新鮮な食材で作る、こだわりの塩ラーメン
吉祥寺駅近くの井ノ頭通りは、マルイやドンキホーテなど大型の商業施設がありいつでも人でいっぱいだ。この通り沿いの2階にある『麺屋海神』は、ここ吉祥寺店と新宿店の2店舗がある塩ラーメン専門店。特徴は毎日仕入れる新鮮な魚のアラで炊き上げる上品な出汁にある。
主に鯛や鮭といった白身魚のアラを使うが、独特の甘みを求めて銀座の料亭でも使われる上質な穴子のアラも入れて、丹念に出汁を取る。その日仕入れた魚によって変化する味も楽しみだ。
パカッと開いたハマグリ。こんなのおいしいに決まってる!
今回いただくのは、吉祥寺店のみの限定メニューであるあら炊きはまぐりらぁめん。ハマグリの数は大きさによって変化するが、今回は鮮度抜群の九十九里産ハマグリがなんと2個も。こだわりの出汁に入れて、パカッと開くまでじっくり火を通す。調理しているそばからふわ〜んと貝の出汁のいい香り。あー。もう、こんなのおいしいに決まってるじゃないか!!!
透き通ったスープは旨味たっぷり。じんわりおいしい
徹底的に臭みを除いた出汁からは、雑味のない上質な香りが立ち上る。待ちきれずにスープをひと口。その瞬間、洗練された磯の風味がぶわっと広がった。続いて独特な貝の旨味が追いかけてくる。この味わいは絶対に塩味でなきゃ、と思う。ここにしっかりとした歯ごたえでつるりとした麺がばっちりスープを受け止める。少しだけ浮いた油はオリーブオイル。さらりと軽い油分も絶妙だ。
貝から外してみて大きさに驚いた。身もでかい!食べてみると、今度はぷりっぷりの食感に驚いた。臭みがまったくなく、ぎゅっと凝縮した旨味で甘い。
穴子のアラと同様、ハマグリも築地の有名な魚卸店から仕入れている。仕入れる前は「ラーメンにうちの食材を使うなんてもったいない」といわれたという最高級の食材だ。なるほど、納得の贅沢さだ。
お楽しみはもう一つ。雑炊にしてフィニッシュしよう
このおいしいスープをそのまま放っておくのはもったいない。焼きおにぎりを入れて雑炊風でいただくのがお楽しみだ。
焼きおにぎりには刻んだへしこが入っている。へしことは、魚をぬか漬けにした北陸の郷土料理。漁獲量の関係により年々量が減り、高騰しているという。
焼きおにぎりの香ばしさとスープが混じり合って、うーん、これはおいしい!少し山椒を入れるのもピリッとした風味があってオススメだ。
なかなかラーメンをスープまで全部飲み干すことができない筆者だが、今回は楽々まるごといただいた。ごちそうさまでした!
本当は味変もあるのだけれど……
酢、胡椒という定番調味料のほか、はまぐりらぁめんなら無料になる味変食材がほかにもある。食べる前は「途中からバターとガーリックパウダー両方入れて食べようっと♪」とワクついていたのだが、そのままの味でついつい食べ終えてしまった。入れてもきっとおいしいに違いない。
丁寧に手順をこなす長年のスタッフと店長のあたたかい関係
貝に火を通したりおにぎりを焼いたりと、オーダーが入ってからの手順が多いメニューに加え、ほかのラーメンのトッピングとなる鶏軟骨入りつくねの仕込みもある。厨房ではスタッフがせわしなく動いていたが、動きはスムーズで無駄がない。「長くいるスタッフばかりなんです。ありがたいですよね」とにこやかに笑う店長の遠藤さんと、仲良さそうに冗談を言いあうスタッフ。このチームワークがあってこそのおいしい一杯。また訪れたい名店だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ