ここは日本の蒲田なのか? 疑うほどの異国感
1階でエレベーターを探すも見当たらない。階段で4階を目指すと、この雰囲気にどこか懐かしい気分になる。そうだ、この感じは日本じゃない。ネパールだ。息を切らしながら上がった4階のレストランは、さらにネパールの雰囲気がぷんぷん。ヒマラヤを冠した極彩色の風景画に、優しい笑顔のネパール人店員さんが迎えてくれた。
さらに階段を上がると、屋上にはテラス席があった。この感じ、どこかで見たことがあると思ったら、20数年前に行ったネパール、ポカラのレストランだった。ポカラは低地にありながら、ヒマラヤ山脈を間近で感じられる景勝地だ。その時に屋上から見えたのは、雄大なヒマラヤの山々だったが、ここからは蒲田の街並みが一望できる。
不思議な気分にさせるレストラン。見回すと、お客さんも異国の方が多い。
ネパールの定食、タカリターリーライスは健康食
ランチはぜひ、ネパールの1プレートランチ、タカリターリーライスを注文したい。「ターリー」とは和食で例えると、ご飯とお味噌汁、焼き魚とお漬物が一皿に盛られたような定食。「タカリ」とは、タカリ族という種族の名前で、ネパールでは料理上手で有名な民族だ。現地にはタカリと名のつくレストランも多い。この日のカレーは鶏肉。辛さは控えめだが、煮込んだ骨付き肉のうまみと、グローブやクミンなどスパイスの香りが爽やかで本格的。
緑のスープは豆のカレー、ダルバード。ポタージュスープのようなまろやかな味で辛さはない。日本で言うと味噌汁のような家庭料理なのだとか。
副菜には、ジャガイモやいんげんなどの炒め物、青菜のスパイス炒めや、酸味のある漬物、ゴーヤの素揚げなど野菜がたくさん。黄色い液体は「ギー」というヤギや水牛のバターから作られたオイル。独特な香りなので、少しずつカレーと混ぜて食べたい。白い小皿は甘いヨーグルト。野菜に発酵食品、豆やチキンのタンパク質と実にバランスの取れた健康食なのだ。
多くの人が注文する単品カレーセットは、なんと500円。チキンやマトン、キーマ、シーフードなど7種類のカレーを選べる上に、ナンやライスは一食100円で追加できる。定番のラッシーやチャイなど飲み物も全て100円だ。
カレーを食べていると、パン!パン!という小気味のいいナンを伸ばす音が聞こえてきた。各テーブルにすかさずおかわりを聞いてくる。隣の人がおいしそうに焼き立てナンを食べていると、ついついおかわりの誘惑に駆られてしまう……。ナンは大きすぎないサイズ感もちょうどいい。カレーは辛さ控えめ。辛いカレーがお好みならば、スパイスの追加をお願いしてもいい。
ディナーはタイやベトナム料理も揃えている
4階客席には窓がない。その反面、屋上テラス席は開放感抜群だ。夏にはビアガーデンとして楽しめるそうで、日差し避けのパラソルも設置されていた。冬に備えて暖房器具もある。手作り感あふれる木の柵や赤い丸椅子、随所に赤色を効かせたインテリアがかわいらしく、アジア気分を盛り上げる。
店を切り盛りするスタッフは4人。この4人のスタッフ以外にも、店には次々と外国人客が訪れる。気づけば周りに異国の言葉が飛び交っていた。ディナーメニューは、タイのガパオにベトナムの生春巻き、インドのビリヤニと、ネパール料理以外にも驚くほど豊富なラインナップを誇っている。ポテンシャル無限大の店なのだ。
取材・⽂・撮影=新井鏡子 構成=アド・グリーン