店主のこだわりが共感を呼ぶ
店主の岩岡さんはもともとパンが好きで、独学でパンづくりを始めたという。妊娠中だった2011年に自宅の1階をお店にして、なんと産後1カ月で『ココロパン』をオープンした。出産をきっかけに食の安全に対する意識が高まったという岩岡さん。使用する材料は安心できるものを厳選している。
「環境に負荷がかからないよう、農薬を可能な限り使用せずに栽培された十勝産小麦を使うようにしています。また、子どもに安心して食べさせられるように添加物は使わず、あんぱんに使うあんこやチョココロネに使うクリームなども全て自家製です。手間はかかるけど、良いものが途絶えないよう、こだわって作り続けることが私の使命だと思っています」。そう語る岩岡さんのまっすぐな思いは、オープン当初からずっと変わらない。
そんなこだわりとおいしさに魅了され、土日限定の営業ながら、今日もお客さんが絶えず訪れている。
お店に並ぶ30種類のパンを、店主一人で焼き上げる
『ココロパン』のパンのラインナップは30種類ほど。なんとこれらはすべて、岩岡さん一人でつくっているという。塩パンや食パンなどの定番商品のほかに、旬の素材を使用した季節のパンがある。ちょうど取材に伺った10月下旬は、かぼちゃのクリームパンやれんこんのクロックムッシュなど、秋を感じられるパンが並んでいた。
生地の発酵には、酒粕の天然酵母をメインに使っているそう。日本人になじみのある香りで、和の食材と相性が良いからだ。気温だけでなく、気分や体調にも左右される自家製酵母を育てながらパンづくりをするのは、どれほど大変なことだろう。
開店前には1秒の無駄もなくパンを成形し、焼き上げていく岩岡さん。「パンをつくるときは、常に頭の中でテトリスをしていますね。1台のオーブンを使い、1人で最大限の量をつくれるように、試行錯誤しながら焼いています。常連さんも多いので、お客さんの顔を思い浮かべながらパンをつくるのは楽しみの一つなんです」
「食の安心がそろうお店にしたい」
焼き上がったパンは、元常連の販売スタッフ、小梨さんが手際よく並べる。「雑穀ブレッドはプチプチの食感と香ばしさが最高です。サンドイッチにしてもおいしいですよ」と教えてくれた。
開店後には、続々とお客さんが訪れる。なかには「何を食べてもおいしくて!娘も『ココロパン』のファンで、予約してまとめ買いしていくんです」という遠方からの常連さんも。初めてくる人は口コミの影響でお店を訪ねることが多いという。「息子からおいしいパン屋さんがあると聞いて」「お友達にも紹介したんです!」と、お店への信頼を随所に感じられる。
「ココロパンに行けば安心なものがそろう」とお客さんに思ってもらえるよう、パンのほかに無農薬栽培の新鮮な野菜や卵も売っている。卵は三重県にある農業高校で育てられた「平飼い卵」を仕入れているとか。「のびのび育っているからか、普通の卵と比べると味が違うんですよ。お客様からも好評なんです」と岩岡さんは話す。
取材後、近くの公園で『ココロパン』のおいしいパンを食べると、安心感を覚えココロが満たされた。
取材・文・撮影=パンスク編集部