フレンチシェフが手掛ける路地裏のビストロ
渋谷駅から徒歩8分、センター街の喧騒を抜け、オルガン坂から無国籍通りを進んだ路地の奥に『Bistro Rojiura』がある。店の近くまで来ても迷ってしまいそう。やっとたどり着くと、店前はとても静かだ。
本格フレンチのビストロだが、カジュアルな雰囲気の入りやすい店構え。大きなガラス窓から日差しが降り注ぐ店内は、木のぬくもりを感じるインテリアが並び、席についたとたんほっと一息できる居心地のよさ。
2011年に開業した『Bistro Rojiura』は、世界で最も権威のあるグルメガイドに6年連続で掲載されてきた実力店だ。オーナーは白金や西新宿のフレンチの名店で修業を積んだ原太一さん。ほかにも代々木上原『PATH』、白金台『LIKE』など行列の絶えない人気店を手掛けている。
外はカリッ、中はふわっ。キャラメリゼ仕上げのフレンチトースト
モーニングは、2014年ころから、海外の朝ご飯ブームにヒントを得て始まったそう。自家製にこだわったモーニングメニューの中からイチオシの一品を、原さんの古くからの友人で、オープン当初からこの店を支えてきた諸藤悠里さんが教えてくれた。
諸藤さんが手際よく作り始めたのは、フレンチトースト 自家製ベーコンとブッラータチーズ1560円。卵液をまとったパンも、毎日朝早くから焼く自家製の食パンだ。
完成まで少し時間がかかるのは、手間隙かけて作るから。「キャラメリゼした色合いなど様子を見ながら作っています」と諸藤さん。仕上げにこんがり焼いた自家製のベーコンとブッラータチーズを添えて出来上がり。
焼き立ての香り立つフレンチトーストを、ナイフで一口切り分けて口の中へ。外側のキャラメリゼがカリッと音を立て、やわらかな中の生地がふわっとした口当たり。カリッふわっな異なるふたつの食感が心地よい。自家製ベーコンと一緒に食べると、塩味とほどよい甘みの絶妙なコンビネーション。
「ベーコンは、肉を漬け込んで干して燻製して、トータルで10日間くらいかかります。ベーコン推しのお客様も多いですね」。まろやかなブッラータチーズに、別添えのメープルシロップをかけると濃厚な味わいに。どこを食べても悶絶のおいしさで、すべてにこだわりぬいた、とっても贅沢なモーニングだ。
モーニングの〆は自家焙煎のコーヒー。自然派ワインのチョイスもあり
モーニングに合わせてコーヒーもオーダー。こちらは目黒の自家焙煎のコーヒーショップ『SWITCH COFFEE TOKYO』の豆を使用した、淹れ立てのブレンドコーヒー。爽やかな酸味で朝のお目覚にぴったりな一杯。
フレンチトーストと人気を二分する、あんバターリコッタチーズサンド660円に合わせるのもおすすめなコーヒーだ。ちなみにあんバターのコッペパンも、中のつぶ餡も、リコッタチーズも自家製というこだわりで、これを目当てに来る客もいるそう。日本的なあんバターだけど、意外と外国の方にも人気だとか。
これだけおいしく贅沢なモーニングを味わってしまったら、夜のディナーも気になるところ。メニューを見せていただくと、メインには和歌山のキンメのポワレ、紀州鴨のロースト、熊野牛のローストなど、いまモーニングを食べたばかりなのに、夜も来たい! と思ってしまう魅惑のラインナップ。ずらりと取り揃えた自然派ワインは、モーニングタイムもOKというから、フレンチトーストに合わせてみてもいいかも。
「出勤前にさくっとでもいいし、休日にはのんびり食べてもいいし、贅沢な朝ご飯を楽しんでいただければうれしいです」と諸藤さん。手間隙かけたこだわりがいっぱい詰まった魅惑のモーニングは、おいしいだけでなく、心まで豊かに満たしてくれる。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=大熊美智代