気分転換に東京の東エリアへ

「仕事頑張ってるみたいだし、気分転換に浅草散歩どう?」

タイミングのいいことに、今回から『東京散歩地図』の目次で見ると「都心」から「東部」に出る。

もう17回目かあ。最初のうちは逃げられていたなあ。

「え?浅草?私大好きだからいつでも行きたいよ!!」
エルボーは寄席好きだから浅草に好反応だ!!

ありがとう『東京散歩地図』。いつもオレのサポートをしてくれているみたいだ。

今日はベタだが雷門前で待ち合わせた。まずは雷門の向かいにある何だかおしゃれな建物『浅草文化観光センター』に行ってみよう。

ここの8階は眺望台みたいになっていて、そこから浅草寺方面に延びる仲見世通りを見ることができる。

「浅草の街並みが何だか可愛いね。」
地上に降りたオレたちは、仲見世通りを浅草寺方面に向かう。

今日は平日なんだけど人がいっぱいいるな。海外のお客さんも戻ってきているみたいだ。

そして何だか新しいお店が増えた感じもする。

このまま仲見世通りをまっすぐ進んでいくと、浅草寺の本堂の手前、仲見世通りと交差して東西に延びる約300メートルの通りに出くわす。浅草伝法院通りだ。

 

この連載をご愛読のみなさんだと「あ、そうえいば伝法院通り、なんかあったな」と思い出すかも。

 

……思い出さないっすね。

 

えーとですね。では、こちらをご参照いただければと。

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浅草寺の伝法院通り商店街は「不法占有」立ち退き求め台東区が提訴

ご覧のとおりなんだけど、要は伝法院通りを不法占拠しているから明け渡せ、というふうに台東区は言っているわけです。

宅建ワンポイント・不法占拠の話、覚えてる?

ここでのポイントは「不法占拠」。

なにをもって不法占拠というかというと、まぁ読んで字のごとくなのだが「権利がないのに他人の土地を占拠している」ということ。では、ここでいう権利とはなんでしょ。

そうですね、一つは所有権。

伝法院通りといったって、土地をそういうふうに使っているだけの話で、じゃあそもそもその土地の所有者(所有権を持っている人)は誰かというと、たぶん台東区(法人)なのでしょう。

いちおう、ここで民法206条を確認しておきましょう。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

「法令の制限内において」という、ニッポンの社会常識みたいなフレーズがついているものの(←じつによくあるパターン笑)、「自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」という部分が大事。

つまり「誰にも邪魔されることなく自由に使ったり収益を上げたりしていいよ」ということだ。逆に、所有する土地が誰かに侵害されたりしたら「立ち退いてくれ」と言えるわけだ。

 

あともう一つが、所有はしないけど、その土地を使える権利があるというパターン。

代表的なのが賃借権。賃貸借契約に基づくもので、賃借人が賃貸人に賃料を払って使うというもの。

賃料なしで使っていいよということも可能で、この場合だったら使用貸借契約。台東区側とこのような契約をしていれば「権利あり」ということになるのだが。

で、今回の騒動は、台東区がいうには、「店舗の所有者らはなんらの権利もなく土地を占拠している」という状態だとして、このような裁判沙汰になったということですね。

店舗側にももちろん言い分があるわけで、話は終戦直後に遡る。これがすこぶるおもしろいのだが、詳細はまた別の機会に。

 

さてみなさん。果たして土地を占拠する「権利」があるのかないのか、そのあたりを司法はどう判断するのか。

見方を変えればこの騒動の落とし所はどうするのか。

いわゆる「大人の判断」の行方やいかに。

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オレとエルボーは伝法院通りをそのまま西に向かう。

エルボーは「好きな街」というだけあって、とても楽しそうだ。

あ、そうだ。浅草散歩でもう1箇所行ってみたいところがあったんだ。

まるごとにっぽんの4階に『浅草横丁』ができたらしい。2022年7月にできた食と祭りの殿堂ということで、その場にいるだけでワクワクする空間だ。

浅草演芸場もそばにある。

落語好きのエルボーはたまに一人で来るそうだ。

 

こんどいっしょに行きたいな。

誘ってもらいたい。

耐震性と浅草寺のヒミツ

浅草寺に戻る。

正面からみると、この瓦の屋根がド迫力。立派です。

この瓦ですが。ふつうの瓦って重たいですよね。

こんなに大量の瓦を使っているとなると、さぞや重量もすごいことになって、となると、耐震性とかだいじょうぶなのであろうか。

耐震性を高めるには、建物は軽くしたほうが良い。

とくに屋根。

屋根は耐震性にとても影響をする構造体で、これが重いとたいへんなことになる。重い屋根の建物は、地震の力を強く受けて倒壊のリスクが高くなるのだ。

屋根に注目!
屋根に注目!

なので、やばいんじゃないかな、こんな大量の瓦!!!

と、ご心配になる方もいると思いますが、どうぞご安心ください。

 

浅草寺のHPから引用させてもらいますと。

本堂(観音堂)
今日の本堂は慶安の旧本堂の姿を基本に、鉄筋コンクリート造りで再建されたお堂である。入母屋造りの大屋根は急勾配かつ棟高で遠方からも望見できる。かつては3倍の重さの本瓦で葺かれていたが、安全強化のために軽量のチタン瓦に葺きかえられ、平成22年(2010)に営繕が円成した。

 

そうなのです。浅草寺は最新の建築技術が駆使されていて、屋根はチタン瓦。

すげーでしょ。

で、さらに本堂自体も木造じゃなくて、鉄筋コンクリート造りなので、頑丈です。

柱を触ってみると、ほらね。

コンクリート。
コンクリート。

それでね。

これはオレも知らなかったんだけど、これまた浅草寺のHPによると

埋蔵経:本堂敷地の下には写経を埋める
一字三礼石写経 5俵分
般若心経 100巻・観音経 160巻・阿弥陀経 20巻

という記述があります。

 

般若心経が埋まっているのか……。

般若心経で、割とみんなが知っているフレーズは「色即是空」かな。オレなりに超訳してみると

この世の万物は形をもつが、その形は仮のもので、本質は空(くう)であり、不変のものではない、というような意味らしい。

つまり変化を前提としているようだ。

 

でもね、変化は悲しむことではない。

 

すべての物事は変化し続けるという前提なんだけど、「変化し続けたとしても、その核となる物事の本質は変わらない」ということを伝えているらしい。

 

物事の本質。

そうだよエルボー。

オレたちの「それ」はなにか。

愛。

 

……そんなことを思いながら、オレはエルボーの横顔を見る。出会ってから今日まで、オレたちもいろいろ変化してきたね。

こんなオレの気持ちが、彼女に届いたのか、エルボーはオレに顔を向ける。

そしてエルボーは言った。

「しばらくあんまり会えなくなっちゃうかも。」

 

た・す・け・て

は・ん・にゃ・し・ん・ぎ・ょ・う

取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人