コロナに翻弄された兄弟がオープンしたカフェの2号店

国道246号線から細い路地に入り、どんどん奥へ進んで行くと突如現れるこんもりとした森……もとい、ビルにたどり着いた。壁の中央に『i2 CAFE』と表示されている。

さまざまな花や緑に囲まれた建物。
さまざまな花や緑に囲まれた建物。

入り口を探しキョロキョロしてみるとメニューがある左手のほうにあった。それにしても、ビルの外壁は隙間なく植物たちに覆われているのにもかかわらず、しっかり管理が行き届いているところに感心。素晴らしいですね。

左手の道に進むと店の入り口がある。のびのびとした草木の様子はまるでジャングルのようだ。
左手の道に進むと店の入り口がある。のびのびとした草木の様子はまるでジャングルのようだ。

店頭にあるおいしそうなメニューを横目に店内へ入ると、これまた木と緑を基調にした空間が広がっている。カウンターやテーブルはゆったりとしていて、リラックスできそうだ。店主の岩本晃輝さんに話を聞いた。

右が兄の岩本晃輝さん、左が弟の湧大さん。2人分の苗字の頭文字をとって“i2(アイツー)”だ。
右が兄の岩本晃輝さん、左が弟の湧大さん。2人分の苗字の頭文字をとって“i2(アイツー)”だ。

「僕は大学を卒業してからアパレルの会社で働いてたんですけど、コロナのまっただ中で会社が倒産してしまったんです。その頃、2つ下の弟は就活の時期だったんですがコロナ禍で就職先がなかなか決まらず、じゃあ2人で何かやろうかというのがきっかけでした」。

そして2020年、フルーツサンドをメインにした『kaikaina(カイカイナ)』をオープン。サンドイッチやスムージーをメインに、コロナ禍のニーズにあわせテイクアウトに力を入れて展開。3年で軌道に乗り2023年8月に新店舗『i2 CAFE』を向かい側のビルにオープンした。

店内にも緑があふれ、落ち着いたアンティーク調のインテリアが並ぶ。
店内にも緑があふれ、落ち着いたアンティーク調のインテリアが並ぶ。

「ちょうど、『もうひとつ違う店を出そうか?』と弟と相談していたところ、向かいの店舗に空きが出てオーナーさんから『ここでやってみない?』と声をかけられたんです」。

岩本兄弟を含めスタッフは全員20代。カフェでのキッチン経験があるスタッフにメニュー開発を頼み、兄・晃輝さんは事務や広報、レジなどを担当。弟・湧大さんは器用さを活かしキッチンに入ってメニュー開発と調理を賄っている。

まるでシュー生地のような食感。アメリカ生まれのパンケーキがメイン

『i2 CAFE』のオープンにあたって、何をメインに提供するべきかスタッフで話し合った。

表参道エリアでカフェをやるならパンケーキやプリン、パフェのような定番メニューが外せないじゃないですか。とはいえ素晴らしいお店がいっぱいあるので、同じパンケーキをやっても面白味に欠けるという想いがありました」。

そこで候補にあがったのが、ダッチベイビー。スキレットで焼きあげるドイツ風パンケーキで、発祥とされるアメリカでは朝食に食べることが多いそう。シュー生地とクレープを足して2で割ったような独特の食感が特徴だ。

ダッチベイビーは期間限定を含め5〜6種用意されており、フレンチトーストもある。
ダッチベイビーは期間限定を含め5〜6種用意されており、フレンチトーストもある。

カフェ天国の表参道だけに近隣にもダッチベイビーを提供する店舗はあったが、まだそれほどメジャーでないことに目をつけた。

「いくつか候補があったんですけど、やっぱり表参道は女性のお客さんが多いのでカフェ定番のパンケーキが好まれると思ったし、そこにひと捻り加えたダッチベイビーで勝負してみたかったんです」。

大きな水槽の裏側には、ゆったり座れるソファ席も。
大きな水槽の裏側には、ゆったり座れるソファ席も。

ランチ後やお茶を楽しむ3時から4時ごろまでをコアタイムと考え、サイズにもこだわっておやつ感覚で食べられるSサイズと、もう少し食べたい方向けにMサイズを用意した。

軽食っぽい見た目だが、メープルシロップをたっぷりかけるとおいしさがアップする生ハムとブッラータチーズのダッチベイビーは人気のメニュー。

生ハムとブッラータチーズはオープン以来いちばんの人気メニュー。Sサイズは1600円、Mサイズは1800円だ。
生ハムとブッラータチーズはオープン以来いちばんの人気メニュー。Sサイズは1600円、Mサイズは1800円だ。

「ミルキーなブッラータチーズ、ルッコラが乗っています。そこへメープルシロップをかけていただくんですよ。食事系のメニューなんですけど、メープルシロップをかけると甘じょっぱい感じですごく合うんです!」。甘じょっぱ系は最近トレンドですもんね。鮮やかな色合いだし、女の子たちが喜びそうだ。

キャラメリゼされたバナナと濃厚バニラアイスが鉄板のウマさのダッチベイビー

どれどれ、それじゃダッチベイビーをいただいてみましょうか。タテに割ったバナナがドーンと乗っていておいしそうな、キャラメルバナナナッツSサイズ1300円(Mサイズ1500円)とエスプレッソ400円を注文してみた。

キャラメリゼしたバナナをON。
キャラメリゼしたバナナをON。

ダッチベイビーは注文してから焼きあげるので約20分時間がかかる。その間は店内の水槽を眺めて癒やされていよう。

ムードのある水槽。もうひとつ大きな水槽があり、そこでは魚たちが泳いでいる。
ムードのある水槽。もうひとつ大きな水槽があり、そこでは魚たちが泳いでいる。

ほどなくして、アツアツのキャラメルナッツとエスプレッソが運ばれてきた。外はアツアツ、中はひんやりの温度差もごちそうのうち。さっそくいただいてみよう。

キャラメリゼされたバナナが圧倒的な存在感!
キャラメリゼされたバナナが圧倒的な存在感!

生地の周りはカリッと香ばしくすごく軽い食感で、中はもっちりとしている。晃輝さんから伺った「シュー生地のような」という表現が近い。

キャラメリゼしたバナナの横にはバニラアイス、その下には一口大にカットされたバナナ、アーモンド、キャラメルソースがかかっている。ピザのように扇状にカットして、バナナやナッツともに食べてみた。生地のカリッとした部分と、溶けたアイスとキャラメルソースがたっぷり染み込んだもちもちの部分の食感も面白いし、そこへきてナッツとバナナの味わいが重なって絶妙なハーモニーに。

パリッとした飴状になりほろ苦くも甘いキャラメルが、完熟してねっとりとしたバナナとマッチ。
パリッとした飴状になりほろ苦くも甘いキャラメルが、完熟してねっとりとしたバナナとマッチ。
オリジナルブレンドのエスプレッソがキャラメルナッツに合う〜!
オリジナルブレンドのエスプレッソがキャラメルナッツに合う〜!

晃輝さんは「生地の調合は秘密なんですけど、かなり軽い食感に仕上げています。ここへさらにメイプルシロップをかけて食べてみてください」と言って、メイプルシロップのボトルを渡してくれた。

当然、さらに甘みが増すけれどしつこくないからエスプレッソを飲めば口の中がスッキリとリセットされた。生地が軽い食感のせいか完食しても胃が軽い。ラララ〜♪ 次はランチに生ハムとブッラータチーズをいただきに来るぞ。ルルル〜♪

住所:東京都港区南青山3-9-1 Ablim1F/営業時間:8:00〜17:00/定休日:無/アクセス:地下鉄表参道駅から徒歩5分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢