昭和43年からひばりヶ丘で営業を続ける『大清かまぼこ店』

西武池袋線のひばりヶ丘駅を降りてすぐにある一番通り商店街。以前に比べて店舗数を減らしているが、まだまだ魅力的な商店が営業している。

『大清かまぼこ店』は駅から200m、徒歩3分ほどの場所で営業している。ひばりヶ丘を代表するお店であるが、西東京市で唯一のおでん種専門店でもある。

店主は北区十条の「蒲和」(かまわ、閉業)で修業をした後、昭和43年(1968)に『大清かまぼこ店』を開店した。「蒲和」では常に7、8名の職人たちが働いていたそうで、その多くが独立していった。墨田区京島にある『大国屋』の二代目店主も3年ほど働いていたという。

お店の正面には手づくりの揚げ蒲鉾がたくさん並んでいる。夏季は数を減らしているが、それでも15種類ほどある。どの種も工夫を凝らしており、量販店ではお目にかかれない手づくりの魅力にあふれている。季節限定のものもあるので、何度も足を運んでこまめにチェックするといいだろう。

正面向かって左には揚げ蒲鉾以外のおでん種が並んでいる。専門業者から仕入れることが多いが、『大清かまぼこ店』では手づくりのものが非常に多い。

たとえば、全国蒲鉾品評会で第56回農林水産大臣賞を受賞した上半ぺん。年々手づくりのお店が減るなかで、アオザメとヨシキリザメといった伝統的な原料を用いている。

紅白だんご、ロールキャベツ、つみ入、すじも手づくりだ。注目は白菜と人参、白滝、お肉、餅が入った袋詰で、豊かな味わいと芸術的な美しさを兼ね備えている(秋から春までの販売)。

板付蒲鉾は小田原から仕入れているが、「蒲和」での修業時代は手づくりしていたそうだ。年末には伊達巻となると巻、栗きんとんを手づくりしている。

さて、今回の主役となるできたておでんはセットとして販売している。あらかじめ調理したおでんを鍋で煮て、袋に入れて提供される。訪れたときは準備中だったが、10分ほど待つと購入できた。

商品を手にしてからしばらく店主とおかみさんと雑談をしていたが、おふたりともとても親切で笑顔が素敵だった。おかみさんによると、かつて一番通り商店街では8月の終わりに夏祭りを開催していたが、新型コロナウイルスが流行後は開催を取りやめてしまったそうだ。お祭りの際はおでんを1串100円で提供しており、客足も上々だったという。おかみさんは「にぎやかな催しだったのに残念」だとおっしゃっていた。

一番通り商店街の名店たち

できたておでんを手にしてから一番通り商店街を歩いていると、興味をそそるお店がいくつか見つかった。立ち寄って買い物を楽しんでみよう。

最初に訪れたのは『旭製菓』というお菓子屋さんだ。大正13年(1924)にかりんとうを販売し、全国菓子大博覧会で4回連続で名誉総裁賞を受賞している。

本社はひばりヶ丘の隣駅となる保谷にあるが、『旭製菓』のかりんとうは西東京名物として知られている。購入した「きんぴらごぼうかりんとう」はごぼうの香りと七味唐辛子のアクセントがクセになる一品で、お酒のお供に最適だ。このほかにもさまざまな味のかりんとうが揃っているので、ぜひお試しいただきたい。

うどん製麺の『栄屋うどん店』も興味深い。店内で食事できるが現在は取りやめているという。お持ち帰りはできるのでのぞいてみると、機械打ちの細うどんやそば、手打ちの田舎風うどんを選ぶことができた。

今回は地元の人たちに人気の田舎風のうどんを2玉購入した。適度なコシがあり、小麦の豊かな風味も感じられる。60年ほど歴史があり、初代店主が地元である所沢のうどんを再現したのがはじまりだという。

『大清かまぼこ店』のできたておでん

帰宅したら、早速『大清かまぼこ店』のおでんを味わってみることにしよう。おでん種は12種類も入っていた。

時計回りに12時から、こんにゃく、さつまあげ、えび揚げ、焼ちくわ、ちくわぶ、結び昆布、京がんも、しゅうまい巻、上半ぺん、大根(中央上)、玉子(中央右)、揚げボール(中央左)。

定番の種はしっかり網羅してあり、揚げ蒲鉾の種類も充実している。手づくりのはんぺんが入っているのもうれしいところだ。

おでんは温めるだけですぐに食べられる。味もしっかり染みているのであらためて煮込む必要はない。

上半ぺんはしっとりふわっとした食感だが、同時に魚のすり身のねっとりとした舌触りが感じられる。うまみが濃厚でほかのはんぺんとは一線を画すおいしさだ。

大根は厚切りながら中までおでん汁が染み渡り、口に含むと汁がたっぷりあふれてくる。ほろほろと崩れる食感もたまらない。

玉子は表面がほのかに褐色に染まっているが、フレッシュでマイルドな味わいをとどめている。この絶妙な煮加減は家庭ではなかなか再現できないだろう。

さつまあげは魚のすり身のみを使用した揚げ蒲鉾だ。ほどよい弾力を残しており、噛めば噛むほどうまみを感じることができる。

しゅうまい巻は焼売をまるごと魚のすり身で包んだ贅沢な種だ。おでん汁で柔らかくなった焼売と、ほどよい弾力のすり身のバランスが絶妙だ。

えび揚げは桜エビがたくさん練り込まれていてとても華やかな印象だ。ほのかにエビの香ばしさが漂い、非常に上品な味わいだ。

揚げボールは玉ねぎなどが練り込まれている。食べやすいサイズに仕上げられているが、魚のうまみが詰め込まれている。

ちくわぶはほどよい煮加減となっており、もちもちとした食感を楽しめる。小麦のおいしさも感じられ、ちくわぶファンでなくともぜひ味わっていただきたい。

焼ちくわは青森県のイゲタ沼田竹輪工場のものだ。肉厚でしっかりとした食感で、煮ても魚のうまみがちゃんと残っている。

京がんもはひとくちサイズのがんもどきだ。おでん汁をたっぷりと含んでいるので火傷しないように要注意だ。弾力のある食感で、豆腐のうまみもしっかりしている。

定番のこんにゃくも入っている。ぷるんとした食感がありながらもほどよく煮込まれており、汁と絶妙に絡む。

結び昆布は柔らかく煮てあり、とろりとした食感と磯の香りが心地よい。脇役的な位置付けだが、おでんになくてはならない存在だ。

『大清かまぼこ店』は創業から現在まで店主が手づくりの変わらぬ味を守り続けているが、ご子息が後を継いで親子二代で営業している。インターネット通販を始めたのも二代目なのだが、商品が豊富で非常に便利だ。できればお店に直接訪問していただきたいが、遠方の方は利用してみるといいだろう。

『大清かまぼこ店』の基本情報

大清かまぼこ店
〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北4-2-25
042-421-7990
定休日:日曜
営業時間:10:00~19:00

取材・文・撮影=東京おでんだね