将棋の始まり
将棋の起源は古く、天竺すなわち古代インドの遊戯である「チャトランガ」なるものが基となっていると考えられておる。
この遊戯が東洋に伝わったものが将棋に、西洋に伝わったものがチェスになったとも言われておって、似た遊戯である将棋とチェスは元を辿れば同じものから生まれておると考えれば納得であろう!
して、将棋がチェスと大きく違うのは取った相手の駒を自らの駒にできることじゃな。
これこそが将棋をより複雑にし、面白くしておる要素である!
これは日本に将棋、あるいはそれの元となった遊戯が伝わってから遊び方の変遷を経て、日ノ本独自の遊戯として円熟していったのじゃ。
将棋が日本に伝わる経路や経緯、時代は明瞭ではない。
じゃが、今から千年近く前である天喜6年(1058)のものとされる将棋の駒が見つかっておるで、少なくともそれ以前には伝わっておることがわかっておる。
実に歴史の深い遊戯とわかるわな。
じゃが、この頃の将棋は、皆が思い浮かべるものとは版の目の数も駒の種類も異なっておった。
日ノ本に将棋が伝わってから長い年月をかけて遊び方が変わっていって、いくつかの種類があったのじゃ!
多いもので言えば、盤面が15×15で駒が29種類で計130枚もあったのじゃ。
今の将棋が9×9で8種類の40枚だでいかに多いかがわかるであろう!
あまりに複雑になってきたことで遊び方を改定していって今の形に落ち着いたと言うわけじゃな!
相手の駒を使えるようになったのも、駒の数が減ったことで決着がつきにくくなったためとも言われておるようじゃ。
碁の始まり
囲碁も将棋と同じく歴史が実に長い。
そして将棋とは異なり、囲碁は中国にて起こり洗練された後に日ノ本に入ってきた為に早い段階で今に近い形となっておるのじゃ!
当時の日ノ本では大陸文化が時代の最先端だったで、公家や僧を中心に人気となり、勉学としても役立つ囲碁は日ノ本に広く広まったというわけじゃな。
囲碁は『源氏物語』や『枕草子』においても触れられておって、宮中でもなじみの文化であったことが分かるじゃろう。
『徳川美術館』に保存されてある『源氏物語絵巻』にもその様子は描かれておるぞ!
普段は展示されておらぬが特別展で特別に公開されることもある。囲碁が描かれる『源氏物語』の一つ「竹河(二)」だが、2024年は11月16日〜11月24まで公開予定だで気になる者は調べてみるがよい!
因みに、現世の皆々がよく使う言葉に碁を起源とするものがいくつもある。
「駄目」「一目おく」「八百長」「布石」などがその代表じゃな。
それほどに親しまれていた遊びということが言えよう。
戦国武将の娯楽へ
囲碁も将棋もかつては公家の文化であった。
それが我ら武士にも広まったのがやはり室町時代である。
室町時代は日ノ本が混乱しておった故に、公家と武家との距離が近づいた時期でもあって多くの公家文化が武士に広まった。
戦国時代においては、将棋も囲碁もどちらも重要な教養として考えられておって、信長様も秀吉も徳川殿もどちらも愛好されておった。
信長様は桂馬使いの達人に宗桂という名前を与えておられるし、秀吉は将棋の王将を大将に変える打診を朝廷に打診する手紙が残っておったり、真偽は定かではないが秀吉が元々玉将二枚だった片方を王将に書き換えさせ今に続くという逸話も残っておる。
徳川殿も天下をとった折に碁と将棋の名人を取り立てて手厚く保護したことで今につながる囲碁や将棋の文化が育まれたそうじゃ。
特に、戦国武将には碁が好まれておって、陣取り合戦である碁は戦の戦術眼を養い、戦の鍛錬としても活用されておったのじゃ。
武田信玄殿も川中島の戦いで武田四天王が一人、春日虎綱殿と碁を打った話が伝わっておったり、囲碁の実力者にもかかわらず捨て石を好まず、理由を問われると「勝利のためとはいえ、家臣を犠牲にするわけにはいかない」と言ったという逸話が残っておる。
これも誠の話かは分からぬが、なかなかおもしろき話であろう!
終いに
此度の戦国がたりはいかがであったか!!
我らの時代にも通じ実に歴史の深い碁と将棋であるが、現世になってなお戦術が進化し続けておるのが面白いところじゃ。
先にも話したが、今再び人気が盛り上がっておるところだで、始めてみたい者も棋士の方々を応援したい者も触れるには実に良い機会であろう。
最後に蛇足となるのじゃが日ノ本の宝物を数多く所蔵する奈良県の正倉院には「木画紫檀棊局」という碁盤がある。
これは今から一千年以上前に日本に伝わったもので、水晶や象牙をあしらった実に美しいものじゃ。
無論、普段は見ること叶わぬが写絵は見ること叶うが故に一度皆にも調べてみてほしい。
そして、我らがいる名古屋城にも碁に関する重要文化財がある!
本丸御殿の上洛殿にある「琴棋書画」とよばれし襖絵で、復元されたものを本丸御殿にて見ることが叶うで皆も足を運んで欲しいのう。
それでは此度の戦国語りはこの辺りで終いといたそうかのう!
皆もこれから夏本番、涼しい室内でも楽しめる遊戯として碁や将棋に挑戦してみてちょうよ。
それではまた会おう。さらばじゃ!!
文・写真=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)