泉涌寺「楊貴妃観音」【京都】

息を呑む美しさ。楊貴妃観音を訪ねて

本堂(泉涌寺公式HPより)。
本堂(泉涌寺公式HPより)。

たくさんの素晴らしい仏像が残る京都。中心部の喧騒から外れた東山の地に最初のオススメのお寺「泉涌寺」があります。

山に建つお寺では、本堂が高い場所に立っていることが多いのですが、こちらの本堂は大門(入り口)から参道を下った位置にあり、全国的にも珍しいものです。

この本堂にも運慶作と伝わる3体の仏像が祀られているので決して見逃せませんが、今回、私ツバキングが推すのは、大門脇のお堂に安置される「楊貴妃観音」。

楊貴妃観音(泉涌寺公式HPより)。
楊貴妃観音(泉涌寺公式HPより)。

仏像の種類としては「聖観音」ですが、世界三大美女のひとり楊貴妃の面影を持つように作られたことから、この名が付いています。

美女のようでもあり中性的な面立ちにも見えるお顔は神聖さがみなぎり、若さの中にも落ち着きを感じられる像。その美しさに、初対面の際は目の前で何分も立ちつくしてしまいました。

勝覚寺「四天王像」【千葉】

カッコよすぎる四天王と対峙する

同寺の小杉住職と筆者。
同寺の小杉住職と筆者。

千葉県の太平洋沿岸、最寄駅(JR総武本線成東駅)からも7km離れた田園風景の中に建つ「勝覚寺」。(駅から約2時間に1本のバスがあります)

アクセスは決してよくないお寺ですが、こちらの「四天王像」はその障壁をクリアしてでも拝観いただきたい仏像です。

厳格さとカッコよさが共存。
厳格さとカッコよさが共存。

暗いお堂に入ると、中央に座る本尊の釈迦如来が渋い金色で浮かび上がり、その周囲を取り囲むのが四天王。

全て2m超の威風堂々たる大きさと、咆哮が聞こえてきそうなほどの迫力の表情に圧倒されます。

作られたのは今から約800年前、大スター仏師である運慶の作と伝わっています。

鎌倉時代で武士が中心だった当時、こうした力強い表現が好まれましたが、その時代を象徴するような表現と言ってもいいでしょう。

また、眼の部分をくり抜いて水晶を嵌めるという当時の最新技術「玉眼(ぎょくがん)」によって眼が輝き、生命感が宿っているのも目を引かれます。

観世音寺「観音像」【福岡】

大迫力の巨大観音像に圧倒される

同寺の拝観に向かう筆者。
同寺の拝観に向かう筆者。

福岡市の中心から電車やバスで1時間弱、太宰府市にある「観世音寺」。創建は今から1300年以上も前の西暦670年頃とされています。

素晴らしい仏像群が所蔵されているのは、こちらの宝蔵。

堂内の様子(案内看板より)。
堂内の様子(案内看板より)。

1階で拝観料を支払い、階段を上るとあまりの迫力に腰が抜けそうになるほどの巨像。5mを超える日本最大の「馬頭観音像」を中央にして両脇に、「不空羂索観音像」と「聖観音像」が立ち並びます。

目の前のベンチに座れば、仏像に興味がなかった人でさえ、その3体をじっと見あげ続けることでしょう。

しかし、この宝蔵の魅力は他にもたくさん!

先の巨像に比べれば小ぶりに見えるも、目の前に立てば圧巻の大きさを誇る「阿弥陀如来像」や「聖観音坐像」などがズラリと並んでいます。

小さな像ながら、見逃してはならないのが「大黒天像」。ニコニコした表情で2頭身くらいのフォルムが一般的な大黒天ですが、こちらはしかめっ面に人間と同じくらいの頭身。

これは、今の福徳の神になる前の古い姿とされ、現存する日本最古の大黒天なのです!

妙傳寺「釈迦如来像」【神奈川】

凛々しさ際立つ釈迦如来像を独り占め

直立の像で縦の線が美しい。
直立の像で縦の線が美しい。

神奈川県厚木市。特にお寺の多い街でもないこの場所に立つ「妙傳寺」に、私の大好きな仏像がいます。(仏像好きは、「ある」ではなく「いる」と表現します)

観光寺ではないので、来訪の日時を事前にお寺に連絡して、お堂を空けておいていただきます。そのお堂に近づくと扉がやや開けられており、その隙間から暗い堂内を覗くと最初は外との明るさで、見えなかった仏像の姿が、目がなれるにつれてくっきりと浮かび上がってきます。

私が最初に見た時は、その姿が見えた瞬間に一人で来ていたにも関わらず「うぉぉ」と小さく声を上げました。

横から見ると衣の表現が際立つ。
横から見ると衣の表現が際立つ。

まず5mを超える大きさに驚きます。

そしてよくよくお顔を拝見すると、凛々しい面立ちと静かに半分だけ閉じられた目から瞑想の深さが伝わって来ます。

また、衣は木とは思えないほど流麗に彫られ、風にそよぐようなリズミカルささえ感じられるほど。大きいのに大味ではないという、私のもっとも好みなタイプの仏像です。

圓楽寺「役行者像」【山梨】

神木のエネルギーが露わになった役行者像

山の仏教の祖である役行者。
山の仏教の祖である役行者。

多くの仏師が切磋琢磨を繰り返してきた仏像。そのおかげであまりにリアルになり、仏像を前にしていると、それが木であることを忘れる瞬間が多々あります。

しかし、経年によって彫刻の跡が崩れていくと、木そのものがむき出しになり、極めてシンプルなエネルギーが私たちに伝わってくることがあるのです。

山梨県の「圓楽寺」に安置される「役行者像」。

遠くまで響き渡る咆哮が聞こえてきそうな表情。
遠くまで響き渡る咆哮が聞こえてきそうな表情。

おおよそ1000~800年前の作とされるこちらは、彫刻の細かい部分は失われていますが、その分、自然の迫力で迫ってきます。

それは、技術的な上手下手ではなく、これが元々は神木だったということを証明しているかのよう。

また、役行者は修験道(山伏)の祖であることから、山の厳しさを体現しているようにも見えますね。

想像以上にキャラクター豊かな仏像だったと思います。

これだけでは足りないほどに素晴らしい仏像が、日本全国にまだまだたくさん!

この記事を参考に、また皆さんの足でお出かけして素敵な仏像を見つけてみてください!

写真・文=Mr.tsubaking

仏像って気になるけど、なんだか難しそうだなと思っている方も多い様です。今回は、そんな皆様に向けて、仏像が素晴らしいお寺【ビギナー編】をご紹介。まずは難しいことなど考えずに、その見た目の美しさやカッコ良さに魅了されてください!(信仰の対象なので、敬意は忘れずに!)仏像を知れば、お出かけや旅のバリエーションがさらに増えるはずです!