背脂に沈む濃厚豚骨醤油ラーメン

背脂チャッチャ系の老舗として名高い有名店。
背脂チャッチャ系の老舗として名高い有名店。

蔵前駅近くの江戸通り付近は真新しいビルやおしゃれな建物がひしめいているが、その中で歴史を感じる佇まいをもって存在感を示す『蔵前元楽総本店』。

ラーメンメニューは豚骨醤油スープの元ラーメンと豚骨塩スープの楽ラーメンの2系統。一番メインはやはり豚骨醤油の元ラーメン。とくにスープが見えなくなるほどの背脂にまみれた特製元ラーメンが一番のウリということだ。今回の注文は特製元ラーメンにこぶためしがついたセット1050円にした。

大量の背脂が食欲をそそる。
大量の背脂が食欲をそそる。

やってきたのはスープを埋め尽くすほど、背脂が縁までびっしりと振りかけられたラーメン。分厚い脂の層、それに隠れて薄っすらと見えるアメ色のスープに心が躍る。

麺は中太ストレート。スープのしみ込んだ色合いに食欲がかきたてられる。
麺は中太ストレート。スープのしみ込んだ色合いに食欲がかきたてられる。

まずはひと口。背脂をまとったストレート麺が勢いよく口に飛び込む。もっちりとした歯触りの麺にはほどよく醤油のタレがしみこみ、スープもよく絡む。豚骨のコクと背脂のうまみがまざりあい、まさに至福。

レンゲでスープをすくうと背脂のつぶつぶが光に反射してきらきらと輝き、濃厚でとろみすら感じる。豚骨のパンチはしっかり。しかし不思議とクドさはなく、脂も口の中でサラッと溶けると醤油と豚骨の旨味が口の中であふれかえる。醤油のとげとげしさはなく、脂がまろやかに味を包み、甘い。

シルキーな滑らかさと、すっきりとしたキレの良さで、これほど大量の背脂であってもごくごくと飲めてしまう。

チャーシューは肉感をしっかりと残しているが柔らかく、脂はトロトロにとろける。チャーシューに麺、スープ。どれを食べても100%おいしい。まさに至高の一杯だ。

単品でも人気のこぶためし。
単品でも人気のこぶためし。

こぶためしは白飯にたっぷりの角切りチャーシュー、そしてネギとのりがちらしてある。

仕切りにはおいしい食べ方が貼られている。
仕切りにはおいしい食べ方が貼られている。

お勧めの食べ方はタレとごま油をかけるというもの。テーブルにタレとごま油は用意されているが、実はもう一つ、お店で毎朝絞っている絞りたてのごま油も店内中央に用意されている。

ぶためし専用のたれとごま油。
ぶためし専用のたれとごま油。
毎朝絞られる新鮮なごま油も選べる。
毎朝絞られる新鮮なごま油も選べる。

黄金色に輝く絞りたてのごま油は新鮮で優しい味わいだ。ぶためしに混ぜていただくと、チャーシューのうま味とタレの相性が素晴らしく、食べ終えた後にふわりと軽やかにごまの新鮮な後味がやってくる。

「テーブルに付属されているごま油はかどやのものです。もちろん専門店のごま油なのでおいしいことに間違いはありませんから、要は好みですね」

と店長の平田毅さんは言う。

見るからに新鮮!
見るからに新鮮!

絞りたてのごま油は軽やかで品のいい後味が魅力で、テーブルに置かれたごま油は強いごまの香りが魅力だ。かどやのごま油をかけていただくと、タレに負けない強い風味が味に奥行きを与えて、チャーシューの味を引き立てる。

濃厚な味わいがいいのならかどや、さわやかな味わいがいいのなら絞りたてのごま油がいいだろう。

3日間炊き続ける濃厚豚骨スープ

大量の背脂に負けない力強く濃厚な豚骨スープは3日間煮込む。

「豚の拳骨、脚の骨ですね。それを3日間丁寧に煮込み続けます。もちろん事前の下処理をしっかりすることが大切です。背脂も同じですね。それをしないとくさみが出て、しつこくギトギトのスープになってしまいます。3日間炊くことでコラーゲンをたくさん含んだトロトロのスープになってきます。仕上げに野菜で出汁をとります。最近は光熱費が高騰してきて厳しいのですが」

と平田さんは語る。

「麺は、30年来の付き合いがある駒形軒製麺所の麺です。当店のオリジナル麺を作るために30回は打ち合わせを重ねました。使っている麺は5種類あって、メニューや季節で使い分けています。元ラーメンでは、まずタレとスープ、背脂を入れてから麺を少し馴染ませます。それで麺に味が染み込んで色がつくんですね。その後にスープを注ぐんです」

『蔵前元楽総本店』はチャーシューも人気で、真空パックにされたものをテイクアウトすることもできる。確実に持ち帰りたいときは事前に予約するのが望ましい。

チャーシューは専用の機械でじっくりと煮込まれる。
チャーシューは専用の機械でじっくりと煮込まれる。

専用の機械でじっくりと煮込まれるチャーシューは肉質や脂具合から厳選されたスペイン産の豚バラが使われている。こうやって書いているとあの旨味が口の中に蘇る。常備菜にしたいほどに最高のチャーシューだった。

オンラインサイトでも購入できるので、ぜひ試していただきたい。

店内の様子。
店内の様子。

ワイルドに振りかけられた大量の背脂のスープがすっきりと飲みやすいのは丁寧に気を配った下ごしらえあってのことだ。

環境もバッチリ。清潔感ある店内で最高の一杯を。

『蔵前元楽総本店』の店内を眺めると、料理だけでなく料理をいただく環境にも気を配っていることがわかる。

各テーブルにアルコールが備え付けられている。
各テーブルにアルコールが備え付けられている。

コロナ禍を機に、客席は全て仕切られるようになり、各テーブルに消毒用アルコールが設置されるようになった。

オリジナルの換気装置。
オリジナルの換気装置。

また、各テーブルに配管を通す独自の換気システムを設置することにより、冬場は正面の窓を閉め切っても換気できる。

料理にもそれを食べる環境にも気を配り、ベストな状態でベストなテイストのラーメンが食べられるのだ。

歴史を感じる『蔵前元楽総本店』の正面外観。
歴史を感じる『蔵前元楽総本店』の正面外観。

「全てが脂に合うように作られています。脂を一番おいしく召し上がっていただけるように考え抜かれたラーメンなんです。醤油の方の元ラーメンなら、お望みであれば脂を増やすことも可能です」と平田さんは控えめだがその奥に自信をもってそう語る。

濃厚こってりな背脂チャッチャ系ラーメンをがっつり食べるのであれば、蔵前の老舗『蔵前元楽総本店』が最適だ。

住所:東京都台東区蔵前2-12-3/営業時間:11:00~21:00(土・日・祝は11:00~20:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄蔵前駅から徒歩3分

取材・文・撮影=かつの こゆき