愛犬とともに過ごせる、おいしいもののセレクトショップ的カフェ
なかなか降り立つことのない不動前駅。筆者の場合、「ひと駅くらいなら歩いちゃおうかな」と五反田駅や目黒駅から来てしまうからだ。散歩の途中で立ち寄る店のなかには、“当たり”の喫茶店が多い。『Cafe ChocoLapin』もそんなお店のひとつだ。
不動前駅から商店街を通り、目黒区立第四日野小学校とかむろ坂公園の間にある路地に入ると歩道橋のたもとに店がある。
「わかりにくいところにあるので看板を出しているんですけど、素通りされてしまうこともあるんですよ」と笑うのはオーナーの吉橋公子さん。
この店のオープンは2015年3月。店主の吉橋さんは2012年に会社を辞め、大学時代にバイトをしていたコーヒーの焙煎所兼喫茶店を漠然と思い出していた。「そこは奈良の『凡豆』という年配のご夫婦が営んでいる店で、カウンター10席くらいしかありませんでした。そこで過ごした日々がすごく楽しかったから自分でも店をやってみたいなと。その後、バンタンのカフェオーナーコースで勉強し、店を開きました」。
店名は、当時は元気だった愛犬のショコラちゃんの名前と吉橋さんの干支(うさぎ=ラパン)から『Cafe ChocoLapin』と名付けた。「店名から連想されてチョコパンはないんですか〜? って聞かれることもありますが、残念ながら置いてないんですよね」と笑う。
店内は吉橋さんの好きなものであふれている。たとえば、壁にかかっている絵はアメリカ人の女性作家、ヘザー・ブラウンの作品だ。「これは版画なんですけど、 私はハワイも好きなのでこの絵を買いました。反対側の壁にあるのは雑誌『それいゆ』などでも活躍した鈴木悦郎さんの絵です。私は『画廊をやれ』なんて言われるくらい鈴木さんの絵をたくさん持っていたので、店に飾りたいなと思いました」。
それはお客さんに提供するコーヒーやスイーツも然り。「自宅でもよく利用している『EBONY COFFEE』のコーヒーや『パティスリーR(エール)』のケーキ。それから手絞り製法のみかんジュースは、ノンワックスでみかんを生産する自然派農家『伊藤農園』のもの。私がおいしいと思ったものを仕入れています。だから、セレクトショップ的な感じなんですよね」。
ここはいわば吉橋さんのセカンドリビング。穏やかな空気に包まれている。
ふんわりフレンチトーストと、大好きなコーヒーを提供
コーヒー好きの吉橋さんは、オープン当初「提供するのはコーヒーだけでもいい」と思ったそうだが、今はケーキとフレンチトースト、レジ横には手軽な焼き菓子を用意している。
メニューは自慢のコーヒーのほか、紅茶やハーブティ、有機ルイボスティなどもある。「スペシャルティコーヒーのみを取り扱う『EBONY COFFEE』は、自宅でもよく利用していたコーヒー屋さんなんですけど、すごくおいしいので店をオープンする前に卸してもらえるか相談をさせていただきました。ケーキはたまたま『パティスリーR』の方と知り合いで『ウチはどこにも卸してないからいいよ』って言ってくださって。今は3種類提供していますが、その時によって変わるのでカウンターのところにある黒板を見てくださいね」。
さらにベルギービールも15種ほど常備。「どれも味に個性があって面白い。これも私が好きなカフェで見つけたものなんです」といい、メニューを見せてくれた。幅広くメニューを取り揃えているが、なかでもフレンチトースト900円は数量限定のため人気が高い。大岡山にある『HIMMEL』の食パン、おいしい卵、有機の砂糖を使っている。甘さは控えめで、バナナ、キウイなどのフルーツや濃厚なバニラアイスがトッピングされるという。これはいいぞ! 店名を冠したショコラパンブレンド(シティロースト)600円とともにオーダーした。
ほどなくしてテーブルに届いたフレンチトーストのおいしそうなこと! 焼きたてのフレンチトーストと、ひんやりとしたバニラアイスのアツ&冷や食感が楽しめるのだ。
こんがりと焼かれたフレンチトーストは卵液がたっぷり中まで染み込んでいてふんわり&トゥルンとしている。甘さは控えめだけど、食パンや卵の味わいがわかる。濃厚なバニラアイスと一緒に食べると、ミルキーさと甘みがプラスされさらにおいしさが上昇。加えてフルーツも加えたトリプルコンボでいただけば最上級のおいしさに。
フレンチトーストをいただきながら自慢のショコラパンブレンドも。「迷ったらこれがおすすめです」と吉橋さんがいう通りにして正解だった。フレンチトーストとの相性バツグンだもの。
アイスがすっかり溶けてしまうのがイヤでパクパクと食べ進めた。いやしいんじゃありません、筆者はおいしいものの食べ時も大切にしています。ああ、ごちそうさまでした。
2頭の看板犬もときどきご出勤。ワンちゃん連れもウェルカム!
冒頭でも登場した吉橋さんのワンちゃんたちは週に数回“ご出勤”して、営業をサポートする。「今日は早めに店に着いたので、この周辺を散歩したり。電車で来るときはお散歩を兼ねてひと駅歩くこともありますよ。店はこの子たちもいますし、ワンちゃんの入店OKです」。
ただし、店内では抱っこかバックに入れるルールだ。大型犬は外のリードフックにつなぐのだが、ワンちゃんが不安にならないようドアはガラス張りにして飼い主の姿が見えるようにしている。
「ふつうの店なんだけど、ワンちゃん連れでもOKな店なんです。でも、愛犬家ばかり集まっているというわけでもなくて、ワンちゃんに興味がない方もいらっしゃいますよ」。
何も考えずおいしいコーヒーを飲んで息抜きしたり、ぼーっと絵を眺めるのも大事な時間。ここは、そんなふうに大人が静かに過ごせるカフェなのだ。
個人的には再びノワールちゃん&コロンちゃんに癒やされに来たい。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢