高級ホテル出身のシェフが、なぜ下町でフレンチ?
亀戸といえば、ホルモンや餃子などが有名なTHE・下町。ディープな飲み屋街も多いこの地で、『DECARY』は2014年12月にオープンした。
「平日は地元の方にご利用いただくことが多いです。気軽に立ち寄れるお店作りを重視しているので、ディナータイムには1人でふらっと飲みに来られる女性のお客様もいますよ」
そう語るのは、『DECARY』のHead Chef、榎本吉宏さん。
過去には都内の高級ホテルやレストランなど、比較的敷居がお高めの店で厨房に立っていたという榎本さん。雰囲気も客層も前職とはがらっと変わるであろう『DECARY』に、榎本さんはなぜジョインしようと思ったのだろうか?
「実は『DECARY』のオーナーは、ホテル勤務時代に一緒に働いていた仲間で。僕もいつかは地域密着型の店で働きたい想いが強かったので、オーナーから声をかけられた時に迷いはありませんでした」
亀戸はオーナーと榎本さんの地元が近く、2人にとって昔からなじみ深い場所だったそう。確かに、そんな愛着のある場所にお店を開けば、“地域密着型の店を作りたい”という想いも実現しやすくなりそうだ。
高級店で経験を積んできた腕利きシェフが作るカジュアルフレンチ、これは料理にも期待が高まる……!
牛肉100%の大迫力パテ!旨味際立つ、バランス抜群の絶品グルメバーガー
『DECARY』ではランチタイムのコース料理なども充実しているが、今回はあえてデカリーバーガー1350円を注文。敏腕シェフが作るハンバーガーとは、一体どんな味わいなのだろうか? 期待に胸がふくらむ。
目の前に現れたデカリーバーガー1350円は、“ハンバーガー=ジャンクフードの定番”という概念を、その見た目から覆す一品だった。迫力満点なのに、どこかこじゃれたリッチさを感じられる出立ちだ。
130gものボリューミーなパテは、食べ応え抜群。牛肉100%にこだわり、脂の少ない肉を使うことで、くどくなり過ぎない、ちょうど良いバランスの肉感を体現している。
たっぷりの具材がサンドされているのがこのハンバーガーの魅力だが、特にいい仕事をしているのが、しっかりと焦げ目がつくまでグリルされたオニオン。
「オニオンはグリルすることで甘みが引き立ちます。それをバルサミコで味付けすることで、酸味とコクがパテの脂身やチーズのくどさを中和してくれるんです」
濃厚な肉の旨味を感じられるパテ、歯触りが楽しい野菜、しっとり食感のバンズ……それぞれが自身の個性を主張してくるのに、不思議なことにこのハンバーガーは、味が散らかることなく、全食材が絶妙なまとまりを見せている。
「ハンバーガーは食材の一体感が何よりも大事だと思っていて。随分と試行錯誤を重ねましたが、今は自分でも“完成形”といえるレベルのバーガーに辿り着いたと思っています」
榎本さんの言葉にも納得。確かにこのハンバーガーは、間違いなく至高の味わいだった。
日常になじむ、アットホームでおいしいお店
「食べ応えも重視したいけど、肉が重すぎると最後までおいしく食べてもらえない。とにかく全体のバランスにこだわって、お客様が最初から最後までずっとおいしく食べられるように、肉のグラム数には随分頭をひねりました」
ハンバーガーひとつ取っても、お店で提供する料理に榎本さんが妥協することはない。
「敷居を高くしたくない」「お客様と常に近い距離でいたい」榎本さんのそんな想いから、誰もが気軽に食べられるハンバーガーをランチメニューに追加したそうだ。
「自分なりにお店を表現するなら、“アットホームでリピートしたくなる店”かな。自分が住んでいるところに、“また来たい!”と思える店があったらうれしいじゃないですか」
『DECARY』をそんなお店に育て上げるために榎本さんがしたことは、至ってシンプル。“また来たくなる接客”、“また食べたくなる料理” 。この2つを提供する、それだけだ。
「寒い冬には一番最初にほっと温まる料理を、そしてメイン所では口に入れるのがワクワクするような料理を…そんなちょっとした心がけを、日々大切にしています」
榎本さんをはじめ、従業員一丸となってお店作りに邁進した結果、口コミが口コミを呼び、今では平日のランチ時でも満席になるほどのにぎわいを見せている『DECARY』。
この店に来れば、高級店で料理の腕を磨き上げたシェフが作る絶品フレンチを、誰もが気軽に楽しめる。亀戸という街の雰囲気と、フレンチビストロの魅力を巧みに融合させた店、それが『DECARY』なのだ。
友人との気兼ねないランチも、ちょっと特別な日のコース料理も存分に満喫できる『DECARY』で、あなたならどんなランチタイムを過ごす?
取材・文・撮影=杉井亜希