秋は雲の展覧会 「ゆきあいの空」って?

夏と秋の変わり目の今、気温によって体感がガラリと変わるため「きょうは何を着ていこうか?」と迷うことも多いのではないでしょうか? 私のクローゼットには夏服と秋服が混在しています。クローゼットと同じように、季節が移り変わる真っ只中であることは空を見てもよくわかります。空も衣替えを行っているかのように、雲の特徴に変化が現れ始めるのです。

 

まず、夏の雲と秋の雲の特徴を紹介します。

強い日差しが照り付ける夏は、地上付近の空気が暖められて、上昇気流が強まります。雲はどんどん盛り上がって背が高く発達していきます。モクモクとした「入道雲」は夏の代表的な雲です。

夏の雲は立体的でモクモクとしている。
夏の雲は立体的でモクモクとしている。

秋になると、次第に気温が低くなるため、夏に比べて雲の成長が抑えられます。さらに、日本の上空でだんだんと偏西風が強まるため、薄く水平に広がる雲になりやすいのです。

秋の雲は薄く横へと広がっていく。
秋の雲は薄く横へと広がっていく。

こうした夏の雲と秋の雲が空に同居していることがあります。綿菓子のように膨らんだ立体的な雲に混じって、空高い場所に薄くのびる雲が見られる……。こんな空のことを「ゆきあいの空」と呼びます。夏の雲と秋の雲が互いに行く道をゆずり合うように空をただよう様は、今だからこそ見られる光景です。

夏の雲と秋の雲が同居する、ゆきあいの空。
夏の雲と秋の雲が同居する、ゆきあいの空。

秋に出会いやすい雲 「いわし雲」と「ひつじ雲」の見分け方は?

秋によく見られる雲としてイメージが強いのが「いわし雲」や「ひつじ雲」です。どちらも空の高いところにでき粒々で丸い見た目をしていますが、発生する高さには違いがあります。「いわし雲」とは巻積雲のことで、高さ約5000~10000mの位置に現れる雲で、「うろこ雲」と呼ばれることもあります。

「ひつじ雲」はいわし雲やうろこ雲より低い2000~7000mの位置にでき、より大きく見える高積雲です。いわし雲より密度が濃いため、はっきりとした白色になり、雲の底には影が見えます。

空には”大漁”のいわし雲が広がる。撮影:高橋和也
空には”大漁”のいわし雲が広がる。撮影:高橋和也
まるでひつじの大群が駆け巡っているような風景。
まるでひつじの大群が駆け巡っているような風景。

いわし雲とひつじ雲を簡単に見分ける方法があります。腕を空にのばして、人差し指を雲に当ててみてください。ひとつひとつの雲が指先からはみ出る大きさなら、ひつじ雲です。小指を重ねて雲の中におさまれば、いわし雲だといわれています。

心地よい秋の空気の中、いつまでも見ていたくなりますが、どちらも低気圧や前線が近づいているときに見られる雲で、天気が下り坂のサインです。お散歩中に見かけたら、天気予報を確認して雨への備えをしておきましょう。

覚えておくと安心 天気が崩れることがわかる“空のサイン”

天気が崩れることを知らせてくれる雲はほかにもあります。たとえば、飛行機雲。高い空に飛行機が通った道筋をたどるようにのびる雲を見たことがある人は多いと思います。これは、飛行機のエンジンから出た水蒸気などが冷えて雲になったものです。

飛行機雲が空に長く残っているときは、低気圧や前線が近づいて空気が湿ってきていると考えられます。このため、飛行機雲がなかなか消えないときは、天気が崩れるサインといえます。

反対に、すぐに消えてしまうときは空気が乾燥しているため、このあとも晴れることが多いです。

飛行機雲を見つけたら、空に残る時間もチェック。出典:写真AC
飛行機雲を見つけたら、空に残る時間もチェック。出典:写真AC

雲のほかにも「ハロ」と呼ばれる現象も天気が崩れることを教えてくれます。ハロとは、太陽や月を中心にしてできる光の輪のことです。雲をつくる氷の粒に光がぶつかり反射することででき、低気圧や前線が近づいて薄い雲が空に広がるときに見られることがあります。

ハロは季節を問わず見られる。太陽を直視すると目を傷めるため、建物や手で太陽を隠して見上げて。
ハロは季節を問わず見られる。太陽を直視すると目を傷めるため、建物や手で太陽を隠して見上げて。

少しずつ猛暑が和らぎ、気持ちよくお散歩を楽しめる秋がやってきました。まだまだ残暑には注意が必要ですが、そろそろ日傘を置いて、じっくりと空を眺めるお散歩を楽しみたいですね。

写真・文=片山美紀

 

参考:
「散歩が楽しくなる 空の手帳」 東京書籍株式会社 森田正光
ウェザーニュース うろこ雲とひつじ雲を一発で見分ける方法とは?
https://weathernews.jp/s/topics/201709/140195/