こだわりの酒と肴を提供する居酒屋。ランチタイムは行列ができる
節約が叫ばれている昨今。だが、ランチこそしっかり食べて十分に働き、仕事の成果に反映したい。そんななか、おいしくてボリュームもあり、なおかつ値段も良心的というのがここ『いもたろう』だ。
オーナーの武田雄さんに話を聞いた。「ここは2006年にこだわりの芋焼酎が飲める居酒屋としてオープンしました。今は芋焼酎だけでなく、希少な日本酒やビールも置いていますよ。昼はよくある居酒屋ランチを提供しています」。
『いもたろう』という店名は、当時提供していた芋焼酎や芋料理にちなみ、「自分が埼玉出身なので、地元名産のサツマイモというのもあります」と言って笑う武田さん。
名刺を拝見すると、『いもたろう』のほかにベトナム・ホーチミンにも姉妹店がある。「ご縁があってお声かけいただき、ベトナムでも居酒屋のような店を出しています」。日本に姉妹店はなく、いきなりホーチミンなのが面白い。
武田さんは、和食を中心にしたいろんな店でエリアマネージャーや店長も経験したのち、共同経営者とともに28歳で『いもたろう』をオープンしているが、「思えば学生時代からず〜っと飲食関係の仕事をしていますね」といって笑う。この店には、さまざまな経験が落とし込まれているのだ。
学生時代のバイトは楽しかった思い出が多いようで、「年上の人と出会っていろんな遊びを教えてもらったり、おいしいお料理屋さんに連れていってもらったり。とくに飲食店で働いているからそういう出会いや経験をさせてもらえたんじゃないかと思っているんです。だから、今の従業員にもお客さまや同僚との出会いを大事にしなよ、とよく言っているんですよ」。
人のつながりを大切にしている武田さんだからこそ、五反田のランチ戦争でも勝ち組として君臨しているのだろう。
いろんなメニューを出してきたなかで人気の定食ベスト7が定番メニューに
では、いよいよ定食をいただいてみよう。それぞれごはん、味噌汁、香の物がつき、メニューの下に「芋太郎自家製スパイシーカレートッピング無料」と書いてある。ムムムッ、これはうれしいサービスだ。
全部食べてみたいけど、この日の日替わりランチ850円が豚の生姜焼きとチキン南蛮だというのでコレにした。どちらも筆者の大好物だからだ。武田さんが「ごはんはどうしますか? 大盛(300g)か大大盛(400g)までは無料ですけど」という。残したくないので普通盛りにし、カレーをつけてもらうことにした。
最初はチキン南蛮から。大きなタッパーに唐揚げのタネがたっぷり仕込まれていた。
赤ちゃんのげんこつ大の唐揚げがふたつ。最近はコスト削減で胸肉の唐揚げを提供するところも増えてきたが「やっぱり唐揚げはもも肉がうまいですからね。そこにはこだわりたいですね」と武田さん。
続いて豚の生姜焼き。たっぷりの豚バラ肉に玉ねぎ、ニンニク、特製醤油だれをたっぷりからめていく。鍋肌にかかった醤油が熱され、食欲をそそる香りがしてきた。
オーダーから5分程度であっという間に完成。トレイに乗った定食がドーンとテーブルにやってきた。自由に飲めるテーブルの麦茶をひと口含んでいざ実食だ。
まずはチキン南蛮から。カリッとクリスピーなのに中はジューシーで、甘酸っぱいソースがよく合う。味が濃いめなのでご飯が進む。失敗した〜、もう少しご飯をもらっておくべきだったかも。
ショウガがたっぷり入った豚の生姜焼きでも当然ながらご飯をパクパク。そりゃもう、ノールックでパクパク。
おかずを半分くらいまで食べると、カレーがまだなのに白米はもう底がつきそう。ルゥだけすくって食べてみると、口当たりはマイルド。甘口なのね……と思いきや、スパイスが効いているからじんわりと辛くなってきた。ああ、これもやっぱりご飯に合うんだなぁ。
少々おかずが余ってしまったのだが、千切りキャベツと一緒に食べてフィニッシュ。ごちそうさまでした。「いや〜、ご飯が足りなかったッス!」と伝えたところ、「え、プラス100円でごはんのおかわりができたのに。だいたいのお客様は、おかわりをしてカレーでもう1杯食べるんですよ」。えー、そうなのー⁈ 次からは躊躇なく最初からご飯を大盛りにしよう。
サラリーマンたちの救世主。連日行列の500円弁当
昼は店頭では弁当も販売し、行列ができるほどの人気だ。「正直、今ウチの売上は夜より昼のほうがいいんですよ」と武田さんはいう。
「お弁当をはじめたのはコロナがきっかけでした。ランチもお客さんが来なくなって、周囲のオフィスに従業員みんなでお弁当の営業に回ったんですよ。今は月極のお得意様もできましたし、店頭で売るのも含めると毎日最低300個。さらに増産することもあります」と武田さんはにっこり。
「またコロナ渦のようなことになっても、弁当が売れるんです」。それだけに、ご飯を炊くことと配達は人に任せず、自ら行うのがこだわりだ。「デリバリーを請け負ってくれる会社もありますけど、自分で責任を持ってやりたいんです。ランチタイムは遅れられないのでね」。
とはいえこのご時世、500円で食べられるお弁当は驚異的安さ! 「正直、かなり大変です。でも、みなさんに喜んでもらえるなら(笑)。500円であることがウチの個性のひとつだと思っているので、ギリギリまで頑張ります」。
弁当はランチ定食よりメニューが多く、「毎日来てくださるお客様もいます」と武田さん。天気の良い日はここでお弁当を買って、目黒川沿いのベンチで食べるのも気持ちいいかもね。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢