MASTER'S VOICE
いろんな人がつくった街だから

元々土木技師である大崎さんは、定年後はジャズを楽しみ、測量士として暮らす計画をたてていた。

壁には訪れたミュージシャンのサイン。最低2カ月に1度はライブを開催する。
木の扉を開けるとログハウスの中は爆音のジャズが流れている。

「市の職員として私有財産の管理、土地所有権をめぐる問題に対し、国有地でも市の土地でもない民有地があると、それを幕末まで遡って相続人を調べたり、営林署と夕張市の交渉役をしていたんです。そんな中、今や全国に知れ渡る市の財政破綻で役所を退職し、国有林の〈未利用地〉を取得したのがこの土地です」とジャズ喫茶を立てるに至った経緯を語る。

測量師兼ジャズ喫茶マスターの大崎さん。
「夕張テニスコート」というバス停から、緑茂る川沿いの車道脇に現れる赤い煙突屋根。ジャズ喫茶像を刷新する店構え。

眠っていたジャズ喫茶の夢が俄にわかに呼び覚まされた大崎さんは、さっそく奥様を説得。二人の好きなハリウッドの音楽映画から店名を付けることも阿吽の呼吸で決まった。「夕張は炭鉱の仕事で全国から集まった色んな人たちがつくった街。だから芸能、芸術に長けた人も多いんです。音楽好きが喜ぶ場所になればいい」と、好きな事を徹底してやる覚悟。“入会地”のような場所で豊かな心の持ち主が営む、心温まるジャズ喫茶である。

【店主が選ぶ一枚】HEAVY SOUNDS “Elvin Jones and Richard Davis”

エルヴィンがドラムではなくギターを弾いている!

大崎さんの一枚は、人気の高い名盤、エルビン・ジョーンズとリチャード・デイヴィスの『ヘヴィ・サウンズ』(1968)。仙台の大学時代、ジャズ喫茶やコンサートに誘って、大崎さんがジャズを知るきっかけを作ってくれた友人から、帰郷を記念するアルバムとして譲り受けたもの。ジャズとの出会いを振り返るとき、大崎さんの心に深く刻印される一枚だ。中でも、エルヴィン・ジョーンズがドラムではなく、ギターを弾いてる「Elvin’s Guitars Blues」が好きという。

取材・文=常田カオル 撮影=谷川真紀子
散歩の達人POCKET『日本ジャズ地図』より

住所:北海道夕張市千代田25-2/営業時間:11:00~21:00/定休日:日/アクセス:JR室蘭本線栗山駅からバス30分の「夕張テニスコート」下車18分
陽光と雨が豊かな植生を育む南紀。熊野灘に注ぐ古座川河口の町に2017年に開店した『イワシの目』は早くもヒップなジャズ好きが集う店となった。
日本のジャズ・レコードをかける専門店として全国的に有名なジャズ喫茶。店主・照井顯さんは1975年から陸前高田で「ジョニー」という名前で開店し、2001年より、盛岡の開運橋に店を構え直した。高校時代から当時陸前高田にあった金繁レコード店でジャズ・レコードに親しみ、67~74年まで市民会館を借りてレコード・コンサートを繰り広げたことが開店につながった。