏斗状や柱状の雲を伴っている(画像=気象庁)。

竜巻とよく間違えられる現象に「つむじ風」がありますが、これは別の現象です。ニュースの映像などで、晴れた日の日中、運動会中の校庭で激しい渦を巻いてテントを吹き飛ばす様子を見たことがないでしょうか?

つむじ風は晴れた日に地表付近が日射によって暖められ、上昇気流ができることで起こります。雲を伴っていないため、竜巻とは別物なのです。

竜巻から身を守るには?

竜巻が発生するおそれがある時、各地の気象台からは雷注意報や「雷と突風に関する気象情報」が出されます。そして、今まさに竜巻が発生しそうだという気象状況になった場合には「竜巻注意情報」を発表し危険を知らせます。

竜巻注意情報が発表される時、該当する地域ではテレビ画面の速報テロップでも表示されます。この情報が出された時は、外出は禁物です。もちろん、情報が出ていない場合でも積乱雲が発達しやすい時は十分注意が必要ですよ。

もしも、竜巻を目撃した時にはすぐに頑丈な建物の中に移動してください。プレハブや物置、車庫は吹き飛ばされやすいため危険です。屋内に入ったら、窓やカーテンを閉め丈夫なテーブルの下に入るなどして、なるべく身を小さくして頭を守ってください。屋根や2階以上は吹き上げられやすいため、1階の窓のない部屋に移動することも覚えておいてください。

秋の始めはまだまだ大気の状態が不安定になりやすく、油断は禁物です。竜巻に関する知識を覚えておいて、安全にお散歩を楽しみましょう。

文=片山美紀 画像=photoAC、気象庁、ウェザーマップ