昭和の喫茶店を思わせる老舗ラーメン店
久しぶりに銀座通りをぶらぶらと散策していると、高級ブランド店や老舗百貨店が並ぶ街並みにふと感じる違和感。あれれと目を凝らすと、昭和の香りが漂う『ABCラーメン』の看板。しかもお店は地下にあるようだ。うーん、異次元への入り口かもしれない。面白いもの好きの筆者は、迷わず階段を降りていった。
店内に入ると、期待通りの空間が待っていた。壁に貼ってあるチラシやポスター、カウンター席やボックス席の雰囲気はまさに昭和の喫茶店。本当にここは令和の銀座なのか? そしてここはラーメン店なんだろうかと不思議な感覚につつまれる。
「私の父が1977年に創業し、私は2代目なんです。ずっとここで変わらず営業を続けています」と教えてくれたのは店主の武内美雅さん。店名の『ABCラーメン』の由来を聞くと「私の父親がつけたんですが、覚えやすいということでABCとしたそうです」。なるほど、確かに覚えやすい店名だと妙に納得。
ゴマがたっぷり! ヘルシーでコク旨の麻醤麺をいただく
武内さんに聞くと、看板メニューの麻醤麺(マージャンメン)1000円がおすすめだそう。フレンチで修業した先代が作ったオリジナルのラーメンで、たっぷりのゴマペーストで健康にもいいんだとか。
麻醤麺には、ネギ麻醤麺1200円、辛旨系の魔女麻醤麺1200円、ラスボス級の辛さの大人の魔女麻醤麺1300円などのバリエーションがあるが、今回は初めてなのでノーマルの麻醤麺を注文。
武内さんに麻醤麺に合うサイドメニューを聞くと、「1/3チャーハン300円が人気です。ラーメンと一緒にいただくのにちょうどいいサイズなんですよ」と教えてくれた。確かにありそうで意外とない、1/3サイズ。ラーメンといっしょに食べやすい量を用意するのは、お客への心遣い。もちろんあわせて注文。
ほどなく着丼。まずはスープを一口いただくと、香ばしいゴマの香りが広がる。ゴマペーストのまろやかさとコク、醤油ダレの旨味が絶妙のバランスを生んでいて、ひき肉合わせ味噌もいいアクセントになっている。
麺をすすると、中太ちぢれ麺がしっかりとスープに絡み、ゴマの風味を引き立てる。さらに麺のほどよいもちもち食感も言うことなしだ。ゴマペーストの濃厚なコクをしっかりと味わえるスープは後味がすっきりとしていて、つるつるといただける。
サイドメニューの1/3チャーハンは、ラーメンに合うようにシンプルな味に仕上げているそう。一口いただくと、たしかにラーメンの味を引き立てる、まろやかな味だ。
ゴマペーストと醤油ダレスープ、そしてちぢれ中太麺は、まさに相性抜群の組み合わせだ。そしてシンプルでまろやかな味のチャーハンは、麻醤麺のおいしさをじゃませず、お互いの味を引き立て合う。ここでしか食べられない味を堪能した。ごちそうさまでした。
町中華のように充実したメニュー
『ABCラーメン』ではラーメン系以外のメニューも充実している。名物メニューの各種ギョーザをはじめ、五目焼きめしなどのご飯ものも人気。選べる楽しさも『ABCラーメン』の魅力の一つだ。
武内さんに「この充実したメニューは町中華と言っていいくらいですよね」と聞いたらニコリとして「うちはラーメン店なんですよ」という返事。先代から引き継いだラーメンにこだわり、ここ銀座で昔と変わらずラーメン店を続けるということを大切に思っているようだ。
銀座に来たらつい立ち寄ってしまう、そんな魅力のある『ABCラーメン』。これからもこの味と雰囲気のまま、変わらず営業を続けてほしいと思いながらお店を後にした。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎