3坪から始まった店。「つぶしたて」が評判になる

代表の小野公也さん(手前)と池袋店店長の近藤孝裕さん。
代表の小野公也さん(手前)と池袋店店長の近藤孝裕さん。

創業は1989年。高田馬場駅に近い神田川の近くに3坪、5席の店を開いた。だから屋号は『みつぼ』。現在は高田馬場店と江戸川橋店、そしてこの池袋店の3店舗を出店している。

看板メニューのやきとんは「つぶしたて」が売り。「豚肉は3日ほど寝かしたほうが熟成し、旨くなります。しかし、内臓は足が早いのでつぶしたてがいいんです。だから、食肉市場まで仕入れに行き、その日のうちにやきとんにして提供していました」。代表の小野公也さんは話す。現在、自ら市場に行くことはなくなったが、つぶしたてを仕入れることは変わらない。

まずはコレ! お得な串5本セット

炭火で、ミディアムやレアなど部位に合った焼き方をしてくれるので肉の旨さがダイレクトに伝わる。
炭火で、ミディアムやレアなど部位に合った焼き方をしてくれるので肉の旨さがダイレクトに伝わる。

やきとんの種類は16種類。メニューを見ると、フワ(肺)、トロカシラ(頭部)、チレ(膵臓)、キク(腸周り)、ピートロ(ネック)など、あまり聞いたことがないような部位もある。さすが、市場直送の店だけある。

驚くのは種類の多さだけではない。新鮮であることはいうまでもないが、1本90円ほどという安さ。しかも、大きい。だから多くの客が「串5本セット」450円を注文する。肉はおまかせとなるが、さまざまな部位を盛り合わせてくれるので、どんなものが食べられるか楽しみだ。

串5本セット。右からレバー、キク、カシラ、ピートロ、ハツ。
串5本セット。右からレバー、キク、カシラ、ピートロ、ハツ。

鮮度に自信があるから半生状態に茹でただけで味わえる

レバー、ハツ、タン、ガツ、コブクロの5種を盛り合わせた「ゆで盛」。
レバー、ハツ、タン、ガツ、コブクロの5種を盛り合わせた「ゆで盛」。

壁面いっぱいにメニューが貼られているが、「生ゆで刺」というメニューが気になった。レバー、ハツ、タン、ガツ、コブクロの5種類があり、軽く茹でてレア状態のものを刺し身のように食べるのだという。

これらの内臓を盛り合わせて自家製のタレで味わう「ゆで盛」810円というメニューもある。鮮度に自信があるからこそ提供できるメューだ。

「ホ~ルモン刺」と書かれたメニュー表には豚内臓や牛内臓の料理がある。表示の金額は税別。ちなみに消費税は8%しか取らず、2%分は店で負担しているのだという。
「ホ~ルモン刺」と書かれたメニュー表には豚内臓や牛内臓の料理がある。表示の金額は税別。ちなみに消費税は8%しか取らず、2%分は店で負担しているのだという。

メニューは100種類以上。食べたいものがきっとある

実にさまざまな料理があるので、やきとんは苦手という人でも楽しめる。表示の金額は税別。
実にさまざまな料理があるので、やきとんは苦手という人でも楽しめる。表示の金額は税別。

バラエティ豊かなメニューも特徴の一つ。黒板メニューに目を向けてみよう。和牛のハツ刺やモツ鍋があるかと思えば、タコブツやマグロブツなどの魚介系刺し身、さらにテッちゃん炒、生レバニラ炒とモツ好きには見逃せない炒め物もある。そのどれもが安い! これなら懐具合を気にしなくてもよさそうだ。

小鉢に盛られたカレーグラタン。表面を炙っているので香ばしい。
小鉢に盛られたカレーグラタン。表面を炙っているので香ばしい。

「これ、人気があるんです」といって近藤店長が出してくれたのが「カレーグラタン」。グラタンが酒の肴になるのかと疑問に思ったが、カレーの辛さでビールが進む。やきとんに染まった口の中を味変させるにもピッタリだ。

“旨く、安く”がモットー。1000円でも飲み食いできる

店は大通りから少し入るが黄色い看板が目印。混雑時にはオレンジ色のテントの下の屋外立ち飲みスペースも開放される。
店は大通りから少し入るが黄色い看板が目印。混雑時にはオレンジ色のテントの下の屋外立ち飲みスペースも開放される。

「“旨く、安く”がモットーです。酒と串5本をセットにした“得セット”だけで帰るお客様もいらっしゃいます。これならセンベロどころか、1000円でお釣りがきますから…」と話す小野さん。ちなみに小野さんは高田馬場店にいるそうだ。

前述したが、1本90円というやきとんは破格値だ。創業時は1本80円だったという。それから30余年を経てもわずか10円しか値上がりしていないことには本当に驚いた。

店内は二の字のカウンターとテーブル席。いかにも大衆酒場という造りだから一人でも気軽に利用できる。
店内は二の字のカウンターとテーブル席。いかにも大衆酒場という造りだから一人でも気軽に利用できる。

創業した1989年は消費税が導入された年であり、当時は3%だった。そのことを考えるとほとんど値上げしていないのに等しい。スゴイ企業努力だ。やきとんの味はもちろんだが、そんなスタンスにも感動した。池袋で飲む機会があったら訪れたい店のリストに加えることにした。

テーブル席の間隔はやや狭く、にぎやかな様子が想像できる。
テーブル席の間隔はやや狭く、にぎやかな様子が想像できる。
住所:東京都豊島区南池袋2-16-1 長岡ビル1F/営業時間:15:30~23:30/定休日:日・祝/アクセス:JR・地下鉄・私鉄池袋駅から徒歩5分

取材・文・撮影=塙 広明 構成=アド・グリーン