老舗の八王子ラーメン専門店から夫婦で独立
『びんびん亭』は八王子で30年以上の歴史を持つ、人気の八王子ラーメン専門店。多摩地域に数店舗展開しているが、なかでも『立川びんびん亭』は初の“のれん分け店舗”となる。中河原店のスタッフとして調理と新商品の開発を長年担当していた藤本さんご夫婦が独立し、2020年4月に立川店をオープンした。
店内には、カウンター席を中心にテーブル席を2卓用意。こぢんまりとした空間だが、席同士にゆとりがあるため窮屈さはなく、くつろげる雰囲気。元気いっぱいの藤本さんご夫婦による、フレンドリーな接客も好評だ。
接客の温かさや、お客さんとの距離の近さについて「この店はラーメン屋ですが、お客様が来るだけでホッとできるような場所、コミュニティが作れるような場所にもなればいいなと思っています。リラックスする空間で、昔ながらの中華そばが出てきたら、それだけで幸せな気分になってもらえるんじゃないかなと」と藤本さんは語ってくれた。
とろとろの大判チャーシューが5枚! 大満足のチャーシューメン
中河原店で長年ラーメンを作り続けるなか「自分たちでおいしいラーメンを追求していきたい」という気持ちが高まったという藤本さんご夫婦。『立川びんびん亭』では『びんびん亭』の伝統のかえしをベースにしながら、出汁やスープの配合を独自にアレンジし、ここでしか味わえないおいしさを出している。
今回は満足感がほしい人にぴったりな、大判の豚バラチャーシューがたっぷり5枚ものったチャーシューメン950円を注文した。
動物系と魚介系の出汁をかけ合わせた醤油スープは、醤油の風味を引き立たせながら、角がなく自然でまろやかな味わい。そして八王子ラーメンの象徴といえるのが、器の中央にたっぷりと盛られた刻み玉ねぎだ。
スープと一緒に味わってみると、シャリシャリとした食感がアクセントに。さらに醤油味と玉ねぎの甘さが絡み合い、シンプルながら深みにはまっていくおいしさ。玉ねぎは特有の辛みが全くないので、スープを邪魔しないどころか相乗効果で旨味をアップさせている。
「玉ねぎをたくさん食べたい!」という人には、150円追加で玉ねぎを増量するのがおすすめ。
そして気になるのが、チャーシューメンの主役である豚バラのチャーシュー。口に入れると甘い脂が溶け出し、とろとろと口の中で溶けていく。独自にブレンドしたタレの味がしっかりと染み込んでいて、スープとの相性は言うまでもない。こちらのチャーシュー、気に入ったら単品でテイクアウトもできるのがうれしい(300円/100g)。
ついチャーシューに心を奪われてしまうが、藤本さんが「味の決め手は麺です」と話すほど、こだわりの麺にも注目してほしい。
スープと絡むように設計されたストレートの細麺は、八王子に工場を構える『岩本製麺』のもの。平打ち麺のように縮れていることにより、麺にしっかりとスープの味が入るのだとか。
チャーシューメンを味わうときには、麺、スープ、チャーシューの三位一体のおいしさを楽しんでみて。
定番のラーメンはさることながら、秘かにファンの多いメニューが担々麺だ。濃厚でクリーミーなスープには、秘伝のレシピで作る旨辛の肉味噌がたっぷり。
中河原店時代に限定メニューとして提供していたことから、その当時に食べたお客さんが「あの時食べた担々麺が忘れられなかった」と探し求めて来店してきたこともあったのだとか。一度食べた人をとりこにしてしまう、魅惑のおいしさだ。
音楽好きな人も大歓迎!
ラーメンを待っている間や、食べてひと息ついたあとに店内を見渡すと、ところどころにCDやアーティストのグッズが並んでいることに気がつくだろう。これらを見てもわかる通り、店主の藤本さんはメタル、ハードロック、ハードコアといったジャンルの音楽の大ファン。
同じジャンルの音楽が好きなお客さんと、熱く語り合うことも珍しくないそう。
過去には、バンドTシャツを着用した人限定で割引を実施するなど、ユニークなイベントも開催。『びんびん亭』の看板を背負いながらも、こうした独自の人情味あるサービスで存在感を放っている。藤本さんは「音楽について話したい方もぜひ来てください!」とニコリ。
仕事帰りや予定の合間に『立川びんびん亭』に立ち寄れば、おいしいラーメンとアットホームな雰囲気が元気をくれそうだ。
取材・文・撮影=稲垣恵美