有楽町にタイムスリップしてきたような古民家居酒屋

お昼時に有楽町駅から新橋方面へJR線の高架沿いに歩いていると、周りの街並みとはちょっと違う、渋いたたずまいのお店を発見。ちょうどおなかもすいていたので、思い切って入店してみることに。

文化財的な風格さえ感じる外観。
文化財的な風格さえ感じる外観。
初めてのお客さんは、この扉を開くのにちょっと勇気が必要かもしれない。
初めてのお客さんは、この扉を開くのにちょっと勇気が必要かもしれない。

店に入ると、昼間なのに店内は暗めで、建物ごと過去からタイムスリップしてきたようなレトロ感あふれる空間が広がっている。店の左側にはカウンター、右側にはテーブル席が並び、奥に厨房がある。

もとは炉端焼きカウンターだったカウンター席。
もとは炉端焼きカウンターだったカウンター席。
囲炉裏付きのテーブル席。現在は囲炉裏としては使われていない。
囲炉裏付きのテーブル席。現在は囲炉裏としては使われていない。

「創業が大正初期で1世紀以上の歴史があるんですよ」と店長のモウさん。

いつもニコニコ温厚なモウさん。先代オーナーから受け継いだ技で絶品料理を提供する。
いつもニコニコ温厚なモウさん。先代オーナーから受け継いだ技で絶品料理を提供する。

モウさんは1992年にミャンマーから来日。その後、居酒屋などの飲食店で経験を積み、2000年から『爐端本店』で働く。2023年に店長に就任し、現在は夫婦でお店を切り盛りしている。

店内を見回すと、歴史を感じさせる調度品や民芸品、絵画が並ぶ。本当にここは有楽町? といった不思議な空間だ。

食器類も歴史を感じるものが多い。
食器類も歴史を感じるものが多い。

ランチタイムのお客さんは近隣で働く人が中心で、年齢層は幅広い。夜の時間帯は年配の男性客が多いが、お店の雰囲気が気に入った若い人や、昔ながらの日本的な風情を感じる建物を目当てにした海外からのお客さんも少なくない。

店内に飾ってある絵画や民芸品は先代オーナーの趣味だそう。
店内に飾ってある絵画や民芸品は先代オーナーの趣味だそう。

がっつり食べる!ボリューム満点の肉玉めし

今日のランチは何にしようかと迷っていると、モウさんが「イチ押し」とすすめてくれたのは肉玉めし950円。若い男性客を中心に大人気だそう。がっつり系を求める人が大喜びしそうなネーミングだ。空腹状態の筆者はさっそく肉玉めしを注文!

肉玉の正体は豚バラの角煮とゆで玉子だ。うーん、うまそう!
肉玉の正体は豚バラの角煮とゆで玉子だ。うーん、うまそう!

ほどなく、テーブルに肉玉めしが出される。豚バラ肉の角煮が4つ、ゆで玉子を囲むようにごろりとご飯の上にのっている。なるほど、ワイルドな肉とゆで玉子を組み合わせたビジュアルを見ると、おなかをすかせた若い男性客に人気という理由がよくわかる。

それでは、いただきます!

肉玉めしにはミニサラダと味噌汁がつく。
肉玉めしにはミニサラダと味噌汁がつく。
年季がはいった木製の丼とスプーンも味わい深い。
年季がはいった木製の丼とスプーンも味わい深い。

まず、豚の角煮をひと口いただく。口の中に入れた途端、さっと広がるスパイスの香り。柔らかすぎない、ほどよい煮込み具合。「豚バラ肉を醤油と紹興酒で煮込んで、八角で香りをつけています」とモウさん。しっかりとした味付けなのでご飯がすすむ。

ゆで玉子がまるまる一個のっている。
ゆで玉子がまるまる一個のっている。

ゆで玉子は固ゆででほどよく味が染み込んでいる。角煮、ゆで玉子、煮汁とご飯を混ぜながら食べる。この組み合わせは鉄板だ。あっというまに完食。

「夜のメニューでは単品で豚の角煮を出しているんですが、こちらも大人気ですよ」とモウさんがニコリ。たしかに酒の肴にもぴったりだ。

充実したランチメニュー。豚バラ生姜焼も人気だそう。
充実したランチメニュー。豚バラ生姜焼も人気だそう。

おすすめ創作料理も充実!居酒屋タイムも大満足

コロナ禍以前、夜の時間帯はカウンター席の前に大皿に盛り付けた料理が並んでいた。お客さんが現物を見て注文すると、お皿にとって出してくれる。昔懐かしいスタイルは若いお客さんにも好評だった。

大皿料理を提供していた頃の写真。古き良き時代の居酒屋だ。
大皿料理を提供していた頃の写真。古き良き時代の居酒屋だ。
カウンター席に今も並ぶ大皿。お皿そのものにも歴史を感じる。
カウンター席に今も並ぶ大皿。お皿そのものにも歴史を感じる。

大皿料理はコロナ禍以降休止中だが、代わりに力を入れているのが創作料理だ。鴨とオレンジ煮1100円や豚バラ肉とシシトウのトマト煮980円など、炉端焼きにとらわれないメニューも人気だそう。モウさんのおすすめはぶり大根1100円とホタテクリーミー1100円。大皿時代に出していた料理を単品メニューで味わえる。

モウさんおすすめの創作料理。
モウさんおすすめの創作料理。

隠れ家的な空間で、自慢の料理と酒をいただきながら有楽町の夜のひと時を過ごすことができる古民家居酒屋『爐端本店』。こんな都会の真ん中にありながら昼は1000円以下というリーズナブルな価格で充実したランチがいただけるのはありがたい。昼も夜も通いたくなる魅力的なお店を見つけてしまった。

住所:東京都千代田区有楽町1-3-8/営業時間:11:30~14:30・17:00~23:00LO(土・日・祝は17:00~22:30LO)/定休日:不定/アクセス:地下鉄日比谷線日比谷駅から徒歩2分、JR・地下鉄有楽町駅から徒歩3分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎