渋谷駅から10分の閑静な住宅地にあるアメリカンダイナー
渋谷駅から明治通りを恵比寿方面にテクテク歩き、左手に見える小さなお稲荷さんに黙礼して左折すると渋谷図書館入口交差点にぶつかる。そこを左折するとすぐ『Reg-On Diner』が見えてくる。
最寄りは渋谷駅だがセンター街や道玄坂とは違い、周囲には学校があり、住宅地が広がる閑静なエリア。看板やPOPが店頭を飾っているものの、住宅になじんだ店構えが好印象だ。
『Reg-On Diner』がここにオープンしたのは2008年。取材当日に対応してくれたしょうこさんは2021年から店長になった。
「オープン当初からハンバーガーのテイスト、店内の装飾や小物に関してもアメリカンダイナーを意識しています。卓上のケチャップやマスタードもHEINZにこだわっているんです」としょうこさんは語る。アンティークっぽいソファやTEXMEX柄のカバーシート、原色のかわいいフィギュアやレアなアイテムたちが店内を飾り、ハンバーガーの形のネオンサインが光っている。
「渋谷駅から距離があるので、ウチに来るのはほとんど國學院大生とご近所に住むファミリーですが、10分歩いてでもウチを目指して来る方もいらっしゃいます」 としょうこさんはうれしそうに話す。
アメリカンダイナーのハンバーガーというと大きいサイズでジャンクなイメージだが、しょうこさんは「うちは野菜もありつつお肉も楽しめるようになっているので、お年寄りの方もペロリと召し上がるんですよ。また、お子様用にレギュラーサイズのほぼ半分のキッズバーガーも用意しています」と語る。ハンバーガーの話を聞いていたらお腹が減ってきた。早くメニューを見せてくださ〜い!
バンズ、具材、ソース。おいしさの理由は計算し尽くされたバランスにアリ
『Reg-On Diner』を象徴するメニューは、ABCバーガー1980円。ABCとは、アボカド、ベーコン、チーズのこと。味の組み合わせもカラーリングも最高です。
ボリューム満点で、見た目もカラフルだ。創業当時から変わらず毎日『新橋ベーカリー』から届くバンズを、ひとつずつカットして焼印を押す。オーストリア産ビーフをふんだんに使用した分厚いパテは店で手作りする。
「肉は赤身と脂を絶妙な配分で混ぜ、焼き上がりがジューシーになるようにしています。1枚115gありますから、けっこう食べ応えがありますよ」。
バンズ、具材、ソースのバランスは見た目も味も大切にしているというしょうこさん。中に挟むレタスは1枚ずつむいて、決まった大きさに折りたたんでいる。「細かいレタスを大きなレタスの葉で包んだクッションみたいになっているので、アツアツのパテを重ねてもぺしゃんこにならないんですよ」。
レタスのクッションのおかげで座りがよくなり、皿に置いたときにも形が崩れにくくなるそうだ。ほほう、仕事が丁寧ですな。
店内で食べられるハンバーガーのソースは、BBQ、テリヤキ、チリ、タルタル……とあるが、すべて手作りとなっており、なかでも BBQ ソースが人気だ。
「創業時から変わらないソースですが、現場スタッフの中では私しかレシピを知らず私だけしか作れないんですよ。ハンバーガー全体の味のまとめ役になっていて、BBQ テイストのハンバーガーはこれがないとおいしくならないんです」。
これはまさに『Reg-On Diner』の宝・秘伝のソースというわけか。
「人気No.2のイン・アンド・アウトスタイルチーズバーガーも、刻んだピクルスとタマネギとかが入ってるので、こっちは生のソースって感じです。ソースにも時間をかけているんですよ」としょうこさん。
ちなみにイン・アンド・アウトスタイルチーズバーガー1760円は、アメリカの某有名ハンバーガーチェーンの裏メニューを再現したものだそう。ケチャップとマヨネーズを合わせたようなソースだそうで……これは迷うなあ。
肉汁滴るアメリカンなハンバーガーでもあっさりいただける
頭の中でぽくぽく木魚を叩きながら考えた結果、王道のABCバーガーをオーダー。こんがり焼かれた具材たちが、メニューで見た通りに積み上がっていく。
オーダーが入ってから作るので、テーブルに運ばれてくるまで10分ほど。ワ〜オ、積み上がったABCバーガーがいかにもおいしそうで尊い。
食べた瞬間にパテやベーコン、そしてBBQソースから醸し出されるスモークの香りがたっぷりと感じられる。パテのジューシーさに加え、完熟したアボカドの甘さやまったり感が、カリッとしたパンや甘酸っぱいソース、チーズの塩味やミルキーさと混ざり合っている。これだけだとジャンクだが、生のタマネギやレタスが味の濃さを中和させる。うーん、これが計算し尽くされたものだというなら、「ご名算!」と申し上げたい。
焼きたてのパテに敷かれていることで生のオニオンに絶妙に熱が入っていて、ほんのり甘さがありながらツーンとするような香りとシャキシャキ感が残っているところがすごい。
「ウフフ。生のオニオンのままだと辛かったりするじゃないですか。だから、厚みとか乗せる分量もやっぱりバランスなんですよね」といって、しょうこさんがちょっとだけ得意そうに眉を上げた。
前述のBBQソースを「全体のバランスを締める役割」と言っていたが、食べたら納得した。おいしさにはちゃんと理由があるんだなあ。
モグモグしながらメニューを見ていると、あらッ、ランチタイムならドリンクやサイドメニューをつけてもおトク!
「そうなんです。11時〜15時までのランチタイムだと通常550円以上するドリンクが220円でセットにできます。それにトッピングでカスタムができるので常連さんはめいめいに好きなバーガーを楽しんでいますよ」。
その日の気分でメニューを選ぶだけでなく、自由にカスタマイズして自分がいちばん食べたいバーガーをオーダーできるようになれば上級者。パテがおいしかったから、次は2枚にしちゃおうかな〜?
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢