秋はお月見にぴったりな季節 その理由は?
晴れてさえいれば月は季節を問わず見られますが、秋にお月見をする風習があるのは、大きく二つの理由があります。まず、秋になると空気中の水蒸気が少なくなり、空気が澄んできます。気温が高いほど空気中の水蒸気量は増えるため、暖かい春や夏は水蒸気のせいで、空がぼんやりとしがちです。春のおぼろ月も風流ですが、ちりや花粉などに邪魔されることがあるため、くっきりとしたお月様を眺めるには、カラッと乾いた秋の夜空の方が適しています。
それなら、太平洋側では冬の方がより澄んだ空気の中でお月見できるのではないかと思われるかもしれません。秋がお月見にぴったりなもう一つの理由は、月の高さにあります。月は季節によって見える位置が変わります。夏は空の比較的低いところに、冬は高いところにのぼります。冬の月は地上にいる私たちからはとても遠く感じられ、何よりじっくりお月見するには寒すぎることもありますよね。ほどほどの高さにあり、空気が乾いて過ごしやすい秋が最も月を見やすいといえるのです。
「中秋の名月」=「満月」ではない!?
「中秋の名月」に合わせて、お月見を楽しもうという人は多いと思います。「中秋の名月」とは旧暦の8月15日の夜に見える月のことで、2023年は9月29日に当たります。旧暦では7月~9月を秋と区分するため、ちょうど真ん中の8月を「中秋」と呼びます。中秋の名月のお月見は平安時代に中国から伝わった文化です。
お月見といえば、まん丸な満月のイメージがあるため「中秋の名月」=「満月」だと思われることがありますが、そうとは限りません。2023年は「中秋の名月」が「満月」となりますが、そうならない年もあります(たとえば、2024年の中秋の名月は9月17日ですが、満月は翌日の18日です)。
旧暦は月の満ち欠けの周期をもとにした暦で、簡単にいうと「昔のカレンダー」です。新月から月が満ちて、また次の新月を迎えるまでの約29.5日をひと月とします。新月の瞬間を含む日が「1日」で、ここから数えて15日目を「中秋の名月」と呼ぶのです。
ただし、実際には月の動きは一定でなく、満月になるまでの日数はその時によって微妙に変わります。新月から満月になるのに15日かかる時もあれば、かからない時もあります。このため、中秋の名月と満月はずれることがあるのです。
片見月は縁起がよくない? 少し欠けた月を愛でる「十三夜」のお月見
旧暦8月15日は農作業で忙しい時期と重なりやすかったため、日本では旧暦9月13日の「十三夜」にもお月見をする文化が生まれました。なぜ少し欠けた月の十三夜なのか理由は諸説ありますが、平安時代の法皇が月見の宴を開いたためという話が残っていて、十五夜と十三夜の両方の月を愛でないと縁起が悪いともいわれていたそうです。
現代の日本も中秋の名月の頃は秋雨前線が停滞し雨が降りやすい時期なため、月が雲に隠れてしまうこともあります。2023年の十三夜は10月27日です。10月はまだ台風が接近しやすい季節なので、確実にお月見できるとは言い切れませんが、せっかくなので両方のお月見を楽しみたいですね。
お月見散歩のおともに「月餅」はいかが?
秋の名月には異名があります。その時期に収穫される作物にちなみ、中秋の名月は「芋名月」、十三夜は「栗名月」と呼ばれます。何だかお腹が空いてくる名前ですよね。お月見にはお団子を食べるのが楽しみな人もいると思いますが、中国のお月見に欠かせない焼き菓子「月餅」をご存じでしょうか。
満月のように丸い月餅の薄皮の中にはぎっしりとあんこがつまっています。日本でも抹茶あんや栗あんなどの様々な月餅が売られています。ワンハンドで歩きながらでも食べやすいので、お月見散歩のおともにいかがでしょうか?
秋の夜長には、ゆったりと夜空を見上げながらお散歩を堪能しましょう。
写真·文=片山美紀 写真=写真AC
参考:
名古屋市科学館 Q.中秋の名月が、満月ではないのはなぜですか?
「ゆかいなイラストですっきりわかる ウサギの模様はなぜ見える?満ち欠けの仕組みは?素朴な疑問からわかる月の話 月のきほん」
白尾元理 誠文堂新光社