サラダという名のワンプレートオードブル
『ビストロユウ』のランチは全7種類。メインディッシュにプラスしてライスかパンを選べ、さらにスープとソフトドリンクがついて1200円。
この日は一番人気のメニュー、BistroUのサラダランチをいただいた。サラダという名前こそついているが、目の前にあるのはボリュームたっぷりのオードブルの盛り合わせのようで、もはや野菜の姿が見えないほどだ。
「野菜が食べたいという方も多いので、たっぷりの野菜と一緒に他のメニューも味わっていただけるように作りました。かなり食べ応えがあるんですよ」
この日は、ローストビーフや生ハム、ポテトサラダに鶏肉のハム、ローストポークに具沢山のオムレツなどが、自家製ドレッシングのかかった新鮮な生野菜の上にこれでもかとのせられていた。
「うちの料理はフレンチの技法を使っているので、どの料理も一手間かかっています。例えば、ランチメニューの豚オススメ部位のグリルは、ただのステーキではなく、油の中で一度煮るコンフィという方法でお肉を柔らかくしてから焼いています。BistroUのサラダランチも、じっくり低温調理した鶏肉をのせたり。すべてのメニューをこだわって作っています」
ボリュームたっぷりのおいしい食事を
それにしてもランチメニューで、これほど手の込んだメニューをこの品数、このボリュームで提供していることに驚く。
「ビストロって、日常生活の中で気軽に利用できる大衆食堂的という意味があるんです。この地域は会社や学校も多いので、ランチはボリューミーでそれでもおいしい料理をコンセプトにやらせていただいています」
実は『ビストロユウ』は開店当時、広告宣伝費をかけずにスタートした。
「宣伝にかけるお金があったら、お客さんにおいしいものを食べていただきたいと思っていました。その分の予算をランチの原価にかけて、気に入ったらディナーにも来てくださいという気持ちです」
ランチメニューの抜群のコスパの良さは、そんな思いから生まれている。すでに人気店となった今でも、「リーズナブルな価格で最高の味を楽しんでもらいたい」という思いは変わらない。
ディナーでは、ソムリエの資格をもつ川邊さんが世界中から集めた50種類以上のワインとビールと共に、ビストロフレンチが味わえる。さまざまな種類のワインをグラスで楽しめるのも魅力的だ。
一番人気は、2〜4名分で食べられる豚肩ロースのコンフィ2400円。5〜6名分で注文するとエアーズロックのような圧巻のボリュームで提供されるので、機会があればぜひお試しいただきたい。
迷った時には、まずは前菜お任せ3種盛り合わせ1750円がおすすめだ。これさえあればワインのおつまみには困らない。常に新しい料理を追求しているので、日替わりや週替わりの黒板メニューにも注目だ。
「お客様が帰ってこられる場所に」
木を基調にした雰囲気がおしゃれな店内は、グループで楽しめるテーブル席やゆったりとくつろげるソファー席の他、一人でも気軽に入れるよう、カウンター席も用意されている。
「地域密着で、愛され続けるお店でいたいという思いがずっとあります。味はもちろん、人との出会いも飲食店の大切な部分だと思うんです。働くスタッフが変わっても、必ずお客様のことを知っているスタッフは残っていますし、来店していただければ会ってお話もできる。お客様がホッとして過ごしていただける時間をご提供できる、それを大切にしてきたいですね」
おいしい食事とホッと落ち着く空間、そしてなによりあたたかい笑顔、帰れる場所があれば忙しい日常も頑張れるものだ。『ビストロユウ』は地元の人たちにとって、これからもきっと、そんな大切な場所であり続けるのだろう。
取材・文・撮影=村田幸音