冬に高まる火災のリスク 特に危険な気圧配置は?

東京消防庁のまとめによると、火災は冬から春にかけて発生することが多く、12月から徐々に増加していきます。寒くなるとストーブなどの暖房器具を使う機会が増えることに加え、空気が乾燥することも火災が増える一因です。また、外出の機会が増えて忙しくなる年末は火の元の確認がおろそかになりがちです。

首都圏で特に大規模な火災の危険があると考えられるのは、日本列島に等圧線が何本もかかる「強い冬型の気圧配置」になるときです。日本海側では大雪や猛吹雪となる一方で、山を越えた太平洋側ではよく晴れて、水分を失った空っ風が強まるため、火災が発生すると延焼するおそれがあります。ニュースや天気予報で「強い冬型の気圧配置」や「西高東低の気圧配置が強まる」などと聞いたら、いつも以上に火の取り扱いに注意するようにしましょう。

強い冬型の気圧配置。 出典:ウェザーマップ
強い冬型の気圧配置。 出典:ウェザーマップ

油断しないで! 散歩前に確認したい火の用心ポイント

帰省や旅行など長期間、家を空けるときは十分に火の元の点検をするという人は多いと思います。ですが、油断しがちなのは散歩などのちょっとした外出のタイミングです。わずかな気の緩みが大きな火災につながることもあります。

令和4年中 住宅火災の出火原因。 出典:東京消防庁
令和4年中 住宅火災の出火原因。 出典:東京消防庁

住宅で発生した火災の原因として多いのは「こんろ」や「たばこ」、「ストーブ」といった火の元です。散歩へ出かける前にも、こんろの火はしっかり消えているか、たばこの吸い殻に火種が残っていないか、ストーブを消し忘れていないか、改めて確認するようにしましょう。

特に注意したいのは、たばこの吸い殻です。灰皿に吸い殻が山盛りになっていると、もみ消したつもりでも火が残っていることに気付かないかもしれません。残った火種がたまっている吸い殻や周りの燃えやすい物に燃え移る危険があります。吸い殻はためずに、火は水をかけるなどして完全に消すように徹底しましょう。

また、日が短い冬は洗濯物を部屋の中で干す家庭もあると思いますが、近くでストーブを使っていないでしょうか?ストーブの上で干していた洗濯物が落下して火災につながるなんてことも考えられます。

このほか、放火による火災を防ぐために、家の周りは常に整理整頓し燃えやすい物は置かない、ごみは決められた収集日の朝に出す、車庫や物置などは必ず鍵を掛けるなどの対策をしておきましょう。

散歩で知る火災の歴史。復興のシンボル「震災イチョウ」とは?

外を歩いているなら火災に巻き込まれることはないという訳では決してありません。少し怖がらせてしまうかもしれませんが、地震による激しい揺れが起きると、大規模な火災が発生するおそれがあります。今後数十年以内に巨大地震の発生するリスクが高い首都圏の皆さんには、必ず覚えておいてほしいことです。

100年前の1923年に発生した関東大震災でも、都心部は同時多発的に火災が発生し、大部分が焼け野原になる被害が出ました。そんな中、地震火災から奇跡的に生き残り今もなお「復興のシンボル」として知られているのが、千代田区大手町にある「震災イチョウ」です。

和気清麻呂像のそばでまっすぐにたたずむ一本の木を散歩中に見かけたことがある人もいるのではないでしょうか?

以前は気象庁が観測する東京のイチョウの標本木とされていたことでも知られています。

実は、イチョウは火災に強い植物だといわれています。震災発生後、水分を多く含むイチョウは防火の役割があると考えられ、街路樹として都内に多く植えられるようになったそうです。

散歩中に火災に巻き込まれることも⁉ 避難の仕方を知っておこう

東京都の報告によると、風が強い冬の夕方に、マグニチュード7.3の首都直下地震が発生した場合、火災によって東京都内で11万棟以上の建物が焼失し、2000人を超える死者が発生すると想定されています。

地震が発生した時に大規模な火災が発生すると心配されるのが「木密地地域」と呼ばれる木造家屋が密集した一帯です。行政によって建物の不燃化・耐震化などの対策が進められていますが、火災に巻き込まれないためには、私たち一人一人の心掛けもとても大事です。もしも、煙や炎に気付いたら、広い道路や川沿いへと逃げてください。その際、風下を避けて、煙を吸い込まないようにハンカチなどで鼻や口を覆って、なるべく低い姿勢で逃げることを覚えておいてください。

何かとあわただしくなる年末ですが、散歩で一息つけば、ほんの少し心のゆとりを取り戻せる時間になりますよね。この一年も四季の移ろいを感じながら散歩を楽しめたでしょうか?

火災の多いこの季節、最後まで安全に過ごし、2024年の新たな散歩ライフに備えましょう。

参考:
防災ブック「東京防災」 東京都
東京消防庁 災害統計 令和4年版火災の実態
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-cyousaka/kasaijittai/r04/data/1_.pdf
東京消防庁 住宅火災の主な出火原因と防ぐポイント
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/201301/e_stove/
千代田区観光協会 震災イチョウ
https://visit-chiyoda.tokyo/app/spot/detail/700
東京都防災ホームページ 首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)
首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)|東京都防災ホームページ (tokyo.lg.jp)

 

文=片山美紀 写真=片山美紀、写真AC