レトロな外観に吸い込まれるようにいざ入店
中華特有の幾何学模様である雷紋が施された看板や、白地に赤文字で「ラーメン」と書かれたのれんなどレトロ風の外観だが、オープンは2022年5月とまだ新しい。
店頭に置かれたメニューボードが目を引く。写真入りなので、どれにしようか迷ってしまうがとりあえず店の中へ。煮干しの香りが感じられる店内は、外観とはうって変わって木目調のカウンターや黒い壁など、落ち着いた佇まいだ。
入り口付近に置かれた券売機で、迷いながらも醤油らーめん850円を購入する。
旭川らーめんならではの煮干し系と動物系のWスープ
旭川風の醤油らーめんが登場。店内に入ってきたときにも感じた煮干しの香りが漂い、食欲がそそられる。
まずはラードの膜が張ったスープをひと口。煮干しの優しい味わいをまず感じ、その後に動物系の旨味が広がってくる。
店主の大西龍太さんは「長崎産の煮干しを大量に使っています。12時間ほど水出しをしてから煮立たせないようにして素材の旨味を引き出しています。水にも特徴があって、特殊な浄水器を通しています。パイウォーターといって、酸素を多く含んだ体にいい水といわれているんです。パイウォーターでスープを作ると驚くぐらい出汁が出て、普通の水で作ったよりおいしくなります。煮干しスープに動物系の清湯を合わせたWスープという旭川風で提供しています」と教えてくれた。
中細麺や2種のチャーシュー、メンマなども旨い
麺は三河屋製麺のものを使用。醤油らーめんには、中細麺を合わせている。パツッとした歯切れで、食感はもちろん、麺の風味も素晴らしい。
大西さんは「味噌らーめんには中太縮れ麺、つけ麺はストレート中太麺、オロチョンらーめんにはチャンポン麺と、スープに合わせて麺を使い分けています」と話す。
チャーシューにもこだわりがある。じっくりと仕上げたチャーシューは、醤油らーめんでは豚肩ロースと豚モモの2種類が食べられ(味噌らーめんにトッピングする豚バラになることもあるという)、噛み応え抜群でジューシーな味わいが好印象だ。
しっかりとした味わいで、歯ざわりのいいメンマも旨い。大西さんによると「麺以外はすべて店で手仕込みをしています」とのこと。大西さん渾身の醤油らーめんにすっかり感服。
人気の味噌らーめんは、オリジナルブレンドの味噌が味の決め手
札幌風の味噌らーめん950円も気になったので連食してみる。でき上がった味噌らーめんは香りが豊かで、スープを飲めば人気だというのもうなずける。力強く感じる味噌スープだが、それに負けない中太縮れ麺にスープが絡みつく麺とスープの一体感もたまらない。旨味が凝縮した豚バラチャーシューやモヤシのシャキシャキ感と長ネギのほんのりとした辛味も相まって、2杯目だというのに、あっという間に食べ尽くしてしまった。
「味噌ダレには、九州産や仙台産など4種の味噌をブレンドしています。そのことによって風味が豊かで後を引く味に仕上がっています」と大西さん。ただ、「味噌ダレは手間暇がかかるため、大量に作ることができません。売り切れ御免でお願いします」。
完成度の高い醤油らーめんや味噌らーめんのほか、数々のらーめんに心が揺らぐ
最後に大西さんは「以前は、某人気ラーメン店で店長をしていましたが、独立をしてこの店を開店しました。店長時代に作っていたとのとは全く違うラーメンで、自分の好みのラーメンにしています。例えばチャーシューは噛みごたえがあって、食べていると旨味が広がるようなものにしています。麺もあえて4種を使い分けることで、自分の味を表現できればと思います」と話してくれた。
煮干しが香る醤油らーめんや味噌のコクがたまらない味噌らーめんのほか、つけ麺や味噌オロチョン、さらに限定メニューも登場する。次に来店したときに何を食べようか、迷いは尽きない。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン