変わらぬ看板メニューは他にはない甘辛スープ

黒基調で落ち着いた雰囲気の店内。
黒基調で落ち着いた雰囲気の店内。

店内は外観と同じく黒基調の落ち着いた雰囲気。メニューは棒棒鶏やピータン豆腐などのおつまみ、ふかひれスープや北京ダックなどの前菜、貝類、海鮮、肉料理、野菜に、チャーハンなどのごはんもの、麺類、スープに点心と、オーソドックスな中華料理が並ぶ。

今回注文したのは『門前仲町 虎』の看板メニュー虎特製スタミナそば900円だ。

虎特製スタミナそば900円。
虎特製スタミナそば900円。

到着したのは濃く、ほぼ黒に近いほどの赤いスープのラーメン。麺を覆い隠すほどに、ニラ、もやし、水菜と肉みそが乗っている。

真っ赤なスープに緊張が走る。
真っ赤なスープに緊張が走る。

真っ赤なスープをレンゲですくうと、激辛を主張する見た目。おそるおそるひと口。意外にもまず感じるのは甘み。甜面醤の風味と甘味がかなり強い。そしてあとから辛さが追いかけてくる。しかしその辛さも見た目ほどではなく、甘味とも相殺されるので程よく感じる。しっかりとしたスープのベースが、ただ辛いだけではない深みと奥行きを作り上げている。

味のしみ込みを感じる麺。
味のしみ込みを感じる麺。

スープに沈んだ麺をすくい出す。中太でほんのわずかに縮れていて、スープがしみ込んでいる。プルンとした特徴ある食感で、ほどよくスープをまとっている。甘辛さの染みた麺はスープによくなじみ、辛さを和らげてくれる。

辛いことには辛いが、甘さも強くて後を引く。辛い辛いと言いながらも箸が止まらずひっきりなしに麺を啜ってしまう。合間にモヤシや水菜を箸休めにして落ち着きを取り戻す。ニンニクと豆板醤の香る肉みそもいいアクセントだ。気づけば麺がなくなり、最後のひと口と思ってスープをレンゲでいただくが、癖になる甘辛さにもうひと口、もうひと口と飲んでしまう。

気軽に満足できる中華を目指す

「特製スタミナそばは昔からずっとうちの看板メニューですね。この“甘辛さ”というのはあまり他では見られません。中毒性が高くて、圧倒的にリピーターが多いです。甜面醤(テンメンジャン)をメインに複雑な味わいを作り上げて、飽きずに何度でも食べたくなる味に仕上げているんです。スープは鶏と豚が半々です。麺は中太で若干縮れた玉子麺で、スタミナそばのスープに合うように作られた専用の麺です」そう語る潟上直人さんは2002年から店長を務める。

店内カウンター。
店内カウンター。

『門前仲町 虎』は1977年にオープンして以来門前仲町の住民に親しまれてきた。リーズナブルで確かなクオリティは地元以外からも人を呼び、連日多くのお客さんでにぎわっている。

「私が来てからは20年ほどですが、そのときからの常連さんも多くいます。もちろん20年以上前からのお客さんもいますね。うちは町中華として気軽な値段で量を多く、高い満足感を提供できるように心がけています。子どもと一緒に家族でいらしてくれるお客さんもいれば、中華のおつまみでお酒を飲んでワイワイと楽しんでいるお客さんもいます。もちろんバージョンアップするところはしますが、基本的な味は変えず、長年のお客さんががっかりしないよう、そして新しく来てくれた人たちも味で満足してもらえるよう日々精進したいです」

ゆっくりと誠実に潟上さんはお店にかける思いを話してくれた。

黒基調のシックな外観。
黒基調のシックな外観。

『門前仲町 虎』はリーズナブルな値段で確かな味の料理を提供してくれる中華料理屋だ。特に虎特製スタミナそば900円は、他に類を見ない中毒性のある味でリピーターを絶やさない。

味や値段に誠実に、研鑽を怠らず実直にやってきたからこそ、ここに来れば間違いない、迷ったときはここにしようという信用が積み重なり、50年という長きにわたって地元の方から観光客まで親しまれてきたのだろう。

門前仲町に立ち寄る機会があったのなら『門前仲町 虎』に決まりだ。

住所:東京都江東区門前仲町1-13-6/営業時間:11:00~22:30 LO(金は11:00~1:30 LO、土は 11:00~0:30 LO
、日・祝は11:00~21:30 LO)/定休日:無/アクセス:地下鉄大江戸線・東西線門前仲町駅徒歩4分

取材・文・撮影=かつの こゆき