元和3年(1617)、浄土真宗本願寺派の関東の拠点として創建された築地本願寺。インドの古代仏教建築を思わせる現在の本堂は、関東大震災のあと、昭和9年(1934)に再建されたものだ。堂内には約2000本もの管で構成されたパイプオルガンを設置。でもなぜ、寺にパイプオルガンが?

元々浄土真宗には「仏教讃歌」というものがあり、音楽による布教も盛ん。2006年以降は定期的にコンサートが開かれ、あらゆる人が聴きに来るようになった。専属オルガニストが慎重に、時にダイナミックに奏でる音色は、仏教を知らずに立ち寄った観光客の旅の疲れも洗い流す。このパイプオルガンは1970年に仏教伝道協会から寄贈され、建設時には周囲にたくさん流れていた水路から資材が運び込まれたとか。

開放的な境内には、仏教を知るためのヒントが点在。参加自由の法話会も頻繁に催され、手ぶらで参加してOKだ。『築地本願寺カフェTsumugi』には、僧侶が選んだ書籍が並ぶ。

ランチタイムコンサートで心の洗濯をしてから法話会で僧侶の話を聞き、カフェでのんびりしながら脳内を整理……。境内の中であちこちハシゴして、楽しみながら学んでいこう。

illust_2.svg

【音楽】ランチタイム パイプオルガンコンサート

本尊と一緒に聴く癒やしの音楽

定期的に開催され、ほぼ満席(入場無料)。重厚かつ柔らかいパイプオルガンの音色が本堂に響き渡り、まるで全身を優しく包まれているよう。ときにはオペラ歌手との共演もあり、曲目は荘厳な仏教讃歌からクラシックの歌曲、現代のポップスと幅広い。ふらっと普段着で聴きに来られる雰囲気もうれしい。開催スケジュールなどの詳細は公式HPで確認。

 

【仏教】法話会(常例布教)

お坊さんの話で仏教の世界に触れる

インフォメーションセンターの多目的ルームで毎週末開催され、30~40分ほど説法を聞くことができる(参加自由)。僧侶によって法話のスタイルはさまざまで、なかでも高座の上で落語のように抑揚をつけて語る節談(ふしだん)説教は、初心者にも面白い。推しの僧侶を見つけて通ってみるのもいいかも。開催スケジュールなどの詳細は公式HPで確認。

 

【読書】築地本願寺カフェTsumugi

本と料理で体の内側から整う

30品目のバランスブッダボウル1430円(味噌汁付き)。+418円でドリンクセットに。
30品目のバランスブッダボウル1430円(味噌汁付き)。+418円でドリンクセットに。

仏教や浄土真宗にちなんだメニューが食べられるカフェ。2017年、建物内にインフォメーションセンターを開設する際にこちらもオープンし、2022年11月にブックカフェにリニューアルした。入り口付近には阿弥陀如来の四十八願になぞらえた48冊の書籍を用意。誰でも自由に閲覧できる。

住所:東京都中央区築地3-15-1築地本願寺インフォメーションセンター
/営業時間:8:00~17:00LO(モーニングは~10:30)/定休日:無/アクセス:地下鉄日比谷線築地駅直結

【美術】酒井抱一の墓

武家の出ながら市井で生涯を終えた絵師

江戸時代後期の絵師。姫路初代藩主の酒井忠恭(ただすみ)を祖父に持ちながら、40代から尾形光琳への傾倒を強め、江戸琳派を打ち立てた。寛政9年(1797)、江戸下向中だった京都・西本願寺文如上人のもとで出家し、等覚院文詮暉真と称した。

オフィシャルショップ

カフェに併設され、仏教に関連する品々がずらり。オリジナルの香袋やポストカード、本堂の意匠をモチーフにした手ぬぐいは、来院記念のお土産にぴったりだ。他に、和の雑貨、仏教や日本文化にまつわる書籍も。

illust_2.svg

築地本願寺

地下鉄日比谷線築地駅からすぐ。参拝は6:00~16:00(カフェなどの営業時間は施設によって異なる)。東京都中央区築地3-15-1  フリーダイヤル0120-792-048(コンタクトセンター)

取材・文=信藤舞子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2023年9月号より

朝ごはんの定番といえば、日本じゃ、ごはんと味噌汁だが、各国料理店のなかには、ご当地の味を朝から用意する店も。ひととき、世界の朝へトリップしたい。