和食と自然派ワインが自慢の晩酌処
立川駅の南口から歩いて5分の場所に現れる『晩酌処はるさんさん』は、同じく立川で営業する『ワインとクラフトビール はるばる』の姉妹店だ。
インダストリアルな店構えで、中に入るまでどんな店なのか想像がつかない。店内の様子はドアのわずかな窓から見ることしかできないが、この謎めいた雰囲気にかえってひきつけられてしまう。
おそるおそるドアを開けると……スタイリッシュながら木の温もりを感じる居心地のよい空間が広がっていてホッとする。キッチンを囲むカウンター席が中心で、気心知れた仲間や、たまたま隣になった人たちと語らいながらゆっくりお酒と食事を楽しめる。
店主の岩崎暁(いわさきさとる)さんは「実は同じ場所で2015年から『HARU-JIRO(はるじろう)』という店を営業していたんですが、もう少し幅広いお客さんに来てもらえる店にしようと、店名を変えて再スタートしました。提供するものは変わりましたが、変わらず目指しているのは“自分たちが近所にあったら行きたい店”。おかげさまでそのまま通い続けてくださる常連さんや、以前より若い世代のお客さんが増えました。『HARU-JIRO』の方も、別の場所で移転オープンする予定です」と話してくれた。
岩崎さんが営む店に共通しているのが、ソムリエが厳選した豊富なワインを提供すること。『晩酌処はるさんさん』でも、テーブル席の横にあるワインセラーにボトルワインがびっしりと並べられている。
「創業当初から一緒に店を運営しているパートナーの子がワイン好きで、あるときからナチュラルワインにどハマりしまして(笑)。いつの間にかここまで種類が増えていました」と岩崎さんは笑う。
ワインは店に置いてあるもの以外にも、別の保管場所でまだまだスタンバイしているというから驚いてしまう。
グラスワインは赤、白、オレンジ、スパークリングなど常時8~10種類ほどが揃う。選ぶのに迷ったらテイスティングできるので、好みドンピシャのワインを見つけやすい。ボトルワインは、ワインセラーから説明書きを読んで自分で選べるのが楽しい。
ワイン好きも納得する豊富な品揃えだが、こだわりは種類の多さだけではない。自然派ワインは環境によって味わいが変化しやすいため、常においしい状態を保てるよう管理を徹底しているそう。グラスで提供するワインは必ず味見を毎日行うほか、ベストな状態で飲んでもらえるように、仕入れてからしばらくワインを寝かせることも多々あるとか。少ない本数で仕入れるため入れ替えの頻度も高い。いつ訪れても違ったワインに出合え、さらに一番おいしい状態で味わえるのが魅力だ。
ワインだけではなく、純米酒を中心とした日本酒やクラフトジン、日本酒や焼酎をおでんの出汁で割る出汁割りなど、ワイン以外の個性豊かなお酒にも注目したい。
季節ごとの変わり種を楽しむ特製おでん
お酒と共に味わっておきたいのが特製おでんだ。定番の具材をはじめ、玉ねぎやワンタン、明石焼き、トウモロコシなどの季節野菜といった、おでんには珍しい変わり種の具材がユニーク。
瀬戸内地方のご当地おでんをイメージし、出汁はいりこと昆布を使った優しい味わい。手作りの八丁味噌だれやからし酢味噌をつければ、味の広がりも楽しめる。
数ある具材の中でも、岩崎さんが「ぜひ食べてほしい」と太鼓判を押すのが牛タンだ。大ぶりの牛タンは長時間じっくりと煮込んでいるため非常に柔らかく、肉の旨味が優しい出汁に溶け込んでいる。わさびでアクセントを効かせるのもおすすめ。盛り合わせにも、必ず牛タンを入れるほどイチオシの一品だ。
ワインと味わう個性派おばんざい
そしてなんといっても、この店の真骨頂はおばんざいだろう。常時10種類の個性的なラインアップで、日々内容も変わり飽きがこない。今回は、中でも定番といえる人気の3品をチョイスした。
おばんざいと合わせて「飲みやすいワインを」とリクエスト。おすすめしてくれたのが、この日提供していたブルゴーニュ・ルージュ2002(ボトル9130円)という赤ワインだ。フルーティーで飲みやすく、まろやかな口当たりで、まさにリクエスト通りの味わい!
1品目は、思わずクスッと笑ってしまうネーミングのティラみそだ。ティラミスそっくりの見た目をしたティラみその正体は、クリームチーズを使ったムースに八丁味噌のパウダーをまぶしたもので、和と洋の要素を絶妙に掛け合わせている。
一緒に添えられたパイ生地のお菓子にのせて食べると、味噌とチーズの豊かな香りが口いっぱいに広がる。和なテイストなので、日本酒と合わせて食べる人も多いのだとか。もちろん洋の要素もあるのでワインにも相性ぴったり!
続いて2品目は、またもや個性的なネーミングのコロッケっぽいポテサラ。名前の通り、ポテトサラダの中身にパン粉をかぶせているため、一緒に食べれば“コロッケっぽい”味わいに!
ポテトのほくほく感と、ところどころに入った大きめの玉ねぎが食感のアクセントになっている。
3品目の葱だく!とろレバーは、山梨県の銘柄鶏「健味どり」のレバーを使用。すんなりと口の中でとろけ、レバーのクリーミーなコクを存分に堪能できる。それでいてクセが強すぎず、たっぷりとかけられたネギとの組み合わせもいい。
おばんざいは「おまかせ」で盛り合わせにすることも可能。対応できるときは人数に合わせて量を調整してくれるので、気になるおばんざいを心ゆくまで味わってみよう。
最初に注文する一品で迷ったら、間違いないのが晩酌処の煮込み780円。肉をほろほろになるまでごぼう、こんにゃくと一緒に八丁味噌仕立ての煮汁でコトコトじっくり煮込んだ、お酒が進む一皿だ。
『晩酌処はるさんさん』で和食と自然派ワインの組み合わせを自在に楽しめたら、ツウな大人の仲間入りができるかも?
取材・文・撮影=稲垣恵美