子年生まれの守り本尊「千手観音」
観音菩薩はもともと、人間と同じく顔が一つで手が二本の姿で、このプレーンな観音菩薩を「聖観音」と言います。
それが、どんな人でも救えるよう、顔や手が増えたりして、33の姿に変身するようになります。その変身パターンの一つが「千手観音」。
なんだか、ヒーローものみたいでかっこいいですね!
千手観音には、その名の通り手がたくさんありますが、1本の手で25の生き物を救えるとして、40手で作られることが一般的。
また、手だけでなく世の中全体を見渡せるように、頭上に11の顔もついています。
都内で千手観音をご本尊とするお寺としては、上野公園の清水観音堂など。
全国では、京都の観光名所でもある三十三間堂のご本尊も千手観音です。
さらに、大阪の葛井寺や奈良の唐招提寺では、実際に千本の手を持つ千手観音が祀られており必見!
丑・寅年生まれの守り本尊「虚空蔵菩薩」
虚空蔵(こくぞう)とは、無限の空間という意味です。
そこから、虚空蔵菩薩は、悟りに至る才能とノウハウをその広い空間に満たすほどの智慧を持っているとされます。
姿としては、宝冠を被り坐禅のように足を組んで座っています。また、知恵の象徴である剣を持つ像例も見られます。
子供の成長を喜ぶ行事として全国的には七五三がおなじみですが、関西では「十三詣り」もポピュラーです。
これは、かつて13歳が大人の入り口と考えられていたことや、13歳が初めて厄年を迎える年齢であることなどから、大人としての知恵を授かり厄除けをしてくれる虚空蔵菩薩にお詣りするようになりました。
都内では、目黒不動尊の境内の石仏や、『東京国立博物館』で虚空蔵菩薩の仏画(国宝)を見ることができます。
卯年生まれの守り本尊「文殊菩薩」
「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがある通り、学問の神様として合格祈願をする人も多いのが「文殊菩薩」。
象徴的なエピソードが、次のようにお経の中に残っています。
“仏教界で最高に頭の良い維摩(ゆいま)という人物が病に臥(ふ)した時、お釈迦さまは精鋭10人の弟子に、見舞いに行くよう命じます。しかし、弟子たちは維摩との議論に負けることを恐れて、誰も行こうとしません。
そこで、文殊菩薩が見舞いに行き、維摩と同じレベルで議論を交わしました。”
その議論は、最高レベルのフリースタイルラップバトルのようだったのかもしれませんね。
智慧を象徴する剣を持ち凛々しいお顔をした像例が多いのが文殊菩薩ですが、何と言っても獅子に乗っているのが特徴的です。
都内では世田谷観音に、太宰府天満宮(こちらも学問の神様)から持ってきた文殊菩薩が祀られています。
辰・巳年生まれの守り本尊「普賢菩薩」
千手観音などと比べれば、あまり知られていない「普賢菩薩」ですが、釈迦如来が三尊形式で祀られる場合は、文殊菩薩とコンビを組んでお釈迦様の両脇に控えます。
文殊菩薩が、お釈迦様の智慧を担当するのに対し、普賢菩薩は慈悲心(平たく言うと、優しさや愛情)を担当します。
さらに、心の安定を司る菩薩であるため、穏やかに暮らしたい辰・巳年の方にはピッタリですね!
姿としては、文殊菩薩が獅子に乗っているのに対し普賢菩薩は白象に乗ります。
都内では『東京国立博物館』に普賢菩薩の仏画(国宝)が所蔵されています。
午年生まれの守り本尊「勢至(せいし)菩薩」
勢至とは偉大な力という意味です。その力で、地獄に落ちそうな人を救うとされています。
人間誰しも、後ろめたいことの一つや二つはありますよね。
そんな人でも、勢至菩薩は地獄に落ちないよう救おうとしてくれます。
単独で祀られることの少ない仏ですが、阿弥陀如来が三尊形式になる際は、あの観音菩薩とコンビを組んで脇を固めます。
宗派を問わず古くから日本人の拠り所となってきた善光寺(長野県)や、世界遺産にも認定されている中尊寺(岩手県)でも、阿弥陀三尊のメンバーとして勢至菩薩を拝観することができます。
未・申年生まれの守り本尊「大日如来」
弘法大師(空海)が開いた真言宗において、最高仏とされるのが「大日如来」。
どれくらい最高かというと「他の仏はすべて、大日如来の一部」というほど!
姿としては、忍者ポーズのような智拳印(ちけんいん)を結び座っています。
さらに、如来は悟りを得た存在で欲望から離れているので、質素な身なりのはずですが、大日如来はそれを乗り越えて、宝冠をかぶるなど“逆に”着飾っているのです。
都内では『半蔵門ミュージアム』で、ニューヨークのオークションで14億円もの値がついた、運慶作と推定される大日如来像が、無料で拝観できます。
酉年生まれの守り本尊「不動明王」
怒りの表情を浮かべる仏像の代表格といっても良いのが「不動明王」。その表情は、仏の優しさだけでは、救いきれない人々まで、強い気持ちで救おうとする気持ちの表れです。
大日如来のもう一つの姿とも言われ、明王の世界でも中心の存在。
燃えさかる炎のような光背(仏像の後ろにつけられる装飾)を背負い、弱い心を断ち切る剣と、どんな人でも引っ張ってすくい上げる縄を持っています。
都内では、日野市の高幡不動尊金剛寺で高さ3m近くにもなる迫力満点の不動明王を拝観することができます。
戌・亥年生まれの守り本尊「阿弥陀如来」
死んだ後どうなるかってわからないので、怖いですよね。
しかし「どんな人でも、死んだ後に極楽に連れて行くんだ!」と強い決意を持っているのが「阿弥陀如来」。
地獄に対して極楽という世界がありますが、阿弥陀如来はここの大家さんみたいな存在なのです。
日本の半分以上のお寺で阿弥陀如来が本尊とされているほど、超人気者!
姿としては、如来らしく螺髪(パンチパーマのようなヘアスタイル)に質素な着衣。
OKポーズのような印相を表しているのが特徴です。
「鎌倉の大仏」も阿弥陀如来ですし、十円玉の裏にも描かれる平等院鳳凰堂のご本尊としても阿弥陀如来を拝観することができます。
ご自身にゆかりのある守り本尊はわかりましたか?
自身の干支だけでなく、初詣などでその年の干支が祀られているお寺に出かけると、きっとより一層、よいお出かけになるはずです!
写真・文=Mr.tsubaking