梅雨の花といえばアジサイ~鎌倉アジサイ散歩

梅雨の花といえばまず思い浮かぶのはアジサイ。そしてアジサイといえば鎌倉です。アジサイ寺の別名を持つ「明月院」、静かなる北鎌倉「東慶寺」、原種のアジサイが多くみられる「光則寺」、遅咲きの品種が揃う「妙本寺」と選択肢も豊富。道を歩けば名もなきアジサイが咲き競っているのも味わいがあります。鎌倉に観光客が最も来るのは梅雨と言われますが、たとえ混んでいてもこの時季にこの街を歩く価値はあるでしょう。

東慶寺。
東慶寺。
鎌倉に夏の到来を告げる花といえばアジサイ。超人気の明月院には開門前から列ができるというが、探してみればあちこちにアジサイの名所がある。こうしてみると、鎌倉って「アジサイの町」なんだと改めて思う。まだ間に合うアジサイ散歩。新旧、大小、絶景、美景……。さまざまなアジサイの名所を案内しよう。

花菖蒲の名所へ~明治神宮御苑

花菖蒲も忘れてはいけません。東京に花菖蒲の名所は多く、葛飾区の堀切菖蒲園、水元公園、足立区のしょうぶ沼公園といったところが思い浮かびますが、明治神宮御苑の菖蒲田(しょうぶだ)も見事。他と比べて開花時期が遅いのが特徴で毎年6月中旬~7月初旬が見頃です。もし菖蒲が咲いてなかったとしても大丈夫、1年中楽しめる素晴らしい日本庭園が待っています。

東京都心、原宿駅からすぐという立地に鬱蒼(うっそう)とした森がある。誰しもその名は知っているが、そもそもどんな成り立ちなのか。明治神宮には、ひとつの時代そのものの歴史が刻まれている。広大な境内を散策するための見どころを紹介しよう。
渋谷生まれ渋谷育ち、渋谷在住。毎日のように渋谷の街を歩き、Twitterで渋谷の魅力を発信する「渋谷散歩の達人」井上順が、お気に入りスポットをご案内!今回訪れたのは、にぎやかな渋谷にありながら広大な深い森に包まれた『明治神宮』だ。文=井上順

上から濡れた街を見る~サンシャイン60 てんぼうパーク、東京タワー、都庁展望室

展望台から雨に濡れた都会を眺めるのも雨の日の楽しみ。都庁展望室や東京タワーの下のほうの展望台、サンシャイン60てんぼうパークぐらいから見るのがおすすめです。都庁からは西新宿の高層ビルと新宿御苑の緑、東京タワーからは増上寺や東京湾、レインボーブリッジ、サンシャイン60からは護国寺や東京カテドラル聖マリア大聖堂・カトリック関口教会、椿山荘などが、それぞれ雨に濡れ艶やかな姿を見せてくれます。もちろん夜景もおすすめ。

住所:東京都新宿区西新宿2-8-1/営業時間:北展望室9:30~17:30、南展望室9:30〜22:30/定休日:南展望室は第1・3火、北展望室は第2・4火(祝の場合は翌)/アクセス:地下鉄大江戸線都庁前駅からすぐ
住所:豊島区東池袋3-1 サンシャインシティ サンシャイン60ビル60F/営業時間:11:00~21:00(最終入場20:00)※時期により営業時間の変更あり/定休日:無休(施設に準じる)/アクセス:JR・私鉄・地下鉄池袋駅から徒歩8分

地下街散歩~東銀座⇒東京駅⇒大手町

雨の日でも長距離を歩きたいというときにどうするか? ジムでトレッドミルもいいと思いますが、地下街散歩もおすすめです。たとえば東銀座⇒日比谷⇒丸の内⇒八重洲⇒大手町というルートはどうでしょうか。本気で1日歩けます。銀座4丁目で買い物したり、「日比谷シャンテ」で映画を見たり、『相田みつを美術館』で言葉に励まされたり、ヤエチカで南インドカレーやコーヒーの香りに癒やされたり、天然温泉で疲れをとったりと、オプションも豊富。東京ならでは、雨の日ならではのツウな散歩といえるでしょう。

ヤエチカ(八重洲地下街)。
ヤエチカ(八重洲地下街)。

新緑のトンネル散歩~神宮外苑のイチョウ並木

青山通りから絵画館まで続く146本のイチョウ並木。都心でこれだけの長さの並木のトンネルはやはり貴重です。秋の紅葉が有名ですが、新緑の時季も本当に美しい。雨上がりの時間帯など、ため息が出るほどです。2024年の夏は都知事選もあり、何かと話題にあがるエリア、この機会に散歩してその価値を再確認してみるのも一興でしょう。

映画『ブレードランナー』の世界に浸る~北千住

1982年のSF映画『ブレードランナー』といえば、今だにコアなファンの多いカルト映画。冒頭のうどん屋2玉のシーンや、芸者さんが舞うネオン広告、レプリカントとデッカードの戦いなど、印象的なシーンでいつも酸性雨が降りしきっていました。リドリー・スコット監督は歌舞伎町をイメージしたといわれていますので、もちろん歌舞伎町もいいのですが、散歩の達人がさらに映画のイメージにぴったりとおすすめするのが北千住駅西口の飲み屋横丁(通称ノミヨコ)です。メイン通り(写真)もさることながら、ここから延びる小路が、いちいちディープな匂いを醸していてしびれます。ほらその路地の奥でルトガー・ハウアーが独り言を吐いている……。

雨の日は書を読みに出かけよう~fuzkue、本の森ちゅうおう

もしかしたら雨の日こそ読書に最適かもしれません。ということで読書スポットを2つ紹介。1つは読書することに特化したカフェ『fuzkue(フヅクエ)』。会話はもちろん勉強もPC作業もNGという徹底ぶり。でも読書には理想的環境です。初台、下北沢、西荻窪(現在休業中)と3軒がありますが、それぞれ内装が違うのもうれしいところ。

もう1つは2022年12月に中央区京橋図書館がリニューアルしてできた『本の森ちゅうおう』。全館ガラス張りの壁で囲まれたモダンなデザインが特徴的。各フロアにテラス席が設けられ、雨の日でも歩きながらいろいろなところで気ままに読書を楽しめます。

『fuzkue初台』。
『fuzkue初台』。
『本の森ちゅうおう』。
『本の森ちゅうおう』。

鎌倉の寺で苔を愛でる

実は苔の美しい寺が多いことでも有名な鎌倉。アジサイほどの華やかさはありませんが、雨に濡れた風情は苔マニア大喜びの絶景で、杉本寺、妙法寺の苔むした石段は特に有名。あまり知られていませんが、円覚寺や妙本寺でも美しい苔が堪能できます。報国寺の庭の苔も見事。ぜひ竹の庭と一緒に堪能してください。

円覚寺。
円覚寺。
鎌倉における寺巡りの醍醐味はさまざまですが、今回推奨したいのがこの2つのポイント。お堂に漂うお香の香りと苔生(む)した境内です。これらをじっくり味わえる4軒の寺をピックアップしました。

石を愛でる散歩~清澄庭園、神楽坂の石畳ほか

清澄庭園は全国の名石が配されている日本庭園ですが、石は雨に濡れると色濃く輝き、なお一層楽しめることをご存じでしょうか。伊豆磯石、摂津御影石、佐渡赤玉石、伊豆青石がいくつも並んだ飛び石などなど、その真価が発揮されるのは雨の日なのです。
神楽坂の石畳(特に兵庫横丁)も雨の日は美しく輝いておすすめ。ただし滑りやすいので、どうぞご注意ください。

雨上がりは「逆さ東京駅」を見に

2017年に東京駅駅前広場が完成して以来、雨上がりに現れる「逆さ東京駅」が人気を呼んでいます。広場に敷き詰めてあるのは御影石。これが雨水をたたえると鏡のように赤レンガの駅舎を映し出し、文字通りの「映えスポット」が出現します。駅前広場周辺の地下街や丸ビル、新丸ビル、KITTEと併せて、雨に濡れずに楽しんでいきましょう。写真は「東京大回廊」というフォトコンテストの2019年入賞作。駅舎そのものももちろんきれいですが、こんなふうに歩く人のシルエットが入ると、また違った味わいがありますね。

写真提供/一般社団法人千代田区観光協会 東京大回廊写真コンテスト入選作品「Tokyo reflection」 鈴木 教大
写真提供/一般社団法人千代田区観光協会 東京大回廊写真コンテスト入選作品「Tokyo reflection」 鈴木 教大

構成・文・撮影=武田憲人(散歩の達人MOOK編集長)