立川から日本酒の魅力を発信

立川駅の南口から9分ほど歩いた、人通りの落ち着いた立川通り沿いで2008年から営業する『居酒屋 青海』。黒塗りで木造りの外観は、通りがかるとつい足を止めてしまう趣がある。

大人数でも安心のお座敷席。
大人数でも安心のお座敷席。

カラカラと扉を開けて店内に入れば、全国各地の酒蔵の前掛けが壁一面に貼られていて、一目で「日本酒が揃っている店」なのだとわかる。さらに、店のそこかしこに貼られた手書きのメニューからも味わいを感じる。

手書きの日本酒メニューはパッと見てわかりやすいよう、左側ほど辛口になっている。
手書きの日本酒メニューはパッと見てわかりやすいよう、左側ほど辛口になっている。

そんな雰囲気からもわかる通り、『居酒屋 青海』は日本酒をはじめとしたお酒と、お酒に合う和の料理が自慢だ。日本酒は常に40~50種類が揃い、まさに日本酒好きの楽園といえる。

「多摩地域には酒蔵が集中しているんですよ」と話す店主の木下さん。
「多摩地域には酒蔵が集中しているんですよ」と話す店主の木下さん。

店主の木下裕道さんは、学生の頃に始めた飲食店のアルバイトがきっかけで飲食の道へ。料理学校を卒業後、都内の多彩なジャンルの飲食店で腕を磨き『居酒屋 青海』をオープンした。

「当時の立川には日本酒を幅広く揃えている店が限られていました。なのでそういう店があっても面白いんじゃないかと思い、日本酒をメインに、和食や創作料理を楽しめる店にしました」

現在は、店舗のみならずキッチンカーやイベントにも出店し、日本酒の魅力をたくさんの人に発信している。

日本酒セルフ付き飲み放題が人気!

「日本酒セルフ付き飲み放題」は、2時間飲み放題(30分前LO)2750円。延長は30分ごとに+500円。
「日本酒セルフ付き飲み放題」は、2時間飲み放題(30分前LO)2750円。延長は30分ごとに+500円。

日本酒を注文すると、おちょこや徳利など決まった量で提供されるのが一般的だ。

これまで同店でも一般的な日本酒付きの飲み放題プランは提供していたが、日本酒をもっと気軽に楽しんでもらいたいという思いから、日本酒を自分の好きな量だけ楽しめる「日本酒セルフ付き飲み放題」をスタートした。

冷蔵庫にある日本酒25銘柄から自由に選んで、好みの量を自分で専用グラスに注いで楽しめる。中には、セルフ限定の銘柄も用意されている。気になる銘柄がたくさんあっても、少量ずついろいろな種類を楽しめるところにひかれる酒好きは多いだろう。初めは期間限定メニューとして始めたが思いのほか大好評で、引き続き継続することに。現在では3種類ある同店の飲み放題プランの中で一番の人気を誇るそうだ。

飲み放題には生ビールや焼酎、サワーなど、メニュー表にあるほぼすべてのドリンクが含まれているので(セルフで飲めるのは日本酒のみ)、途中でほかのドリンクに切り替えることも可能だ。普段はあまり日本酒を飲まないけど、気になる日本酒を少しだけ飲んでみたいという人も気軽に試してみよう!

店に並ぶ日本酒は、毎週銘柄が入れ替わる。基本的に、木下さんや日本酒に詳しいスタッフが各地の酒販店に足を運んで選んでいるのだとか。

「人それぞれ好みがあると思うので、味わいのバランスが偏らないように選んでいます。辛口、甘口、酸味があるもの、旨味が強いもの、ちょっとクセがあるものなど、いろんな味の傾向があるので、好みに合わせて楽しんでいただけたら」と木下さん。

味わいの幅が広いため、日本酒ビギナーでもきっと自分好みの1本が見つかるだろう。

その時期ならではの、おすすめの銘柄にも注目したい。取材時には、能登半島地震で被災した石川県の『宗玄酒造』、火災で酒蔵が全焼した愛知県『水谷酒造』の日本酒が酒蔵応援としてピックアップされていた。酒蔵愛が感じられるセレクトだ。

コアなファンが多い鯨料理など、四季を感じる一品料理

無花果レアチーズぎゅうひ包み1045円。
無花果レアチーズぎゅうひ包み1045円。

美酒に合わせたいのが、食材で四季を感じる一品料理だ。

イチジクの季節になると登場する無花果レアチーズぎゅうひ包みは、やわらかな求肥の中に、たっぷりのクリームチーズと、カットされた大きな無花果が贅沢に包まれている。

みずみずしいイチジクの甘さとまろやかなチーズ、ふわふわの求肥の食感がマッチし、一口食べるごとに幸せが口の中に広がる。食後のデザートにふさわしい一皿だ。

するめ烏賊の肝 味噌漬けルイベ660円。
するめ烏賊の肝 味噌漬けルイベ660円。

一品料理には、酒好きの心をつかむ珍味系も揃っている。イカが入ったときにだけ味わえるのが、するめ烏賊の肝 味噌漬けルイベ。するめイカの肝を西京味噌でつけて凍らせた、北海道の郷土料理「ルイベ」をアレンジした一品だ。

食べ方は、冷たいイカを舌の上で溶かしながら、じっくりとイカの旨味を堪能する。ひんやりした感覚が心地よく、お酒の旨味を底上げしてくれるようだ。夏にはもちろんのこと、冬には鍋などの温かいものを食べたあとの締めにも最適。

鯨をハツ、頭肉、鹿の子など多種多様な部位で楽しめる鯨刺身盛り1980円(写真提供=居酒屋 青海)。価格は日により変更あり。
鯨をハツ、頭肉、鹿の子など多種多様な部位で楽しめる鯨刺身盛り1980円(写真提供=居酒屋 青海)。価格は日により変更あり。

そしてこの店でもう一つ力をいれているのが、鯨料理だ。ちょっぴりコアなメニューだが、ファンが多く根強い人気がある。

「鯨はほぼ全ての部位が食べられるほどいろんな部位があるんです。調理法もさまざまです。鯨の脂は胃に負担が少なく、栄養が豊富でアスリートの方にも人気なんですよ」と木下さんも激推し!

日本酒ラバーも初心者も、『居酒屋 青海』の味わい深い料理とともに美酒で乾杯しよう。

冬の定番メニュー、鴨鍋1980円(前日までに要予約)はみんなでワイワイとつつきたい(写真提供=居酒屋 青海)。
冬の定番メニュー、鴨鍋1980円(前日までに要予約)はみんなでワイワイとつつきたい(写真提供=居酒屋 青海)。
住所:東京都立川市錦町1-10-23 光洋ビル1F/営業時間:11:30~13:30LO・17:00~22:00LO/定休日:無/アクセス:JR立川駅から徒歩9分

取材・文・撮影=稲垣恵美