不動産と鉄道の切れないカンケイ

今回は東武スカイツリーライン・伊勢崎線の東向島駅から。

ってか、もともとは東武伊勢崎線という名称だったの思うのだが、えーと、いつから「スカイツリーライン」という名称が現れたんだっけ?

で、サイトを検索してたら、ほうほう。2012年当時の記事を見つけた。浅草・押上~東武動物公園間の「愛称」なのね。なるほど。

ところで。

不動産相場には、そこが人気の路線沿線なのかどうかというのが大いに影響してきます。

お察しのとおり、不動産と鉄道(最寄り駅)は切っても切れない関係にありまして、いわゆる「沿線人気」みたいなのもある。

人気の沿線だと、大家や売主は強気に出るもんね。

こちら「東武スカイツリーライン・伊勢崎線沿線」は物件も豊富で、相場も変に強気じゃないので、居心地のいい物件が見つかったら、それはとてもラッキー。なのでおすすめとして案内することも多いんです。

さて、今回は鉄道から始まっていますので、オレなりに(←経験年数も少ない若輩者ですが・笑)、どういう路線が「人気路線」となるのが、実際に街を歩いたときに感じたことをちょっと述べてみます。で、独断と偏見で申し上げますと「その路線、どの用途地域を通っているか」なのではないかと。

あたりまえですけど、用途地域によって、街や沿線の雰囲気は激変します。

たとえば、第一種・第二種低層住居専用地域や、第一種・第二種中高層住居専用地域などの「住居専用地域」を主に通っている路線であれば、当たり前だけど、その沿線には静かで「閑静」という言葉が似合うような住宅街が広がる。

東京だと「東急東横線」とか。東京と横浜を結ぶ路線で、渋谷、代官山町、中目黒、自由が丘、田園調布、武蔵小杉などを通って横浜へ。都市計画図を見てもらえればわかりますが(ってか、ふつうの人は持ってないが・笑)、住居系の用途地域と商業系の用途地域をおしゃれに結ぶ都市間鉄道路線です。

用途地域的に分析してみると。

代官山町や田園調布は、高級住宅街の代名詞ともなっているように、まさに東京を代表する「住居専用地域」です。中目黒や自由が丘という商業地域も通っていますが、いずれも「いい感じ」の商業地域ですよね。あ、なにが「いい感じ」なのかというと、JRが通っていないので、大規模な商業資本が入り込んでいないところかな。

川崎方面に向かえば、こんどは再開発事業の賜物ともいえるキラッキラな二子玉川や武蔵小杉。タワーマンションなどが立ち並ぶ住宅街。低層住宅ではないですが立派な住居系です。ベビーカーでも問題なく街歩きができるというコンセプトもあるそうで、なのでファミリー向けの物件が豊富です。高いけど。

さて問題です。

東横線はどうして“いわゆる東横線”というイメージになったのでしょうか。

用途地域的にお答えください。

illust_2.svg

答え:工業系の用途地域を通っていないから。

東京の大田区を例にとります。

大田区は「大森区」と「蒲田区」が合併してできた区であります。内陸部の「大森区(お屋敷町というイメージ)」を通っているのが東横線。

そこから少し海側に下って、大森区と蒲田区の境目、つまり住居系と工業系の境目を通っているのがJR。商業系の雄「蒲田駅」があります。

そして国道15号(第二京浜)から海側が、これも大田区の代名詞ともいえる町工場が広がる界隈。まさに工業系の用途地域です。工業系の用途地域を通って横浜に向かっているのが京浜急行だ。

JRを境目にして、イメージが違うでしょ。

たまにそんな視点で散歩してみて。けっこう面白いよ。

かつての日光線の特急。りょうもう号より迫力があった。
かつての日光線の特急。りょうもう号より迫力があった。

じつは東武伊勢崎線、個人的な話で恐縮ですが、母方の実家が栃木県の足利市だったので、小学生くらいのころ、夏休みにしばし、東武伊勢崎線の急行(たしか当時は急行と称してたかな)の「りょうもう号」に乗って足利市駅までの小旅行を楽しんでいた。乗車は浅草駅からだったんだけど、「あっちの特急はかっこいいな」と思ってた。

東武日光線だ。

まぁこういっちゃなんだが「りょうもう号」は通勤電車の延長みたいな感じもあったが、でも「りょうもう号」に乗れる夏休みは、とても楽しみでもあった。

あのかっこいい日光線の特急がどこまで行くのかというと、その名のとおり、日光・鬼怒川。

なんか楽しそうなところなんだろうなと、特急電車のかっこよさもあって、子どもでもそれくらいはわかっていたなぁ。

博物館の中も気になるが今日は天気が良いので、せっかくだから外を散歩しよう。
博物館の中も気になるが今日は天気が良いので、せっかくだから外を散歩しよう。

「季節も良いし、まずは向島百花園に行ってみよう!」

都立文化財9庭園にも入っており、江戸時代から200年の歴史があるようだ。

「急に異空間だね〜!!」
「こんなところがあるんだ〜!!」

ここは、中国や日本の古典に詠まれているような植物を集めて、四季を通じて花が咲くようになったという、唯一現代に残る江戸時代の花園らしい。

今の時期も花は咲いているが、緑が鮮やかで美しい。

しばし自然に癒やされたオレたちは向島百花園を出てそのまま鳩の街通り商店街に向かう。

鳩の街商店街はこんな雰囲気だ。
鳩の街商店街はこんな雰囲気だ。

ここらへんは東京大空襲で焼け残ったところに、被災した歓楽街である玉ノ井が移ってきて、赤線地帯となった場所らしい。赤線地帯っていうのは、売春を目的とした特殊飲食店街のこと。“ここにくるとハッピーになれるゾ”ということで幸せの象徴の「鳩」を町の名前にしたんだとか。

ちなみに「鳩の街」は、そもそも行政での名称(ちゃんとした町名)ではなく愛称だそうで、いまも近隣のみなさんが使っているようですね。

昭和の風情がいい感じだ。
昭和の風情がいい感じだ。

今回のスタートの「東向島駅」は、その昔は「玉ノ井駅」でした。玉ノ井といえば、永井荷風先生の小説『濹東綺譚』で有名な、あの「玉ノ井」です。

何年か前に訪れたとき、たしか東向島駅の駅名の看板のところに「旧玉ノ井」という表記があったような気がして、駅員さんに聞いたら「あれ? まだありませんか?」と。駅のホームで探してみたんだけど、見当たらず。

そんな玉ノ井なんだが、『濹東綺譚』で描かれたような赤線地帯としての歴史は短く、大正12年(1923)の関東大震災で倒壊した浅草の凌雲閣界隈で営業していた多数の銘酒屋(そのテの店です)が移り住んで以降、昭和20年(1945)3月10日の東京大空襲までの20年くらいだったみたいです。

大空襲のあと、玉ノ井で営業していた面々が焼け残ったこちらの路地にやってきて、鳩の街になったわけだ。

「旧玉ノ井」という表記がある。
「旧玉ノ井」という表記がある。

東京の都市計画と、震災と戦争

東京の都市計画を調べてみると、たいてい、「関東大震災」と「東京大空襲」の話が出てくる。それらの震災・戦災からどのように復興していったかという話になるんだが、論調としては「いまだ復興せず」というものに出くわすこともある。

ちなみに令和5年(2023)は関東大震災から100年。震災で壊滅的なダメージを負った東京は、関東大震災の後、地方からの人の流入が続いた。その増加ぶりがすごい。まぁ不動産業としては望ましいんだけど。

100年前は人口が400万人くらいだったんだけど、終戦後の高度経済成長期の1962年に1000万人を突破。さっきも言ったけど、この時期、不動産業をやっていたら……(遠い目)。

不動産の商売人としては良いだろうけど、弊害は都市基盤の整備が追いつかなかったこと。行政は、避難に必要な道路や公園などを十分に整備しないまま、市街地の密集を結果的に容認してしまった。つまり、東京に人を集めることを優先(経済成長を優先)させた。

そんなこんなで現在、関東大震災後に家屋が立ち並んだ住宅街や、東京大空襲でも無事だった界隈は木造住宅密集地域(いわゆる「木密」)となっているところもあります。東京都も2022年9月に地震での建物倒壊や火災、救助の困難さなどを総合的に勘案した指標「総合危険度ランク」を公表しました。

最も危険度が高いのが「ランク5」です。

とはいえ、さすがに東京都も、そんな木密を放っておくわけにもいかず、木密区域内の古い住宅の建て替えや撤去に助成をしていて、結果、都内の木密は20年間で7割減となっています。

あ、鳩の街は「木密」の指定はされていないので念のため。

illust_2.svg

あ、そうそう。永井荷風先生の『濹東綺譚』なんだけど、ご存知ない方もいるかもしれないので、ざっとオレなりに説明しとくと、主人公は小説家の「わたくし」で、たぶんこれ永井荷風センセー自身じゃないかと思うんだが、その「わたくし」が小説のアイデア(小説内では腹案と表現している)をねりながら、隅田川の東、つまり濹東を散歩しているうちに、寺島町(これもいまはない町名)7丁目の一角にあった某所で「お雪さん」と出会いまして、そして始まる「わたくし」と「お雪さん」とのひと夏の恋物語。

何度か読んだけど、もちろん異論はあろうが、オレは「恋物語」としておきたい。

出会いが粋で、「わたくし」は夕立にあう。

そうなんです。

ちょうど今の時期。

入梅。

この「わたくし」は準備がいい人らしく、小説から少し引用させてもらいますと

〈いくら晴れていても入梅中のことなので、其日も無論傘と風呂敷(オレ注:この「風呂敷」というのが、まさに永井荷風先生自身を匂わす)とだけを手にしていたから、さして驚きもせず、静にひろげる傘の下から空と町のさまを見ながら歩きかける〉

……という、そのとき!!!

突然、現れたのです。

〈いきなり後方(うしろ)から「旦那、そこまで入れてってよ。」といいさま、傘の下に真白な首を突っ込んだ女がある〉

ヒロインのお雪さん登場です。

このオープニングのシーンが忘れられず、街で夕立に合うたび「こんな出会いがあるかも」と心ときめかせるのだが、たいていそういうとき、傘を持ってなくてキオスクで買ったりしている。

あはは。

あとね。この小説って、ひと夏の恋物語(←と強弁・笑)なんだけど、ヒロインの名前は「お雪」。

夏の物語なのにね。文豪とちがってうまく表現できないんだけど、なんか洒落てるなーと思ってます。

隅田川が今日も綺麗だ。
隅田川が今日も綺麗だ。

「ねえ、その『濹東綺譚』っていう小説のエンディングはどんな感じなの?素敵な話?」

素敵な恋物語を想像しているであろうエルボーがキラキラとした表情で振り向いて、オレに問いかける。

「……えっ!!!」

「ん? なに?」

……結末は別離。縁起が悪い……! オレは伝えるべきだろうか……⁉

取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人