青空の旬の季節がやってきた!

ひとくちに晴れといっても、その空を生み出す高気圧の性質が違えば、まったく同じ見た目にはなりません。季節によって青空の色に違いが出るのは、高気圧の“生まれ故郷”に理由があります。

日本付近は、夏は南の海で生まれる太平洋高気圧に覆われますが、秋になると大陸で育った移動性の高気圧の圏内に入ることが多くなります。

そもそも空が青く見えるのは、さまざまな色が混ざった太陽の光のうち、波長の短い「青」が空気中で反射しやすいからです。ただ、空気中に水蒸気が多くなると、他の色も一緒に反射して混ざり合うため、白っぽく見えるようになります。

海育ちの高気圧は、水蒸気をたくさん含んだ湿った空気を運んできます。このため夏は空気中の水蒸気が増えて、晴れていてもぼやけた青空になりがちです。

夏は南の海上から太平洋高気圧に覆われる。湿った風が吹くため白っぽい青空に。 ※出典:ウェザーマップ
夏は南の海上から太平洋高気圧に覆われる。湿った風が吹くため白っぽい青空に。 ※出典:ウェザーマップ

一方、大陸出身の高気圧は、陸地から乾燥した空気を連れてきます。カラリとさわやかな秋風が吹くと空気中の水蒸気の量が減るため、秋は澄み切ったクリアな青空が広がります。

春も大陸育ちの高気圧に覆われますが、日射が強くなり始めるため気温が高くなります。暖かくなると上昇気流が生じやすく、地上付近のチリやほこりが舞い上げられるほか、黄砂や花粉が邪魔をするため空がかすみがちになるのです。

秋は大陸から移動する高気圧に覆われる。澄み切った青空が広がりやすい。 ※出典:ウェザーマップ
秋は大陸から移動する高気圧に覆われる。澄み切った青空が広がりやすい。 ※出典:ウェザーマップ

秋のお花見といえば……青空に映えるコスモス

澄んだ青空の広がるお散歩日和には、秋のお花見に出かけるのはいかがでしょうか。秋に楽しめる花といえば、漢字で「秋桜」と書くコスモスです。ピンクに白、オレンジ、黄色……色とりどりで鮮やかなコスモスは、濃いブルーの空によく映えます。秋のそよ風に揺れる姿もとても可愛らしいですよね。

しかし、花に嵐はつきもの。秋の序盤は台風の接近も多く、ひとたび風が強まればコスモスは一気に倒れてしまわないかと心配になりますよね?

実は、か細い見た目とは裏腹にコスモスは風に強い植物だといわれています。標高の高いメキシコの高原が原産地のコスモスは、吹き荒れる強風から身を守る必要がありました。

ここで役立つのがコスモスの持つ細い葉です。

線のように細い葉と葉の間には大きな隙間ができるため、強い風が吹いてもここを通り抜けていきます。このためコスモスはちょっとやそっとの風では倒れないのです。可憐な見た目をしながら意外に力強い。コスモスの持つギャップをお散歩しながら感じてみてください。

秋の日はつるべ落とし。絶景写真を撮るには早めの出発を

お散歩中に素敵な景色と出合えたら……せっかくなので写真におさめて大切な思い出として残しておきたいですよね。カメラを片手にお散歩するという人も多いと思いますが、秋から冬にかけては気に留めておいてほしいことがあります。

「秋の日はつるべ落とし」ということわざの通りに、秋は井戸のつるべが落ちるように一気に日が暮れます。東京の日の入り時刻は、2023年8月1日は午後6時46分でしたが、10月1日には午後5時26分と2か月で1時間以上も早くなっています。一年で最も日没が早い11月末から12月には、午後4時半前にはあたりが暗くなってきます。

昼過ぎには早くも日が傾き始めるため、青空に映えるコスモスのような絶景写真を撮影するには午前中に出発して早めに完了させたいところです。日が暮れるのが早まると、気温も一気に下がって寒くなるため、秋のお散歩はスタート時間を早く設定することを心がけてくださいね。

写真・文=片山美紀

 

参考:
国立天文台 各地のこよみ https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/
「もっと知りたい コスモス」 新樹社 赤木かん子