路地裏の閑静な住宅地に佇む隠れ家的カフェ
閑静な住宅地のなかに『&t cafe』がある。周囲にはちらほらアパレルや雑貨店などがあるエリアだが、普通に散歩していたらなかなか見つけられないだろう。
というのも、筆者は地図アプリを頼りに店に向かったもののそれらしき看板が見つからずプチパニックに陥ったからだ。まさか入り口に辿り着くには建物と壁の間のほっそい路地を入っていかなければならないとは。
白い壁に青いドアが爽やか! 取材当日は心地よい晴天だったから、こんなカフェで過ごせるなんてラッキーだ。期待値MAXで中に入ると、スタッフの松下さん、森さん、斉藤さんが迎えてくれた。
このカフェでレシピの考案や調理などを担当する森さんが答えてくれた。「ここは2021年にオープンしました。元は普通の一軒家だったのですが、全部壊して現在の建物を作りました。 “ギリシャにあるレストランやカフェ”をコンセプトにしています。オーナーがギリシャに旅行に行ったときに印象に残った風景を再現しているそうです」。
天井が高く、自然光がたっぷり入るウッドデッキには大きなヤシやシュロの木、サボテンなどの多肉植物がワッシワッシと茂っている。リゾートにあるカフェみたいで開放感があるなあ。
空間の素晴らしさだけでなく、提供するメニューにもこだわっている。こちらは白砂糖不使用、調味料は限りなく無添加のものを使用したオーガニックカフェだそう。空間で癒やされ、健康的な食事をして心身ともに元気になれるカフェなんだなあ。
カリッとフワフワ、甘さと苦さが溶け合うフレンチトースト
やけに店内がすっきりしてオシャレだなと思っていたら、そういえばメニューが書かれた黒板やPOPがない。テーブルに名刺くらいの大きさのQRコードが置かれていて、自分のスマホで読み込むとメニューにアクセスでき、直接オーダーできるという仕組み。最近は、こういったスタイルのお店が増えてきました。慣れると便利だけど、ちょっと寂しい気もするなあ……。「でも、困ったことがあればお気軽に声をかけてくださいね!」と斉藤さんが微笑んでくれてホッとした。
「カレーやサンドイッチ、サラダが人気です」と森さんに聞いたのだけど、店に入った時から甘い匂いに誘われていたのでフレンチトースト1100円をオーダーした。
厨房からはすでに甘〜い香りがしている。うわ〜、同時に漂ってくる香ばしさも相まってたまりませんねぇ。森さんは、べったりと厨房に張り付いてカメラを構えている筆者を見て「特別なものを使っていませんし、ごく普通なんですよ。こんなんでいいんですか〜?」と不安そう。いいんです、カリッとした焼き目が撮りたいんです。
シンプルながら食欲をそそる出で立ちのフレンチトースト様。よっ、いい照り出てまっせ! アイスが溶け始めてきたのでさっそくいただきまーす!
さっそくフレンチトーストにナイフを入れるとパリッとした感触。むむむッ、これは! パンの断面を見るとたっぷり卵液が染み込んでいてフワフワしている。食べる前から「コレ、絶対ウマイやつ」と確信した。
パリパリ、シャクシャク、ジワ〜。オノマトペで表現するとこんな感じだ。焼きたてだからパリパリする部分もあるけれど、フレンチトーストの熱でバニラアイスが溶けてソース状になり、その水分でパンの表面のキャラメルも溶けて混ざりつつも、シャクシャクとした食感が残っている。
アイスのミルキーさとキャラメルのほろ苦い甘みをパンがたっぷりと吸い込んで、口のなかにおいしさがジワ〜っと広がっていく。卵の味わいもあるから、あったかいパンプディングのようでもある。「材料はシンプルなんですけど配合はヒミツです」と森さんが語っているが、たしかにこれは絶妙なおいしさだ。ペロリと平らげ、余韻を味わった。ああ、ごちそうさまでした。
愛犬とリゾート気分も味わえる! 映え映えスポットが点在
食後にまったりしながら店内をぐるりと見回してみると、思わず写真を撮りたくなってしまうスポットばかり。しかもワンコ連れもOKというから、愛犬と一緒に旅行気分に浸れそうだ。
『&t cafe』では、ドッグカフェ等での常識的なマナーを心得ていれば、全席ワンちゃんOK。オムツを必ず着用すること以外は自由だから、ワンちゃんたちにとってもストレスが少なく過ごせそうだ。ただ、店ではワンちゃん用のおやつや食事の提供はないので、出かける前に用意しておこう。
店内は貸切が可能で、「(アニメキャラやアイドルの)推しのオフ会、ワンちゃん好きの仲間が集まるパーティなどを開催したこともありました。貸切だと着席で60人くらいは入れるので、そういう使い方もできるんですよ」と森さんが語る。
また『&t cafe』には開放的な店内の雰囲気をインスタなどで見て興味を惹かれたお客さんが、国内外からやってくる。「キャリーバッグを持ってくる方がけっこういらっしゃるので旅行のついでに立ち寄られている印象です。とくにハンモックで写真を撮りたがる人が多いですね」。
天気がいい日だから、ハンモックに座りながら『どうぶつの森』でもプレイしたいところだけど、ハンモックは1席のみなので、今日は遠慮して周囲のお客さんに譲っておこう。次に来る楽しみがひとつ増えた。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢