ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は「ピエール瀧の23区23時 2020-2022」(産業編集センター)。

ほぼ等身大の鬼太郎の像を見に来るだけでも、価値がある

水木先生が、調布市にずっと住んでたんだよね? 水木プロもここにある、と。でも、俺はここに来る権利あるよ!「モノノケダンス」(2008年にリリースされた電気グルーヴのシングル)のジャケットも、水木先生に書いてもらったからね。アレは京極夏彦先生も褒めてくれたんだから(笑)。

――では、入ってみましょうか。公園の石銘板の裏に、開園協力者がたくさん書いてありますね。

これは何、クラウドファンディングじゃないけど、お金出してくれたってことか。個人もいれば、靴屋さんとか不動産会社もあるな。

何か目立つ人、知ってる人とかいるかな? 1人ぐらいいそうだけど……いないか。でもこういう人たちの尽力で、ここにできましたよと。

――そして早速、鬼太郎の像がありますね。

ちゃんと「寄贈東映アニメーション株式会社」って書いてあんね。それにさ、ちゃんと水木タッチじゃん。テレビアニメじゃない方っていうか。しかもこれ等身大じゃない?

――鬼太郎は身長130㎝なんで、そうですね。ほぼ等身大じゃないでしょうか。

だとしたら、このクオリティのフィギュアを見に来るだけでも、価値あるよね。いやでも分かるわ、さっきから写真撮りに来てる人とかいるもんね。パッと見、公園ていうか「フィギュア置いとく場所」って感じだな。

――瀧さんが『ゲゲゲの鬼太郎』を初めて観たのっていつですか?

小学生の頃。漫画じゃなくてテレビアニメの方だけど。鬼太郎がさ、黄色と黒のしましまのカマボコにされちゃう回だったんだよ。それをすごい覚えてる。やっぱその、ヒーローが負けたりとかされるとショックな上に、カマボコにされちゃうっていうのが衝撃で。でも、水木先生の漫画で一番好きなのは『のんのんばあとオレ』かな。結局、水木先生自身が一番面白くない?っていう。あのベンチに座ってるのは何?

――やまびこですね。

で、ここに座ってるのは、ぬらりひょんか。

ぬらりひょんは渋すぎない? 他はみんな人懐っこそうなやつなのにさ。

―― 一応、妖怪たちの親玉ですから。

そうだけどさ。でも、藤棚になってるのはポイント高いよ! この公園、あんまりベンチないよね。だから、おじいちゃんおばあちゃんが孫を連れてきたとき、もうここに座って子供を見とく、と。そうなるとはまりますねっていう。お、こっちには河童の三平が! これもよくできてるね〜。

なじみのない子供からしたら、押し売り感が否めない?

そしてハイ、来ましたぬりかべ。

クライミングできる様になってんね。秒で頂上だけど(笑)。ぬりかべってさ、身長どんなもん?

――大きさを自在に変えることが出来て、最長3mまで体を伸ばせるみたいです。

そっか、それならこんなもんか。これ、後ろもよく出来てる。ぬりかべの後ろなんて見ることないからいいね。まあでも、やっぱただの壁なんだな(笑)。お、水場に、妖怪が遊んでた跡があるね。サングラス、箸、アイスの棒、反射板……。なんかほら、無垢な妖怪が集めそうな感じがする。

――こっちがトイレなんですけど、ここもねこ娘がいたり、ねずみ男がいたり。色々キャラクターが外壁に描かれてます。

本当だ。で、ここが鬼太郎の家か。

――家が滑り台になってて、ちゃんと妖怪ポスト5もありますね。

そういえば調布駅の近くにさ、妖怪ポストの形した郵便ポストあるよね。

俺、車で通った時に見たことあるもん。これ家入れるのか、ちゃんと目玉おやじもいるね。ここは雨宿りにいいわー。災害のときの避難所になったときに、誰がここ取るんだろう? そうなったら本部だろうねここは。

――でも「飲酒・喫煙禁止」って書いてありますね。そりゃそうか。

そうね、いい感じに日陰もあるし、地元の子とかが夜集まっちゃいそう。そして最後が、一反もめん。これはベンチ? これいいね! 立ってもいいし、座ってもいいけど、やっぱまたがるのが一番だよね。
そんで、あそこから京王線が見えるわけか。調布駅って、地下にもぐるの?

――2012年に地下化されました。

そうなんだ。てことは、俺たちは線路の上で遊んでる、ってことになんのか。電車好きな子供は、ここから見ると楽しいだろうね。ちょっとでも、さすがにここまでやられたら、子供にしてみたら「鬼太郎」の押し売り感が否めないかも(笑)。今の子供、鬼太郎のアニメまでなかなかたどり着かないんじゃないかな?

――ただ、今年(2023年)の秋も『ゲゲゲの鬼太郎』新作アニメが公開されるみたいですけどね、映画で。

現代版? へー。ここはじゃあさ、やっぱコスプレして遊びに来るべきだよね。3、4歳の男の子を持つ親は、速攻で黒と黄色のチャンチャンコを作ってさ。下は普通の服だから、ユニクロとかのグレーのシャツと短パンでいいじゃんか。それで下駄履かせて、ここに連れてきて写真を撮ると。これじゃない? 女の子だったら、ねこ娘の格好さしてさ。リボンと赤いスカート履かせて連れてきて、それで写真撮るといいんじゃないの。そんで、大人はどの格好で来るべきかな?

――やっぱ、あの出っ歯のサラリーマンじゃないですか?

スーツ着て、丸い眼鏡して、っていう水木キャラの口がこうとがってるヤツね!そうだね。そういう、水木キャラのやつで来ればいいんじゃないかな。

鬼太郎ひろば Data

ミュージアム度      ★★★★☆
フォトジェニック度    ★★★★☆
コスプレ子供と来たい度  ★★★★★

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:なし  灰皿:なし

※駐車場なし

住所:東京都調布市下石原1-58-5/営業時間:入園自由/定休日:入園自由/アクセス:京王電鉄京王線調布駅から徒歩12分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2023年7月号より