駅前の商店街から離れた行列店

赤字に白い文字の看板がなければ見逃してしまうほどシンプルな外観。
赤字に白い文字の看板がなければ見逃してしまうほどシンプルな外観。

江古田駅北口から徒歩7分。『麺や 金時』は練馬区と豊島区の境にある。店舗の立地的には決していいとはいえないが、開店前から行列ができ、土曜や休日には20人を超える行列ができるという人気店だ。
店主の山口貴真さんは、「私は千葉県銚子市の生まれで、東京に進出するときに、この街は大学が3つもあるので学生をはじめとした人が多いだろうと思い、ここに出店を決めました。でも、実際に現地に来てみると、周囲にあまりお店がなく、住宅地だとは思いませんでした」と笑いながら話す。

鶏の旨味が凝縮した透明なスープ。しなやかな麺も食べていて楽しい

見るからに美しい塩らぁ麺。食べるのがもったいなくなるほどのビジュアルだ。
見るからに美しい塩らぁ麺。食べるのがもったいなくなるほどのビジュアルだ。

入り口近くにある券売機で、評判が高い塩らぁ麺1050円を購入。
丼が到着すると、澄み切ったスープに魅了される。麺が見えるのはもちろん、底まで見えてしまうほどの透明度がある。「鶏本来の旨味を最大限に活かしました」というスープを飲んでみると、シンプルな見た目とは裏腹に、鶏の複雑な味わいが感じられ、鶏油のコクが加わって、より旨味が広がる。
山口さんは「ブランド鶏ではなく、ラーメンスープによく合う鶏を選びました。ラーメン好きの方の中には、ブランド鶏を使用すればおいしいと考える方もいますが、ブランドに惑わされるのではなく、純粋に鶏のおいしさを感じていただければと思います」と話す。
麺はしなやかな中太ストレート。スルスルッと口の中に入っていき、スープとの一体感は素晴らしい。

三河屋製麺の特注麺を使用。通常のラーメンより1cmほど長くしているため、スープとの絡みもいい。
三河屋製麺の特注麺を使用。通常のラーメンより1cmほど長くしているため、スープとの絡みもいい。

塩らぁ麺がさらにおいしくなるトッピングもいい

エビ団子や長く切られた万能ネギなど、ほかではなかなか出合えないトッピング。
エビ団子や長く切られた万能ネギなど、ほかではなかなか出合えないトッピング。

トッピングも秀逸。鶏チャーシューは、しっとりとして柔らかく、鶏の旨味が凝縮されたスープとともに味わえば、さらに味わい深くなる。穂先メンマはしっかりとした味わいと、シャキッとした歯ざわりがいい。

ラーメンではあまり見ることがない団子にも注目しよう。これは「エビを練り込んだ団子です。元々、中国料理店で修業をしていたので、その技術を応用して作りました」と山口さん。食べてみると、ふわふわの中にプリッとした食感があり、エビの風味が広がる。
ネギも特徴的。万能ネギを小口切りにせずに長めにカットしている。こうすることによって、万能ネギの辛味や甘みを感じられるという。「私の個人的な感想ですが、輪切りにしたネギだとスープのみを飲むときにジャマに感じるときがあります。ですので、長めにしてスープの飲みやすさだけでなく万能ネギでの味の変化も楽しんで欲しいです」と山口さんは話してくれた。

日々進化し続ける2つのラーメン

店主の山口貴真さん。
店主の山口貴真さん。

塩らぁ麺のほかオススメだというのが、汁なし担々麺1000円。モチッとした中太麺の上には甘辛く味付けした挽き肉がのる。絡める真っ赤なタレは、花椒(かしょう)をはじめとしたスパイスが効いていて、見た目通りのシビ辛だ。辛いもの好きならきっと口に合うはず。

山口さんは「これまでに培ってきた中国料理の技術を生かしたラーメンを作っています。塩らぁ麺は、ほかではなかなか食べられない味わいだと思いますので、ぜひ一度食べてみください。日々研究を重ねているので、同じラーメンでも次に食べるときはさらにおいしくなるように研究をしています」と話してくれた。

カウンター7席と小さいながら多くの人を魅了するラーメンを提供する。
カウンター7席と小さいながら多くの人を魅了するラーメンを提供する。

透明感があるが素材の旨味が絡み合った塩らぁ麺と、ガツンとした辛味としびれを感じる汁なし担々麺。両極端のラーメンだが、両方とももさまざまな賞を受賞するほどの一品。さて、あなたの好みはどちら?

住所:東京都練馬区小竹町1-2-7/営業時間:11:00~14:15・18:00~19:45/定休日:月・日/アクセス:西武鉄道池袋線江古田駅から徒歩7分

取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン